| 仙道は、昨日の部屋で目にした3年前の写真のお陰で上機嫌だ。 あのあと、結局居座って夕飯まで作ってもらった。 まあ、例によって 「新婚みたいですね」 と言ったら 「そう?私は餌付けしている飼育員の気分よ」 と返され、少しへこんだりもしたが、それでもいい思い出だ。 放課後。 仙道は体育館へ行こうとして止まる。 そういえば、職員室に来るように田岡に言われていた。 仙道は回れ右をして職員室へと向かった。 「失礼します」と職員室にいる田岡を訪ねた。 今日は少し練習に来るのが遅くなるから、とその指示がある。 職員室内を見渡してもの姿は無い。 あわよくば一緒に体育館へ行こうと思っていたのに... 「じゃあ、失礼します」 田岡にそう挨拶をして職員室から出て行こうとしたら、田岡がベテラン教師たちに捕まる姿を目にした。 「先生」という単語が聞こえて仙道は思わず足を止める。 「しかし、先生もいい加減な人ですよ」 「そうそう。生徒と馴れ合うというか。示しがつかない。昨今教師が舐められるのもわかる気がしますな」 「ああいう、ぬるい教師が生徒を付け上がらせるんですよ」 何かあったのか、田岡にそう訴えている。 「ま、まあ。先生方。先生は2年目でまだ成長過程ではありませんか。彼女なりに色々必死に頑張っているようですし...」 田岡がそう庇うが、その教師たちは納得いかないようでさらにのことを悪く言っていた。 HRが終わった後、生徒たちの質問に答えていたため職員室に戻るのが遅くなった。 部活も始まるし、早く行かねばと思って職員室のドアに手を掛けると中から自分の名前が聞こえた。 少し聞くと、まあ。良く思われていないだろうと思う教師の声で、内容も何となく分かった。 悪口を言っている途中で本人が現れたらとても気まずいのは知っている。田岡には悪いが、少し相手をしてもらっておこうと職員室に入るのをやめた。 が、 「先生はいい加減な人じゃありませんよ」 と仙道の声が聞こえて驚く。 「先生は、いい加減な人じゃない」 もう一度仙道が重ねて言う。 「おい、仙道...」 田岡が止めるが、聞きそうにない。 「先生は、慣れない進路指導をどうやったらいいか分からなくて、自分なりに勉強してるんです。折角の休みに本屋に行って進路指導に役立ちそうな本を沢山買って。生徒のことをちゃんと想ってる先生だと、俺は思います」 仙道の言葉に面食らった教師は少し怯んだが、 「何で君は先生のそれを知ってるのかね?自分で言ったのか?はっ、だったら大したことないな。誰かに褒めてもらいたくてやっていることだ」 「昨日、偶然会ったんです。沢山の本を抱えた先生に。一生懸命自分にできることを考えて生徒のために何が出来るかと行動している教師が『いい加減』なんですか?俺は、そんな人を『いい加減』という人の方が『いい加減』だと思います」 はっきりと仙道にそういわれた教師も流石にバツが悪くなり、すごすごと退散した。 誰かが職員室から出てくる気配がしてドアから離れて隠れていたは困ったな、と笑う。 本当に全面的な信頼を寄せられている。 3秒数えて職員室のドアを開けた。 の姿を目にした仙道は嬉しそうに笑う。 「ああ、。今、仙道に指示を出しておいたから」 「はい、分かりました。ほら、仙道くん。体育館へ行きなさい」 がそう言うと仙道は頷き、「失礼します」と出て行った。 「あー、」 職員室には誰もいなくなり、田岡が声を掛ける。 「はい?」 「進路指導で困ったことがあるなら、相談に乗るからな。私も先輩教師だ。何度も進路指導はしてきている」 そう言われては微笑んで頷いた。 「ありがとうございます」 ジャージに着替えて体育館へと向かう。 体育館へ着いて、仙道をちょいちょいと手招きして呼び寄せる。 「ありがとう」 一言そう言って部員たちの方へと歩んでいく。 何のことか分からない仙道は首を傾げていたが、「ま、いっか」と呟き練習を再開した。 |
桜風
07.11.21
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