想いは風に乗せて 15




決勝リーグ最終戦。全国大会出場校は前日に既に決定しており、この試合は優勝決定戦となる。


昨日のことがあって、今日はは仙道と目を合わせていない。何となく気まずいのだ。

それについて仙道も言及せず、そのまま少しぎこちない雰囲気を醸し出していた。


試合が始まってからも昨日の試合の疲れが十分に取れていないようで、その上相手は王者海南で。

皆の疲労と緊張は隠せない。

試合も流れは海南で、そこからどうしても抜け出せなかった。

前半は、海南のリードで終了した。


ハーフタイムのロッカールームでは田岡の檄が飛ぶが、疲労の隠せない選手たちの耳にはいまいち届いていない様子だった。

控えの選手たちはスタメンの様子を心配そうに見ている。

珍しく仙道も疲れが見えていた。

後半が始まるため、ロッカールームからの移動中に一番後ろを歩いていたが溜息を吐いた。

「仙道くん」

に呼ばれて足を止める。

他の部員たちは仙道を追い越して体育館へと続く廊下を進んだ。

「If you win, you are No.1。I believe you」

がそう言う。

仙道は驚いたように目を瞠った。

「Are you OK?」

口角を上げてしっかりとの言葉に頷いた仙道は両手で頬を叩き、体育館へと戻って行った。

「ったく...」は小さく溜息を吐いた。

エースに不安を覚えれば、他の選手の士気だって落ちると言うのに...


しかし、後半。仙道の動きが見違えるほど良くなった。

「どういう魔法を使ったんだ?」

ベンチで田岡から聞かれた。

「いえ、何も。さすがに危機感を抱いたとか...?」

「だが、仙道が生き返ればこちらも希望が持てるというものだ」

田岡の目が光る。

ベンチの選手たちの目も諦めの色が無くなった。


前半でつけられた差をじわじわと詰めていき、1点差のシーソーゲームが続いていた。

1点ビハインドでラスト5秒となる。海南のディフェンスをドリブルで潜り抜けて仙道の放ったシュートはリングの上をくるくると回り、ストン、と落ちた。

ブザーが鳴る。

指を2本立てていた審判の手が下げられ、その仙道のシュートがカウントされた。

スコアボードの数字は陵南が1つ多い。つまり、

「優勝、だ...」

呆然と誰かが呟き、それを契機に皆が喜びの声を上げる。

痛いなぁ...

喜びによって勢い余った側に居る部員に抱きしめられたはそう思っていた。

そんなベンチの様子を少し不機嫌に見遣っていた仙道に海南のキャプテンの神が声を掛けてきた。

「正直、凄く悔しいんだけど」

淡々とそう言う。

「俺は去年そうだったんだよ」

「前半の動きを見てたら行けそうだったんだけどな...」

「残念だけど、ウチには勝利の女神がついてるから」

そう言うと神は陵南のベンチを見る。眉間に皺を寄せて選手たちに抱きつかれている女性がいた。ちょっと痛そうだ。

「ふーん」と呟き、「じゃあ、次は全国で」と言ってチームメイトのいる方へ向かって行った。涙を流している清田の頭に手を置き、選手たちを整列させる。


挨拶を済ませて戻ってきた選手たちにベンチの選手が駆け寄って勝利を喜ぶ。

!!」

頭上から声がした。

見上げると

!?」

「オメデトー!すっごい感動した。前半見てたらもうダメだと思ったけど。さすがに仙道くんはが信頼してるエースだね!!」

「...前半、あんなだったけどね」

そう言って笑う。

「ん?おお、も来てたのか」

が大声でスタンドと会話をしているのが目に入った田岡がスタンドを見上げると見知った人物がいた。

「御無沙汰してます、田岡先生」

「てか、。今日仕事でしょう?」

「職場には体調不良って電話入れてるから」

と言って親指を立てる。

「相変わらず堂々とサボるね。高校のときも」

「ストーップ!」

慌てて両手を振っての発言を止める。

は笑顔で肩を竦めた。

「ああ、そうそう。先生。こんなの拾いました」

そう言ってさっきから後ろを向いてる人物を引っ張る。

「引っ張んな!いてーだろ」

凄く気まずそうにそう言うのは

!?」

以前バスケ部を騒がせただった。

「ども」

「スタンドの柱の影から顔を覗かせていたから、とうとうのストーカーになったかと思って補導してきました」

の言いようには苦笑する。

。どうだ、お前の後輩は神奈川のトップになったぞ」

嬉しそうに言う田岡に対して、凄く居心地の悪さを感じているは「嬉しいっスね」と目を逸らせて答えていた。

「表彰式が終わったらお前たちもロッカールームに来い。いいな!」

田岡が上機嫌にそう言い、は頷いた。


表彰式が終了してロッカールームに居ると先ほどの2人がやってくる。

「おお。よく来たな。皆、この2人は陵南バスケ部の先輩で2人ともキャプテンをしていた。先生と同学年だ」

知ってる...

田岡を除くそこに居る人物全員がそう思う。

そのままたちも陵南へと一緒に帰ることになった。

、車は?」

「置けないかもしれないから今日は車で来なかったの」

そんな会話をしながら帰る。

って今何やってんの?」

「...フリーター」

「就職活動は?」

「してない」

「してみたら〜?」

が言う。

「面倒くさい」

「あっそ」

チラチラと前を行く生徒たちが振り返りながら3人の様子を見ていた。

その集団の一番前を歩く仙道が「くあ」と欠伸をする。

部員たちはいつもと変わらない風景が不思議だった。










桜風
07.12.12


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