| 私の足を気遣ってか、仙道くんの歩みは遅い。背が高いから、1歩の歩幅は私よりもあるはずなのに、並んでいる。 「さん」 「セ・ン・セ・イ!」 「...先生」 「何?」 「昨日、本当にすみませんでした」 しょぼんとしてそう言う。 体の大きい人がしょぼんとすると、ちょっと邪魔くさいと思ってしまうのは何故かしら?? 「いいのよ。言ったじゃない。私が決めたことだからって」 「そう、ですけど...昨日、先生は田岡監督と話していたじゃないですか」 「田岡先生とは色々話すんだけど...」 「高校の時の話」 高校の...? 「あ!仙道くん。との話、盗み聞きしたの!?」 「いや。わざとじゃないですよ。先生を探してたら、監督との話し声が聞こえて...何か悔しかったから、池上さんに聞いた話を思い出して。それで...」 「ああ、だから突っかかってきたのね。珍しいなーとは思っていたけど。でもね、仙道くん。。ホントは私、50本くらいで終わると思ってたの。きみの負けでね」 そう言うと少し不満そうな視線を私に向ける。 「ホラ、あれだけの練習量をこなした後でしょう?疲れてダメなんじゃないかって勝手に思ってた。 いくら神奈川の強豪、陵南のエースでも50本が限界じゃないかなって。でも、さすが仙道くんは田岡先生が惚れ込んだだけあるね」 正直すごく悔しかったんだから! 「絶対に、デートがしたかったですから」 そう言って私を見下ろす仙道くんの眼が真剣で、思わず息を飲む。 「し、してたじゃん。2年前までしょっちゅう」 そう言うと、 「何で覚えてたのに、覚えてないフリをしたんですか?」 責めるようにそう言う。 「思い出したの!もう、いいでしょう?」 「良くないですよ。俺、凄くショックだったんですよ」 「ごめんって。思い出した、ちゃんと」 そう言うと 「じゃあ、最後に撮った写真も?」 試すような目で見る。 「残念。あれは消しました」 「何で!?」 当たり前かもしれないけど、抗議の声が上がる。 「だって、だまし討ちじゃない」 「じゃ、改めて。今」 「ダメです!」 口を尖らせて拗ねる仙道くん。 こういうところは、年下っぽくて可愛らしいと思う。 「そういえば、今度練習試合があるの知ってる?」 たくさんの荷物を持った仙道くんに構わず声を掛ける。 「湘北とですよね。毎年恒例らしいですよ」 あ、まだ全然余裕が有るんだ。普通に言葉を返してくる。 「あ、ホント?まだあの安西選手が監督だって?」 「俺はあんまり知らない世代ですけど。田岡監督が尊敬してると言うか...」 「私も知らない世代だよ。そっかー、どんな采配を振るうのかね」 学校に帰ると仙道くんの持っていた荷物は1年生がワッとやって来て全て持っていった。 「先生、買出し終了しました」 「ああ、ご苦労。よし、仙道。練習に入れ」 先生は2・3年生の練習を見て、私は1年の練習を見る。 と言っても基礎練を一緒にするくらいで、何も指導してない気がする。 「先生。シュート練習、見てください」 一人がそう言う。 「え、ああ。いいよ。打ってみて」 そう言うと、1年がそれぞれ自分も、と言い始める。 田岡先生を見たら、 「昔の話、しておいてやったぞ」 と自慢げに言う。 いや、大きなお世話です。 とは思うものの、私の得意なことだから、指導がしやすい。 一度体が覚えてしまったシュートフォームを直すのはとても大変で、それでも修正すれば入るようになってくる。 シュートが一番結果が見て取れるから、シュートが入るようになれば練習意欲は湧く。 湘北高校との練習試合の日がやってきた。 湘北の戦力を見に行った相田くんが言うには、天才が居るとか。 『へー...』 てのが私の感想。 自称で天才って言うヤツにろくなのは居ない。 が、それより何より。 何度見ても私の目には『仙道彰』の姿が見えない。 田岡先生はプルプル震え始めた。 「、仙道の家に電話して来い!」 「はいー!」 怒鳴られて慌てて名簿を持って職員室へ向かう。 「もしもし、仙道さんお宅ですか?」 親戚の家に下宿していると聞いたことある。親戚の名前も仙道さん。 仙道くんはさっき家を出たそうで... さっきだとー!? 体育館に戻ると皆のアップは済んで試合開始という雰囲気が漂ってきていた。 ああ、もう。ウチのエースは何やってんの!? 遅れて「ちはーす」と入ってきたのが、我が部のエース、仙道彰。 当然の如く、田岡先生に怒鳴り散らされる。 試合は接戦の末、陵南が1点差の辛勝。 課題の残る試合になった。 取り敢えず、試合の日にはちゃんと起きよう、ウチのエース。 そして、先生が話しているときはちゃんと聞きなさい。レモンのはちみつ漬けなんて食べないでさぁ... |
桜風
07.7.11
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