風と雲/きみと私 9





IH予選が始まった。

その選手登録をするとき、田岡先生に聞かれる。

も登録しておくか?」

「何のですか?」

「いや、顧問だしな」

そう言われた。

「えーと。登録しててもベンチに入らなくて良いんでしたっけ?」

「まあ、そうだな」

「じゃあ、登録されてもいいですけど、ベンチには入りません」

私の言葉に田岡先生は眉を顰める。

「なぜだ」

「悔しくなるからです」

そう言うとすんなり了承された。

え、何で??


陵南は前回ベスト4に残ったから今年はシード校で大会5日目まで試合はない。

が、部活動の一環として、第1試合から観戦しに行ってる。

私は当然授業があるからお預け。

まあ陵南の試合がある日は、日曜だからちゃんと見に行ける。

そんな試合を控えた前日の土曜日。

部員が帰った後の体育館で仙道くんがいいました。

さん」

「お願いがあります」

これまた珍妙な。というか、『先生』という単語は無視ですか?!

それはともかく。この仙道彰が態々改まって言うお願いって何?

「一応どんな内容か聞いてみましょう」

そう言うと満面の笑みで、

さんにキスしたいです」

「先生」

何度も言わせるな...

そして、どさくさに紛れてなんてことを言うのかね、この子は。

「却下。ほら、もう帰りなさい。明日試合でしょう?」

そう言って帰り支度を始めようとすると腕を掴んでくる。

「ダメですか?」

「今、そう言ったんだけど...」

「じゃあ、じゃあこうしましょう!」

まだ食い下がるか...

あ、そういえば、池上くんが言ってた。

仙道くんは1年のときはオフェンスの鬼だったとか...

あー、攻めるの得意なのねー。ふーん。

「全国。全国に行けたらキスしてもいいってのは?」

「...そんなにしたいの?」

呆れながらそう言うと、

「はい、好きですから」

と、彼は力強く頷く。

...

......!?

何、この子!!??

先生、驚いて絶句したじゃない。

「お、大人をからかうものじゃ...」

さん。顔、赤いですよ」

「夕日が...」

「もう夜ですよ?」

そう言って笑う。

体はあのときから大きくなったのに、同じような笑顔で笑う。

だから、私も思わず。

「全国、行けたらね」

と言ってしまった。

行った瞬間後悔の渦。

だって、田岡先生いつも言ってるもの。

「今まで10年以上陵南で監督していたが、今年のチームが一番全国に近い」って。

一番近いんだよ!?

あの翔陽と海南の双璧を破るんだよ。

うわ、ちょっと待って。

「ちょ、」

「最近のイイ女に二言は無いんですよね?」

グッと言葉に詰まる。

言った。確かに言った、私。

ふぅ、と溜息を吐いて、

「二言は無いわ。だって、私、最近のイイ女だもの」

そう答えた。

それを聞いて仙道くんが「知ってます」って微笑む。


何だろう、何でこの子はこんなに優しく微笑むことができるんだろう?

私にはそんな笑顔は無理。

羨ましいって思ってしまう。










桜風
07.7.17


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