想いは風に乗せて 13





インターハイ予選を間近に控えた最近は残って練習をしていた。

練習を終えて一人で帰っていると

「お!ウニ頭の仙道くん!!」

と身に覚えのない枕詞をつけられて名前を呼ばれる。

振り返れば、自他共にの親友認めるが手を振っていた。

「やほ。今帰り?感心、感心」

そういいながらは仙道の隣に立って見上げる

「ども」

仙道は軽く会釈をした。

「ねえ、今時間ある?」

「ええ、まあ」

「お姉さんが奢ってあげるから、お茶しない?」

一瞬断ろうと考えたが、少しお腹もすいている。

「あ、それともハンバーガーがいいかな?」

の言葉に仙道はにこりと微笑んで

「御馳走になります」

と答えた。


「気持ちいいくらい食べるねぇ」

間の前の仙道のトレイを眺めてが感心しながら呟く。

「すみません、こんなに」

「ああ、いいの。好きなだけ食べなさいって言ったのあたしだし」

そう言って笑った。

「どう?調子は?」

「まあ、良いと思いますよ。そういえば、さんはさ、先生と中学のときからの付き合いだったんですね」

仙道の言葉に目を丸くする。

「何で知ってんの?から聞いた?」

「いいえ。まあ、それもあるんですけど。この間先生のお宅にお邪魔したとき、写真を見たので」

仙道の言葉に「ふーん」と何か含みを持っていそうな相槌を打っている。

「...2人の進展具合はどうなの?」

突然にそう言われて仙道はむせた。

ひとしきり咳き込んだ後、息を整えながら

「何ですか、それ」

と聞き返す。

「うーん、まあ。ね?この間のの時とかさ。仙道くんが中々にナイトだったから、もとうとう陥落したのかなって思って」

「どういう、ことですか?」

「あの日さ。あたし、実は仙道くんを見に行ってたのよ。どんな子かなーって。でも、うん。ホンモノだって思った」

の話し振りからから仙道の話を聞いていたというコトだ。でも、何て話されているのだろう?

というか、陥落って...

「ホンモノだったから、仙道くんにお願いしてみようと思った」

さっきまでニコニコと仙道と話しをしていたが姿勢を正して、仙道の眼をまっすぐに見る。


が、怪我をしてバスケが出来なくなったのは、知ってるよね?」

仙道は頷く。

「その時期は?」

頭を振った仙道に

「2年の決勝リーグ中よ。あと1勝。それで全国だった」

が静かに答えた。

仙道が驚いての目を見返す。彼女の目は、少し寂しそうだった。

の得点力は、何となく想像つくでしょ?」

「はい」

「ありえないくらいの得点力。でもね、ディフェンスは穴だらけだった。だから、あたしはのディフェンスをカバーできるように練習したわ。他のチームメイトもディフェンス重視で練習してた。
あたしたちが2年のときにルーキーで、まあ。そこそこ得点力のある子が入ったの。まあ、に比べたらどの子も『そこそこ』になりそうだけど...
それはともかく。だから、全国にいけるって思った。でも、エースが抜けて。惨めなくらいの敗北。得点をに頼りまくってたってのがあるけどね」

寂しそうに笑ってコーヒーに口をつけた。

の事故の相手は、同じ陵南の生徒が運転してたバイク。しかも、無免許。相手はスポーツ推薦で陵南に入ってて、サッカー部だったかな?の、エース。彼は、事故でスポーツが出来なくなって学校を辞めた。
お詫びを兼ねてお見舞いに来たくせに『お前さえ居なければ』ってに言い捨てたの。は黙ってその言葉を聞いてたわ。そして、からも『お前に価値は無い』って言われた。はあたしがぶん殴ってやったけど」

「今、ちょっとだけスッキリしました」

の言葉に仙道は真顔で深く頷く。それに答えるようにも頷き

は1週間泣いた。1回、あたしにだけ零した言葉があるの。『死ねば楽だったかな』って。あたし、友達をあんなに怒ったことないわ。泣きながらの頬を何回も打って、そのまま病室を出た。
気まずいままお見舞いに行かなかったけど、でも、気になって行ってみたら、ってば勉強道具を広げてたの」

「勉強道具、ですか?」

は思い出したように笑う。

「そう。殆ど勉強してなかったが何かを必死にやってるの。見たら、高1の問題集だった。驚いて聞いてみると『教育学部に行かなきゃって思って』って。真顔でね。
それからはずっと勉強していたわ。元々ホラ、集中力はあるから成績もぐんぐん伸びて、東京の大学に出て行った。そっからは、仙道くんも多少知ってるんでしょ?」

「はい」と仙道が頷いた。

「だからさ、仙道くん。をインターハイに連れて行ってあげて。高校生の、キミにしか出来ないことよ」

が、まっすぐ仙道の目を見て微笑む。


仙道は一度目を伏せて

さんは、インターハイのお土産は何がいいですか?」

そう笑顔で問いかける。

は目を丸くしたあと破顔して

「優勝旗」

と答えた。

「それは、さんにあげる予定ですからダメです。でも、見るくらいならいいですよ」

という仙道の答えに

「けちー」

と言いながらは笑う。

のこと、任せたよ」

「はい、任されました」

仙道は笑顔で頷いた。










桜風
07.12.5


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