| が仕事を終えて帰宅すると、玄関の脇に何か塊がある。 明日もカレンダーで言うところの休日だというのに、ゴミをこんなところに置いて... そう思ったらその塊が動いた。 「いっ!?」 正直驚く。 「...」 よく見るとそれは親友ので、声から察するに泣いている。 の涙なんて高2のあの事故で入院していたとき以来だ。 「どうしたの?あ、まずうちに入ろう?」 そう言って玄関のドアを開けた。 「はい、コレ飲んで」 そう言ってココアを出す。 「うん。ごめんね」 「いいよ。で、どうしたの?」 は今日の出来事を話す。 「はあ!?とって一番ありえない組み合わせでしょう。え、仙道くんは何を見てそう勘違いしたんだろう?」 「それは、もういいよ。仙道くんには彼女が居るんだから。私とのことなんて全然どうでもいいよ」 が力なくそう言う。 そうは言ってもは信じられない。 仙道のに対する気持ちは理解しているつもりだし、そんな簡単にに代わる誰かを見つけるなんてできっこない。 仙道の気持ちはそんなもんじゃないと確信している。 しかし、今の状態のにそんなことを言っても何の慰めにもならないっていうのは分かる。 「、明日休みだよね」 突然話題を変えられては呆然と頷く。 「部活は?」 「テスト期間中だからないよ」 「んじゃ、ウチに泊まっちゃいなよ」 にそう言われ、少し考えて頷いた。 独りで居ると沈んで行って這い上がれなくなりそうだと思ったから。 の仕事の休みは平日なので、の話を聞いた次の休みには仙道の通う大学へと向かった。 あんなの誰が納得するか、と思っていた。 バスケ部なんて大抵体育館に居る。それで居なかったら、そこを行く学生たちにバスケ部の練習場所を聞けばいいのだ。 体育館へ行くと案の定バスケ部が練習をしていた。 が、体育館に仙道の姿が見えない。 「あ、すみません」 目の前を歩いた部員らしき人物を呼び止める。 「はい」と言って足を止めてくれた彼に「仙道彰って、今日は居ないんですか?」と聞く。確か『彰』だったはず。 「ああ、仙道ですか?今日は休みみたいですよ。大学の講義も出てこなかったって。風邪でも引いたんですかね?携帯に連絡しても出ないから、少し心配してるんですけど」 は数回頷いて「ありがとうございました」と礼を言って体育館を後にする。 あとは、と考えた。 まず陵南はありえない。がいるところに態々行くとは思えない。 どうしたもんかと悩んで歩いていると 「あれ、えーと。さん?」 と名前を呼ばれた。 見てみると仙道と同学年の...誰だっけ? 仙道以外興味が無かったため、記憶していない。 「お久しぶりです」 「久しぶり、元気そうね」 「ええ。先生はお元気ですか?」 「あー...どうだろう?今、結構まずいところに居るんだ」 がそう言うと目の前の青年が心配そうな表情をする。 「何処かお加減が悪いんですか?」 「まあ、お医者さんでも草津の湯でも治せない病気だから」 「ぇえ!!」と仰け反る。 「で、お医者様でも治せない病気なんだけど、キミの代のキャプテンなら治せるかもしれないからちょっと探してんのよ。大学サボって彼が行きそうなところって知ってる?」 そう聞かれた青年は 「仙道ですか?えーと、波止場とか探されました?アイツの趣味、釣りらしいですよ」 「あら、と一緒」 「出会いもそれだったらしいですけど...」 以前、仙道から聞いた言葉を思い出す。そういえば、あの2人どうなったんだろう?自分もだが仙道はもう高校生ではない。 「なるほど」とは呟き、「ありがとう」と手を挙げて海岸線に向かって走った。 残された青年は「あ、」と手を叩く。そうか、お医者様でも草津の湯でも治せない病気ってアレのことかと納得した。 しかし、何で仙道は先生の側に居ないんだろう?と首を傾げた。 「ビンゴ!」 