| 待ち合わせ場所に行くとそこそこ人数が揃っていた。 「仙道さん!」 「...背が高いと目印になっていいわね」 いち早く仙道を見つけた後輩たちが寄ってくる。は仙道を見上げてそう言った。 「よく言われます」 仙道は軽く肩を竦めた。 「先生もご一緒だったんですか。言うてはった用事は済んだんですか?あ、そういえば。今日、監督から聞いたんですけど。さんとさんにも声を掛けてはるそうですよ」 彦一がそう言う。 「そうなんだ?」 はそう言って何でもないことのように受け入れている。 仙道は不満そうだ。 「まあ、意外なことには田岡先生のお気に入りだったからね。外面大王だったから」 がそう言うと周囲は何となくなるほど、と納得した。 「でも、の仕事が終わるのって結構遅い時間なのに」 「風邪、引いてきたりして」 冗談で仙道はそう言い、も「流石にそれはないよ〜」と笑った。 部員の人数が多いため、毎年同じ店で予約を取っている。 全員がそろい、そこへ向かうと店先に田岡とが居た。 「おお、来たか」 「ホントに居る...」 がそう言うと、はを連れて田岡から少しはなれ、 「俺だってホントは来たくなかったんだよ」 と額を寄せて小声で訴えた。 「じゃあ、断ればいいじゃん」 「どうやって!」 に言われて田岡を見る。上機嫌だ。 「孝行息子するしかないね...」 「だろ?」 そうやって仲が良さそうにヒソヒソと話しているとだったが、仙道がを引き寄せて離れた。 「さ、行きましょう。さん」 は面食らったが、プッと噴出す。 も突然のことで呆然としていたが苦笑いを浮かべた。 宴会が始まって間もなく 「おっくれましたー」 と元気な声が聞こえる。 「!?」 「やほ、。田岡先生、本日はお招きに預かり光栄です。って、も居るし...」 「うるせぇ」 はの隣に座っている仙道に軽く手を挙げる。仙道は会釈をして返した。 「、仕事は?まだ終わる時間じゃないでしょ?」 「いやぁ、今日のあたしは風邪気味でね。早く帰らないといけないのよ」 そう言ってニコニコと笑っている。 と仙道は顔を見合わせて目をぱちくりとした。本当にやったよ、この人... 「よくクビにならないねぇ」 「あそこにはあたしが必要なのよ」 「それでもさぁ...」 の言葉に「分かってるって」と手をパタパタとさせた。 そのまま追い出し会という名目の宴会は続き、も卒業した3年たちと話をしたりしていた。 が、 「重いよ、仙道くん」 さっきから仙道がくっついてきて、正直重い。自分との体格差を考えてほしいものだ、と思っていると仙道は「はい、先生」と挙手した。 「はい、仙道くん」 楽しそうに仙道の隣に座っていたが指名する。 「俺は、さんと結婚します!!」 宣言した。 丁度飲み物に口をつけていた者たちは盛大に噴出す。 も危うく飲み物に口をつけるところだったため、コップの中のカクテルを少し零してしまった。 お絞りで手を拭き、取り敢えず自分の手の届く範囲の机の上も拭く。 「ほ、本当か」 真顔で田岡が聞いてくる。その隣に座らされていたはおなかを抱えて笑っているし、は可笑し過ぎて泣いている。 「私も初耳です、田岡先生」 そう答えて仙道のグラスを手に取り、一口飲んでみる。 「誰、仙道くんにアルコール飲ませた人は」 低く怒っていると誰にでも分かるような声での目を見てそう言う。は大人しく挙手した。 「!この子、まだ未成年なのよ!!OBが未成年でアルコールって大問題でしょ!それで残った子達が大会の出場停止になったらどうするつもりよ!!」 が本気で怒った。 酔って気持ち良くなっている仙道でさえ、思わず距離を取ってしまうくらい怖かった。 「仙道くん、これ飲みなさい」 とウーロン茶をドンッと目の前に置く。 「はい...」 すっかり酔いも醒めた仙道は大人しくそれを口にした。 「本当なら胃の中のものを全部吐かせて水を飲んでアルコールを薄めてもらいたいところだけど、流石にそれはかわいそうだからなー」 がブツブツ呟いている。 「よし、仙道くん。帰りなさい。いや、ひとりで帰すのはまずいかな...?あー、じゃあ仕方ない。田岡先生、私仙道くんを連れて帰ります」 「そ、そうか?じゃあ、頼もう。戻ってくるか?」 「はい。をこってり絞りに戻ってきます」 満面の笑みではそう言った。 は情けない声で「ぇえ〜!」と言っていたが、はその抗議は無視して立ち上がる。 「仙道くん、帰るよ」 「はい」 大人しく仙道も従った。 店を出ては大きく溜息を吐く。 「分かってたんでしょ?アルコールが入ってたの」 そう言いながら歩き始める。 仙道もそれについて歩き始める。 「はい...」 「何だってそんなものを飲んだの」 呆れて聞く。 いつもちゃんと冷静でいる仙道が。未成年でアルコールを飲んで、それが発覚したら後輩たちに迷惑をかける可能性だって、自分の将来にだって色々支障があるかもしれないというのに。 「早く、大人になりたかったんです」 仙道の言葉に驚いては見上げる。 「放っておいても子供として扱ってもらえない年になるわよ」 溜息混じりにそう言う。 「だって、俺。ガキじゃないですか」 は肯定も否定もせずに黙って聞いていた。 「全然遠いです、さんが」 しょんぼりそう言う。 は困ったように笑みを浮かべる。 「ねえ、仙道くん。お酒が飲めても大人にはなれないよ。背伸びをしてたらいつかこけちゃうよ。だから、ちゃんと地に足をつけてしっかり歩きなさい。そしたら、いつか自分の行きたい場所に行けるから。 あのさ、仙道くんは自分が思っているほど子供じゃないよ。大人でもないけどね。 焦らないことよ。今の仙道くんにしか出来ないことってあるでしょ?それをやっていけばいつの間にか大人になってるんだよ、きっとね」 「ごめんなさい」 しょんぼりと仙道が言う。 は笑顔で頷いた。 「ところで、仙道くんの家ってどっち?」 わからないまま足を進めていた。 「真逆です」 「それを早く言いなさい!」 仙道の言葉には回れ右をした。 ふと目に入ったカフェを指差し、 「その前に、お茶して帰ろうか」 と言う。 「はい」と答えた仙道はいつのも笑顔だった。 仙道を送り届けて戻ってきたには予告どおりにこってり絞られ、その怒りように部員たちは「先生には逆らわないようにしよう」と皆心に誓った。 正直、田岡監督よりも怖かったと誰かが言った。 |
桜風
07.12.29
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