風に吹かれて 1





大学生活が始まったものの、全くつまらないと思う。

何せ学校に行ってもが居ない。

高校の、しかも3年のときなんか必ず毎日朝一番にの顔を見れたというのに...だから、高3の1年間は遅刻をしたことがない。実に優秀だった。


ふぅ、と溜息を吐きながら大学に入ってからの住居であるアパートに着く。

大学のバスケは流石にのらりくらりとやっていけるものではなく、高校のときに比べて幾分か疲れも大きい。

郵便受けを覗いてみると全く興味のないダイレクトメールに混じって普通の手紙が入っていた。

裏を見て仙道はその場で開封した。

『陵南高校 英語科3年目 より』

と書いてあったのだ。

なるべくきれいに開封しようとしたが、手で千切っているのだから上手くいくはずもなく、切り口がガタガタになっている。

手紙を取り出した。




仙道くんへ

何か、前に欲しいとか言ってたような...というわけで書いてみようと思ったんだけど。

殆ど電話とかで話してるから書くことがないのに気付いたので、以上です。

偶には(大学のバスケ部の練習のない日限定で)高校に遊びにおいで。

田岡先生が手薬煉引いて待ってるから。

ではでは。





P.S.お酒は二十歳になってから



本当に書く事がなかったのか、それだけ書いてあって終わった。

味も素っ気もないそんな手紙でも、自分が欲しいと言っていたのを気にしていてくれた事が嬉しかった。

封筒から何か紙が落ちてくる。

見ると、4年前の波止場の不意打ち写真で、写真の裏に『まだデータ消してなかったみたいだからあげる』と書いてあった。

仙道は思わず頬を緩め「知ってる」と呟いた。


部屋に戻り携帯を取り出して通話ボタンを押す。

2・3日に1度はダイヤルするその相手は勿論

『はーい、何でしょう』

もうなれたは挨拶とか何もなくて用件から聞いてくる。

「あ、手紙。届いた」

『ああ、そうね。今日届くはずだわ。ていうかさ、手紙にも書いたけど、これだけ頻繁に連絡を取ってたら手紙のありがたみってのが無いよね』

笑いながらが言う。

「いーや。凄く嬉しかったです。というか、データ消してなかったんですね」

『ああ、うん。あのメモリーカード使ってなかったから。久しぶりに見たらあったんだよ』

そう言われた。

「ふぅん、そうなんですか」

適当に話をあわせて仙道は答える。あの写真を前に見たと知られたら絶対に自分が怒られる。

「そういえば、今度。火曜日ですけど部活が無いから陵南に行きますね」

凄く半端な日に休みになる。

『ホント?じゃあ、田岡先生に言っておくよ。仙道くんが手伝ってくれますよって』

「まあ、手伝うことも手伝うけど...」

ちょっと違うんだよな、と思った。

『歯切れの悪い言い方ね』

笑いを含んだ声でが言う。

さんに会いに行くんだけど、俺」

仙道がそう言って5秒くらいして

『ああ、そうなんだ。うん、そう...』

という声が返ってきた。

「どうしたんですか?」

『や。久しぶりだから、ね。うん』

何が久しぶりなのか考えて仙道は笑った。

さんって本当に可愛いですね」

そう言うと

『うるさい!じゃ、またね』

と一方的に電話を切られてしまった。

「ちぇ」と呟く割に仙道の口元は笑っていた。

の性格的に『押してだめなら引いてみろ』ってことかもしれない。

「昔の人は良い事言うなぁ...」

なんとなくそう思って思わず呟いていた。









桜風
08.4.2


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