| 夜、寝付けずに何となくベッドをゴロゴロ転がっていると適当に投げている携帯に着信があった。 表示を見れば『さん』とある。 キャプテンだから、と無理矢理の携帯の番号を聞きだし、彼女の携帯にも自分の番号を登録させた。 思わず正座をして通話ボタンを押した。 「もしもし」 『...ごめん、なんでもない』 そう一言言っては電話を切る。 何だろう? そう思っていたけど、体は勝手に動いていてパジャマ代わりのハーフパンツとTシャツのままのマンションへと走っていた。 以前、1度来たことのあるの部屋の前で息を整えてインターホンを押す。 何の反応もない。 「さん?」 ドアの前から声を掛けてみるとカチャリと鍵が開く音がした。 そろりとドアが開く。 「仙道、くん?」 いつもの元気いっぱいのの声ではなく、凄く儚い印象を受けるそれだった。 「あー、さっきの電話。何?」 「ごめん、こんな夜中に...」 「俺はいいから。とにかく、えーと。ドア、開けるか閉めるかしませんか?」 ドアのチェーンロックをしたままだからどうしたってこれ以上ドアは開かないし、かと言ってこのままの話をするとご近所に不審がられて通報されかねない。 「ああ、ごめん」 慌ててはドアを閉めてチェーンロックを外し、改めてドアを開ける。 「どうぞ」というが、流石にこんな夜中に上がってもいいのだろうか? 取り敢えず、玄関までは足を踏み入れた。 ドアを閉めてそれに凭れる。 「で、どうしたんですか?全然『大丈夫』じゃないように見えますよ?」 そう言っての顔を覗きこむ。 「うん...」 仙道は一度嘆息吐いて 「ねえ、さん」 と優しく声を掛けた。 俯いたままは顔を上げない。構うことなく仙道は言葉を続ける。 「俺さ。高校生で、さんより7つ下で。親の仕送りで生活しているガキだけど。でも...それでも。俺、さんが好きだよ」 仙道の言葉に驚いては顔を上げる。 「ねえ、俺。そんなに頼りない?頼れない?」 「違う」とは首を振る。 仙道は参ったな、と頭を掻いた。どうしたらいいんだろう?? 「...あのね、」 がポツポツと話し始めた。 夢を見たという。足が、砕ける夢を。歩けずに、皆に置いていかれて忘れ去られていく夢を。必死に声を出しても誰にも気付いてもらえなくて、それなのにどんどん足場が崩れて。そして真っ暗闇に取り残される。そんな夢。 ポタポタと床に雫が落ちる。 「大丈夫だよ」 仙道が躊躇いがちにの髪を撫でた。 「俺は何を忘れても、さんは忘れない。さんの足が動かなくなったら、俺が足になるよ。さんを負ぶって何処へでも行ってあげます。ホラ、俺って体がデカイし。親に感謝だ」 そう言って目を細める。 「私、意外と重いよ?」 「何となく想像つきます」 「ムカツク!!」 真っ赤に腫れた目をしたが笑っている。 「だから、もう大丈夫です。怖い夢を見たらいつでも、今日みたいに俺に電話してください。必ず駆けつけますよ。だって、ホラ。俺ってさんの王子だから」 仙道の言葉には噴出して声を上げて笑った。 「王子ってガラじゃないでしょ〜!」 「失礼ですね...」 半眼になって仙道は抗議する。 「ありがと、仙道くん」 お世辞にもきれいな顔とは言えない腫れた目のは微笑んでそう言う。 「はい」 仙道もにこりと微笑んだ。 が落ち着いたようだから帰ることにした仙道はマンションの下まで見送りに出てきたに一度振り返る。 「さっき、俺が言った言葉。その場限りの慰めでも何でもないですよ。覚えておいてください。俺は、さんが好きです」 そう言って頬にキスをした。 は仙道の言葉と突然のキスに動揺し、そして、呆然とした。 「じゃあ、また明日」 そんなにかまうことなく、仙道は背を向けて歩き出す。 少しの間呆然としていたはゆっくり自分の頬、仙道の唇が触れたところに手を当てた。 そこは、とても熱く感じた... |
桜風
07.11.28
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