| しばらくして仙道が目を覚ますとが枕元で壁に背を預けて何かを見ている。 何かが分かった仙道は慌てて手を伸ばした。 が、届かない。 「あ、おはよう。面白いもの持ってるね」 そう言って閉じたのは料理の本。 以前が『料理をしてこそ自立よ』と言ったため、作る気になったのだ。 と言っても『初めての料理』的な本で、簡単な料理やその基本が書いてあるものを購入した。 でも、正直言うと作ってない。 「ねえ、仙道くん。今度私に料理の腕を振るってみたいと思わない?思うよね??」 「思いません...」 「私さ、お味噌汁が飲みたいな。あと、だし巻き玉子食べたい」 仙道が断ったにも拘らずはそう続ける。だが、意外と簡単そうな献立だ。思わず仙道も 「そんなので良いんですか?」 と聞いてしまった。 「ん?だって、それに大根おろしと、何か魚の焼き物で十分立派な献立じゃない。ね、この本にあったからページ折っていい?」 に聞かれて仙道は諦めて頷いた。 「楽しみ!」 そう言ってが仙道に笑いかけるものだから頑張ってみようかなって思ってしまう。 我ながら凄く単純だと思った。 ふと、微かに良い香りがすることに気がついた。少しだけ、食欲をそそるような... 「ねえ、さん。何か作った?」 「あ、うん。暇だったし。今冷蔵庫に入れるために冷ましてるから。早く元気になってアレ全部食べてね。早く食べないと傷んじゃうよ」 そう言って笑っている。 どれくらいあるのだろうと悩んだが、嬉しくて「はい」と素直に頷いた。 「どうする?何か食べる?ヨーグルトとかも買ってきてるけど」 「んー...じゃあ、食べさせてください」 もう1度チャレンジしてみる。 「仕方ないね。じゃあ、ひとりで座るんだよ」 意外なことにオッケーがもらえた。言ってみるもんだなあ、と思う。 「ブルーベリーのとかも買ってみたんだけど。どれが良い?」 数種類のヨーグルトを持ってが戻ってくる。 「じゃあ、これ」と指差したそれをが手にして蓋を開ける。 「うわ、ヨーグルトって食べさせにくい...」 零れそうなそれを仙道の口元に持っていく。 「美味しいですよ」 仙道がそう言う。 「あ、ほんと?仙道くん、コレ好きなんだ?」 「さんが食べさせてくれてますから」 そう言って微笑むとは視線を逸らして、「ああ、そう?」と言う。 照れてるのかと思うと可愛い。 「さんって可愛いですよね」 思わず口に出してしまった。 仙道は慌てての表情を見る。 案の定、何となく目が据わっている。 「ごめんなさい」 潔く謝った。 「ったく。私的には親鳥をなくした雛鳥にご飯あげてる気分なんだけどなぁ」 またしても飼育員の気分を味わっているらしい。 少しへこみつつも、それでも自分にスプーンを運んでくれるに幸せを感じていた。 「ねえ、さん。今度いつ休みですか?」 帰り支度を始めたに仙道が声を掛ける。 「さあ?まあ、テスト期間中は部活ないけど...試験問題作らないといけないしね」 の返答に仙道は唸る。 「休みの日の夕方からとかでも大丈夫ですか」 今日の埋め合わせの話らしい。 「仙道くんの部活が終わった後ってこと?」 の問いに頷く。 「ああ、うん。まあ大丈夫だと思うよ」 の返事に仙道は微笑む。 「じゃあ、」と次の約束を取り付けた。 鞄を持ったが寝ている仙道の顔を覗きこむ。 「じゃあ、ね。大人しく寝て風邪を治すこと。いい?」 「はい」 「お大事に」 そう言って立ち上がった。 「さん」 振り返ったに 「ありがとう。凄く嬉しかったよ」 と仙道が礼を言う。 ん、と頷いてが部屋を後にする。 管理人に借りた鍵で部屋に鍵を掛けてドアから遠ざかっていった。 |
桜風
08.4.30
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