風に吹かれて 6





ある日の休日。

部活帰りの仙道は、道路を挟んで向こうの歩道を歩いているある人物を見つけた。

ある人物、つまり

少し戻れば陸橋がある。丁度の歩いている方向だ。そこへ駆けて行こうとして、足が止まった。

その隣にはの元彼のが歩いていた。

偶然一緒に歩いているだけかもしれないと思ったが、不意にの肩を抱く。はそれを嫌がる様子も無く、と見つめ合っていた。

呆然とした仙道はやがて奥歯を噛み締め、拳を握った。

2人の様子から目が離せなくて、そのまま見送った。

2人の姿が見えなくなってきつく握っていた拳を開く。爪の当たっていた箇所には血が滲んでいた。

仙道は重い足取りで自分のアパートへと向かった。



鍵を開けて部屋に入る。

鞄を置いて床に座った。さっきの光景が目に焼きついて離れない。

は言うまでもなくと対等だ。

自分はいつまでも彼女に並ぶことは出来ないのに、彼は既に自分が欲しくて仕方ないものを持っている。

何もしないで手にしている。

悔しくて床を殴りつけた。テーブルの上においているものを乱暴に払う。

何かが割れた音がした。

そういえば、グラスを置きっ放しだたっと思い出す。

けど、そんなことはどうでもいい。

布団の上に無造作に置いておいた料理の本を手にとって半分に破った。

風邪を引いた自分を態々見舞いに来てくれたが今度作ってほしいと言って折ったページが目に入り、一瞬躊躇ったが更に半分に破って部屋にばら撒く。



立ち上がり、引き出しを開ける。

部屋に帰るまで待てなくて手で千切って開封したからの手紙を取り出し、一緒に貰った写真を重ねて両手で持つ。

右手を引いて破ろうとしたが、出来なかった。

「ち、くしょう...」

ポタポタと床に落ちたのは自分の涙で、そのまま床に膝をつき、蹲る。

床に額を何度か打ちつけてそのまま声を殺して泣いた。


悔しかった。

自分の欲するものを手にしていたが。

自分の好意を知っていながら、とのことを話さなかったが。

何より、への想いを断ち切れない自分が。

彼女が幸せならそれで良いと思っていた。

それなのに、それを目の当たりにすれば認められない。

笑ってしまうくらい欺瞞に満ちた自分の気持ちの幼さに嫌気が差す。


ふふふ、と仙道の口から笑いが漏れる。

体を起こして天井を見上げた。

「まるでピエロだ」

自嘲の笑みを浮かべてそう呟いた。









桜風
08.5.7


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