| IH予選が始まった。 その選手登録をするとき、田岡先生に聞かれる。 「も登録しておくか?」 「何のですか?」 「いや、顧問だしな」 そう言われた。 「えーと。登録しててもベンチに入らなくて良いんでしたっけ?」 「まあ、そうだな」 「じゃあ、登録されてもいいですけど、ベンチには入りません」 私の言葉に田岡先生は眉を顰める。 「なぜだ」 「悔しくなるからです」 そう言うとすんなり了承された。 え、何で?? 陵南は前回ベスト4に残ったから今年はシード校で大会5日目まで試合はない。 が、部活動の一環として、第1試合から観戦しに行ってる。 私は当然授業があるからお預け。 まあ陵南の試合がある日は、日曜だからちゃんと見に行ける。 そんな試合を控えた前日の土曜日。 部員が帰った後の体育館で仙道くんがいいました。 「さん」 「お願いがあります」 これまた珍妙な。というか、『先生』という単語は無視ですか?! それはともかく。この仙道彰が態々改まって言うお願いって何? 「一応どんな内容か聞いてみましょう」 そう言うと満面の笑みで、 「さんにキスしたいです」 「先生」 何度も言わせるな... そして、どさくさに紛れてなんてことを言うのかね、この子は。 「却下。ほら、もう帰りなさい。明日試合でしょう?」 そう言って帰り支度を始めようとすると腕を掴んでくる。 「ダメですか?」 「今、そう言ったんだけど...」 「じゃあ、じゃあこうしましょう!」 まだ食い下がるか... あ、そういえば、池上くんが言ってた。 仙道くんは1年のときはオフェンスの鬼だったとか... あー、攻めるの得意なのねー。ふーん。 「全国。全国に行けたらキスしてもいいってのは?」 「...そんなにしたいの?」 呆れながらそう言うと、 「はい、好きですから」 と、彼は力強く頷く。 ... ......!? 何、この子!!?? 先生、驚いて絶句したじゃない。 「お、大人をからかうものじゃ...」 「さん。顔、赤いですよ」 「夕日が...」 「もう夜ですよ?」 そう言って笑う。 体はあのときから大きくなったのに、同じような笑顔で笑う。 だから、私も思わず。 「全国、行けたらね」 と言ってしまった。 行った瞬間後悔の渦。 だって、田岡先生いつも言ってるもの。 「今まで10年以上陵南で監督していたが、今年のチームが一番全国に近い」って。 一番近いんだよ!? あの翔陽と海南の双璧を破るんだよ。 うわ、ちょっと待って。 「ちょ、」 「最近のイイ女に二言は無いんですよね?」 グッと言葉に詰まる。 言った。確かに言った、私。 ふぅ、と溜息を吐いて、 「二言は無いわ。だって、私、最近のイイ女だもの」 そう答えた。 それを聞いて仙道くんが「知ってます」って微笑む。 何だろう、何でこの子はこんなに優しく微笑むことができるんだろう? 私にはそんな笑顔は無理。 羨ましいって思ってしまう。 |
桜風
07.7.17
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