| 仙道の学年も上がり、も教師生活2年目に突入した。 そして、その数日前。 「あのー、『意義有り』って手を挙げてもいいですか?」 職員会議でが遠慮がちに挙手する。 が、「却下ですよ、先生」とやんわりとそう言われて渋々手を引っ込めた。 教師2年目の自分に何を期待する!? そう心の中で突っ込みを入れつつ溜息を吐いた。 は来年度クラスを持つことになる。 しかも、3年の担任だ。 進路指導?そんなものはされたことはあったけど、したことなど皆無だ。 今年度は1年生の副担任となっていたため、そんなこと一切していない。 せめて、担任でもしていたら多少は違ったのだろうが... ちらりと隣に座っている田岡を見る。 の視線を感じたのか、目を逸らした。 この人か... 思わず恩師を半眼になって見てしまう。 そして、クラス替えの案を見て再び溜息。 のクラス3年4組。その出席簿の中に『仙道彰』の名前まである。 「田岡先生...」 「ま、まあ。仙道はの言うことは驚くくらい素直に聞くから大丈夫じゃないのか?」 テキトーに流されてしまった。 再び溜息を吐き、気がつけば、職員会議が終わっていた。 溜息を吐きながら職員室へと向かった。 「あ。先生」 振り返れば、溜息の原因の一端を担っているバスケ部キャプテンが立っていた。 「ああ、仙道くん。私もすぐに体育館へ行くから。ん?今休憩中?」 「いえ、俺は今来たところです」 けろりと笑顔でそう言う仙道にの顔が引き攣った。 「とっとと体育館へ行きなさい!!」 体育館を指差してそう言うと仙道は全く堪えることなく肩を竦めて 「じゃあ、体育館で待ってますねー」 と言ってのらりくらりと廊下を歩いていった。 「ったく...」 呟いて職員室へ走って戻る。 廊下を走らないように注意する立場のはよく廊下を走ってベテラン教師に怒られることも少なくない。 先ほどの会議の資料を適当に机の中に突っ込んで職員室を出た。 「先生」 田岡に声を掛けられた。 「はい?」 「まあ、先生なら大丈夫だから。分からないことがあったら私が相談に乗るし他の先生方もちゃんとアドバイスをくださるはずだ」 突然そういわれた。 田岡としても少々心苦しかったのかもしれない。 「頼りにしてます!」 「あまり頼りにされても困るんだがな」 そう言って田岡が笑い、も笑顔を向ける。 「じゃあ、田岡先生。先に体育館へ行っておきます」 「ああ、私もすぐに行く」 そう会話をして職員室を出た。 職員用の更衣室で着替えを済ませて体育館へと走る。 体育館へ着くと、部員たちが口々に挨拶をしてくる。 「お疲れ。で、仙道くん」 「はい」 に名前を呼ばれて少し嬉しそうな表情の仙道だったが 「校庭10周」 一言そう言われて憮然となる。 「俺だけですか?」 「そう。キャプテンなのに遅刻してきた仙道くんだけ。さ、早くしないと田岡先生もいらっしゃるわよ」 にそう言われて「ちぇー」と言いながら体育館を出て行った。 そんなキャプテンの後ろ姿を溜息を吐きながら部員たちは見送った。 「アイツがもっとヤル気を出してくれたらって思いますよ...」 側に居た越野が呟く。 「きっとここにいる皆がそう思ってるはずよ」 の言葉に「確かに...」と呟いた。 「それはそうと、先生」 「何?」 彦一に声を掛けられて顔を向ける。 「クラス替えとかの会議だったんですよね、さっきまでの職員会議」 部員たちには今日は職員会議で遅くなると言っていたのだ。 「ええ、そうよ」 「じゃあ、もう来年のクラス編成とか担任とか決まったんですか?」 「ええ...」 遠い目をしてそう答えるを見て皆はこれ以上聞いてはならないと思ったが、彦一のみまだ話を続ける。 「先生は来年何年生担当ですか?」 「3年の担任」 バッと皆は視線を外した。 2年目で3年の担任... 「しかも、漏れなく仙道くんがついてくるの」 皆は顔を背けた。理由は分からないが嫌な汗まで流れてくる。 「まあ、これはまだ飽くまで案だから。ほぼ決定だけど、でも、案だから。ついでに、仙道くんには絶対に言わないように。煩くなりそうだから」 皆は無言で何回も首を縦に振った。 「ま。どの道これって始業式までナイショだから。皆もくれぐれも誰にも言わないでね。特に、相田くん?」 「えー!ワイはこう見えて口が堅い男ですよ。心外ですわ」 そう言って嘆く彦一に謝っていると田岡がやって来た。 仙道の不在に気がついて部員にその理由を聞き握った拳がフルフル震えている。 いつもの体育館を見渡しては短く息を吐く。 来年度も忙しいけど楽しくなりそうだ、と。 それでも、校庭10周を終えて戻ってきた仙道に田岡の雷が落ちた様子を見て嘆息吐く。 問題は山積みだけと、と心の中で付け足した。 |
桜風
07.9.14
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