| の口から紡がれたその名前は忘れない。 高校時代にと付き合っていた男バスのエースで、そして、が怪我をしたときに彼女を支えることをせず、寧ろ深く傷つけた元彼氏。 自然と仙道の視線も険しいものとなる。 そんなことに気がつくはすがないは当たり前のように体育館へと入ってきた。 「よう、お前ら。頑張ってるか」 のことをまったく知らない部員たちは目が点で、どう反応していいか分からなかった。 戸惑いを隠せず、に視線を送る。 「...」 が呆然と呟いた。 親友の元彼氏で、このバスケ部の元エース。そんな男が何故此処に...? 「お?何だ、も来てたのか。女バスは弱くてなくなったらしいな」 そう言って無遠慮に笑う。 「何の用?」 部員たちの先頭に立ってが声を掛けた。 「ああ、噂は本当だったんだな。どうして、お前なんかが男バスの顧問なんてやってるんだ?」 ニヤニヤと笑いながらがそう言う。 言葉の裏に「負け犬のお前が」という言葉が隠されていそうな表情だ。 は一度目を瞑り息を吐いて自分を落ち着かせた。 「私がバスケ部の顧問をしているのはこの学校の教師で、田岡先生に勧められたからよ。理由が分かったらもう良いでしょう?今すぐ帰って。邪魔なの」 がそう言うと 「はーん?お前、まだ俺に振られた事を根に持ってるのか?仕方ねぇな。何なら今からまた付き合ってやってもいいんだぜ?」 そう言って笑う。 突然の視界が遮られた。 目の前に現れた壁が仙道の背中だと気付くのに少しだけ時間が掛かった。 「練習の邪魔なんで、帰ってもらえますか?」 そう言った。 「ああ?お前、俺が誰なのか知ってるのか?このバスケ部で、こいつらと同じ学年でエースだったんだぜ?」 「それが何か?」 仙道の声に温度がない。 部員たちは俄かに動揺していた。 「お前、頭悪いのか?だから、俺が指導してやったほうが、そこの負け犬に比べたら何倍も良いって言ってんだ」 がそう言うが、 「俺にはそうは思えません。先生は十分に頼れる顧問です」 「はあ?そんなぬるいことを言ってるから、全国に行けないんだろうが?!」 「ちょ、仙道くん。やめなさい」 そう言っては仙道の前に立って仙道に掌を見せて止める。 普段はもっと冷静でこんな馬鹿馬鹿しい口喧嘩に乗ったりしそうにないというのに。 「いいから、。今日は帰って」 がそう言うと 「お前にゃ用はねぇ!」 そう言っての肩を掴んで押しのけた。の自分を押しのける力の勢いについていけず、は体育館に膝から倒れた。 そのを見た仙道は「お前!」と突っかかりそうになったが 「やめなさい、仙道!!」 の鋭い声に止められる。 は一度深く息を吐き、そして、立ち上がる。 打った膝が少しだけ痛む。 「。お願いだから今日は帰って」 立ち上がって頭を下げた。 「いーやーだ。お前なんかが指導している後輩が不憫でならないってさっき言っただろう?」 そう言ってを見下した目で見る。 それを見て仙道がまたしても突っかかりそうになったが、今度はが仙道の前に立ってそれを阻止した。 「あっそ。じゃあ、仕方ないから遊んであげよう」 そう言っては目を眇める。 「はあ?!」 「フリースロー10本勝負。どちらが多く入れるか。10本同点なら、それ以降は落としたほうが負け。どう?それとも、負け犬の私に負けたら恥ずかしいからやめとく?」 挑発するようにがそう言った。 「ふざけんな。高校3年間このバスケ部でエース張ってた俺をナメんな」 そう言って上着を脱いだ。 「、大丈夫なの?」 こっそりとが聞いてくる。先ほどが以前怪我をした左足の膝を打ったことに気がついていたのだ。 「ねえ、って大学に入ってバスケ辞めたんでしょ?」 それに応えることなく、はに問う。 「一応、そんな噂は聞いたわ。ねえ、ホントに」 「大丈夫。後輩で、しかも生徒の背中に隠れてらんないって」 そう言ってウィンクした。 「仙道くん」 に声を掛けられて仙道は「はい」と返事をした。 「これが終わったら校庭10周」 「何で!?」 「冷静さを欠きまくってたでしょう?今、とても大切な時期よ?だから、走って頭を冷やしなさい。勝負は最後まで見ていっていいわ」 の言葉に「はい...」としゅんとなって仙道は返事をした。 「...それと、ごめんね。ありがとう」 俯いてがそう言う。自分の目の高さからだとの表情は見えない。それでも、何だか嬉しくて「はい」と答えた。 |
桜風
07.9.28
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