5年前。

花びらが散る中、その子は空を見上げていた。

その舞い散る花びらをその手に受けるかのように手を広げている。

不意に彼女は振り返り、彼女に見とれていた少年と目が合う。

微笑んだ彼女はスカートを翻して去っていく。


取り残された少年は、ただ、彼女の走り去った先を見つめていた。





君が好きだと叫びたい 1





海南大附属高校の入学式の日。

主席で合格した女子生徒が新入生代表の挨拶をしていた。

凛とした声は講堂の中で心地よい響きを持っていた。

退屈な入学式だったが、唯一そのときだけは熱心に演台の前の人物に注目していた。


「あ、神さーん!」

ブンブンと遠くから手を振ってくる。

「信長?」

早々に入学が決まった生徒の中には春休みの間から部活動に参加する者も居る。

この清田信長は、そのパターンに当てはまる。

そして、生来の人懐っこい性格から既にバスケ部に馴染み、先輩にも可愛がられている。

「今日から部活ですよね」

「そうだよ」

「じゃあ、マネージャー候補連れて行きますよ」

信長の言葉に神は少し眉を上げる。

もう仲良くなったクラスメイトでも居るのか?


放課後、予告どおりに信長は体育館にジャージに着替えた女子生徒を連れてきた。

その子は、今日の退屈な入学式に花を添えたと言っても過言でない、新入生代表の挨拶をした少女だった。

皆も、入学式で見た少女が目の前に居ることに少なからず驚く。

「信長...?」

疑わしそうな目で神が信長を見る。

「俺の妹です」

「ええええーーーーー!!!???」

体育館に低い、驚愕の声が多数響く。

思わず目の前の少女はビクンと肩を竦めた。

「な、何スか?」

その隣に立っていた信長もビクつく。

「てことは、双子か?!」

「うわ、似てねぇ!!」「犯罪だ!!」「詐欺だ!」

口々にそう言う先輩にとうとう信長はふくれっ面になった。

それを見て苦笑した少女が口を開く。

「えーと、清田です。ノブに強く勧められたのでバスケ部マネージャーを、と思って来たんですけど...ダメですか?」

『清田』と言った。可憐な唇が紡ぐ、あの凛とした声で『清田』と確かに言った。

部員たちはアイコンタクトで確認を取る。

3年でホームルームが遅くなった牧たちが遅れてやってくる。

皆が集まっているところに怪訝な表情で近づいた。

「お前ら、もうストレッチは済んだのか?」

「ちわっす!」「チューッス!」

口々に部員が挨拶をする。

そしてその中央に居た少女に、牧たちも驚く。

新入生代表の

「清田、?」

牧の呟きに皆が注目する。

「牧、知り合いか?」

高砂が声を掛けると

「いや。だが、今日新入生代表で挨拶していただろう?」

と、平然と答える。

ざわりと周囲が俄かに騒ぐ。

牧との頭に『?』が浮かんでいる。

気を取り直し、

「で、清田は何でここに居るんだ?」

と牧が問う。

どっちだろう...

皆は静観していたが、

ちゃんは、マネージャー希望らしいですよ」

と神が代わりに答えた。

さりげなく下の名前呼び。

「あ。牧さん、お疲れッス!」

今気付いたようで、信長が挨拶をしてきた。

「ああ。それで、えーと。そっちの清田は、マネージャー希望なんだな?」

そっちの清田ことは深く頷く。

「はい」

「だが、楽ではないぞ」

「はい。でも、何事もやってみないとわかりません」

王者の風格、というか貫禄を前にしても自分の意思をしっかり伝えるに周囲の部員は感心する。

「まあ、確かにそうだな。とにかく、やってみろ」

「ありがとうございます」

部長公認でマネージャーになったは勢いよく頭を下げた。


海南と翔陽のVS逆ハー風味で、お相手が決まってます。
まだ誰とは言いませんけどね(笑)
お楽しみいただけたらと思います。


桜風
07.2.5


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