そう言って波止場の先で海を眺めているウニ頭の背中を蹴っ飛ばす。 危うく海に落ちるところだった仙道は慌てて振り返った。 「何やってんの」 「さん?!仕事は??」 「休み!定休日!!そんなことはどうでもいいわよ。仙道くん。あたし、頼んだよね。のこと」 有無を言わせない雰囲気に仙道は口を噤む。 「に聞いたよ。何で、選りに選ってとなわけ!?あたしに言わせてもらえばアレが一番ありえないカップルよ。天と地がひっくり返ってもくっつかないわ。例えがの事を好きでも、にとってはバスケのリング以下だもん。親友とすら呼んでくれないはずよ」 「でも、一緒に歩いてたんです」 仙道がポツリと呟く。 「友達なんだからそれくらいあるでしょう。あたしだってとご飯食べに行ってるもん」 溜息混じりにが言う。 「でも、凄く仲が良さそうだったし」 「どっちかが付き合ってるて話したの?」 仙道は頭を振る。 「その前に。正直に言いなさい。彼女出来たって、嘘よね?」 仙道に彼女が居るなら誤解を解いても仕方ない。 コクリと頷く。 「ま、仙道くんが自棄を起こさなくて良かったわ。仙道くんなら女の子だってより取り見取りだもんね」 安心したように息を吐く。 「じゃあ、大学と部活をサボったついでにあたしに付き合いなさい」 そう言われて逆らえずに仙道は頷いた。 「何処に行くんですか?」 「んところ」 仙道が足を止める。 「来なさい」 「イヤです」 「誤解だって言ってんでしょ!第一、今でもが好きなら奪ってみせなよ。ヌルイこと言ってないで。どうせ、『さんが幸せなら、俺は...』とかってカッコつけてんじゃないの?あのね、もがきなさい。欲しいものに目いっぱい手を伸ばしてみせなさいよ。今の仙道くん、凄くカッコ悪いんだからね」 胸倉を掴んでそういわれた。 迫力に押される。女の人って怒ると怖いんだな、としみじみそう思う。 ある店の従業員入り口の前で「確か、そろそろ上がりの時間のはず」とが呟く。 少しして「お疲れ様でした」とが出てきた。 「、ちょっと話があるんだけど。このあと、バイトは?」 「お?。いいぜ、今日はこれでお終い」 と言って近付いてきて足を止めた。建物の影にツンツン頭が居た。 「やばい」と本能が警鐘を鳴らす。 「逃げんな」 既に目の据わっているにシャツの裾を掴まれて絶望感を抱きながら天を仰いだ。 店内で騒いではいけないだろうと、は長身の2人を連れて近くの公園のベンチに座った。 「確認するよ。、とはどういう関係?」 「ダチだよ。それ以外あるってのか?」 憮然とそう答えた。 「仙道くん?」 に促されて仙道は自分の見たものを言った。 の視線が彷徨う。 「アンタさ。もしかして仙道くんが居たのに気付いてた?」 勘の鋭いがそう言う。かなり怒っている。 マズイ、何か言わないと... そう思っても言葉が出ない。 「ホント、馬鹿正直だね。歯ぁ、食いしばりな。今回は予告してあげたよ」 そう言って立ち上がったがを殴る。パーではなく、グーで。 「アンタ、何回を泣かせたら気が済むの」 地面に倒れたを見下ろして静かにそう告げる。 「まあ、には今回の事黙っておいてあげるよ。で、仙道くん。誤解が解けたよ。さて、今度は自分で考えて行動しなさい。半分はキミが蒔いた種でもある。本当なら殴ってやりたい気持ちも有るけど、どう考えても原因はこの馬鹿だから、今回だけは見逃してあげる」 そう言ってを見遣る。「馬鹿って言うなよ。自分でも分かってんだから」と拗ねたように口元の血を拭いながらは呟く。 仙道は既に走り出していた。 「ま、頑張ってみなさい。青春なんてもがいてナンボよ」 口元に笑みを浮かべてはそう呟いた。 |
桜風
08.5.28
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