| 仙道がバスルームから出てきた途端、は爆笑した。 「仙道くん。予想していたとは言え、丈が...!!」 パンパンとテーブルを叩きながら笑う。 そんなに仙道は憮然とする。 しかし、 「ああ、仙道くん。髪もちゃんと拭きなさいよ」 とに髪を拭いてもらっていると機嫌が直っていた。 「子供じゃないんだから」 「さんよりは子供ですよー」 拗ねたようにそう言う仙道に「本当だ」と思いながらもは何も言わずにただ髪を拭いてやっていた。 「何飲みますかー?」 仙道の髪を拭きながらがそう声を掛け、仙道は「そうですねー」と言っていたが、ふと自分に当たったの腕の冷たさに驚いた。 そうだった。の一緒に雨の中走ったのだから、体を冷やしていて当然だ。 「その前に、さんもシャワー」 仙道にそう言われては首を傾げるが、 「ほら、こんなに冷たくなってる」 と仙道が両手での頬を包む。 確かに、仙道の手は温かい。 なるほど、意外にも自分の体も冷えていたようだ。 「絶対に箪笥の中を覗いちゃダメよ。というか、部屋の中のものを弄っちゃダメだからね」 は何度も念入りに仙道に釘を刺してバスルームへと向かった。 そんなに自分は信用がないのだろうか...? そう思いつつ仙道は部屋の中を見て歩く。 コルクボードに料理番組を見て急いでメモしたのか、何かの走り書きがあり、その側には数枚の写真も貼ってあった。 1枚は自分の知っているもの。 去年の3年、魚住たちの卒業式の後のバスケ部の部室で撮ったものだ。 数ヶ月前のことなのに、何となく懐かしく思う。 その隣には幼い表情のがユニフォームの4番をつけて満面の笑みで賞状を広げている写真が貼ってあった。 そして、そのを抱き締めるようにくっついているのが先日体育館へやって来ただと気付く。 「中学のとき、だろうな」 ポツリと呟いた。 それに重なるようにその下にも写真があった。 上に重なってる写真を剥がして見てみると『陵南』のユニフォームを着て笑っているの姿があった。 何故か男子部員数人も一緒に写っていてあのが当たり前のようにの隣に立っており、若かりし頃の田岡先生もいる。 のユニフォームの番号が大きい。つまり、1年のときかと予想する。 指折り数えてみた。 「8..9年前、か?」 そう思って改めてを見てみる。 今の自分の年齢とさほど変わらないをなぞる。あどけなさの残る。 何だか溜息が漏れる。今の彼女は7つ年上で、中々敵わない。 元あったように写真を貼りなおしてコルクボードから離れた。 本棚には小説が沢山並べられている。 意外と読書家だったようだ。 その本の間に何か木のようなものが立てかけてある。 それを抜いてみて仙道の頬が緩む。 自分の見たことのある風景、3年前までは自分が一番好きだった風景。 東京の、と一緒に釣り糸を垂らしていたその波止場の写真だった。 懐かしい、と思いながら眺めていると手がすべってそれが床に落ちた。 その弾みでフレームが外れる。 慌てて写真を拾い上げて違和感を覚えた。 そこには写真が数枚重なっていたのだ。 一枚捲ると3年前の、神奈川に来る前にが撮った写真。海をバックに撮らせてくれと頼まれた。 昔の自分を見るのは少し恥ずかしいな、と思って、もう1枚を見た。 それを目にしたとき、仙道は頭を抱えた。 「やばい、嬉しすぎ...」 思わず呟いたそれは、あの時、不意打ちでの頬にキスした時の写真だった。 は消したと言っていたが、態々印刷をしてこうして持っていてくれていた。 ふと、バスルームで人の気配がした。もしかしたらが出てくるのかもしれない。 仙道は慌てて写真を収めてフレームを嵌める。 元あった場所にそれを戻して、適当なところに座った。 嬉しくて緩んでしまう頬を必死に引き締めて何もなかったような表情で座っている。 そんな自分がおかしくて、別の意味でも笑いを堪えなくてはならなかった。 |
桜風
07.11.7
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