君が好きだと叫びたい 10





IH神奈川県予選は海南大附属高校の優勝で幕を閉じた。

その日の夜、の携帯が鳴る。

「もしもし」

と出れば

?兄ちゃんだぞ』

と藤真から電話がある。

「うん、何?」

のところってテスト期間中も部活あるのか?』

「ううん、自主練になるよ。どうしたの?」

『じゃあ、マネージャーは居なくても大丈夫だよな?』

「一応、そうだって牧さんから聞いてるけど。中間のときもそうだったし」

『良し!じゃあ、兄ちゃんとデートしよう』

そんなことを言ってきた。

「お兄ちゃんたちと?」

『いーや。今回は俺だけ。俺だけじゃ嫌か?』

そう聞かれて慌てて

「ううん、嫌じゃないよ。珍しいなって思ったから。いつ?」

『今度の土曜。どうだ?』

「うん、大丈夫。お兄ちゃんは部活無いの?」

『テスト期間なんてどの学校も似たようなもんなんだよ』

と返事がある。

そんなもんか、と思っては了承し、時間と待ち合わせ場所を確認して通話を切った。

部屋から出ると信長がいる。

「出かけるのか?」

「今度の土曜にね。聞き耳たててたの?」

そう聞かれると

「んなことするかっての。聞こえたんだよ、でっかい声で話すから。まあ、楽しんで来いよ。部活が休みってこんな時しかないんだから」

と言って自室へ戻っていった。


約束の日は時間に間に合うように家を出た。

信長の勉強の進展具合も気になったが、本人が大丈夫だと言い張るのでそれ以上言うのは如何なものかと思い、大人しく藤真と出かけることを選んだのだ。


!」

待ち合わせ場所の駅のロータリーで周囲を見渡すと、藤真が駆け寄ってくる。

「健司お兄ちゃん。あれ?私遅れた?ごめん!」

「遅れてないぞ。兄ちゃんがちょっと早く来すぎたんだ。じゃあ、行こうか」

そう言っての手を取る。

自身もその行動に全く違和感がなく、そのまま並んで歩いた。

「何処行くの?」

は何か買いたいものとかあるか?」

「うーん、これと言って思い浮かばないなー」

「じゃあ、まず兄ちゃんの買い物に付き合ってくれるか?」

そう言われて頷く。

藤真が向かったのはスポーツ用品店だ。

「バッシュを買おうかと思ってね」

なるほど、練習を沢山すれば傷むのも早い。

店員と藤真が話している間には店内を見て回る。

とある品の前で足が止まる。

靴紐だ。

色とりどりの紐靴が置いてある。

はそれらを手にとってレジへ向かった。ひとつひとつ違う袋に入れてもらい、会計を済ませる。



少し離れたところから藤真の声がする。

慌てて品物を受け取って鞄に入れて藤真の元に戻る。

「何?」

「どっちが良いと思う?」

「うーん...こっちの方がカッコイイと思うよ。履き心地は大丈夫?」

「それは大丈夫。じゃあ、こちらをお願いします」

と言っての選んだバッシュを店員に渡した。

藤真がレジで買い物を済ませている間、外に出た。

ひんやりした店内と間逆の気温に少しだけうんざりする。

「お待たせ」

背後から声を掛けられて振り返る。

「ううん、大丈夫」

「じゃあ、次は何処行こうか...」

「あ、美術館行きたい。確か、今日までやってると思うの。部活があるとどうしても行き辛いから」

「よし、じゃあそうしようか」

の希望通り、美術館へと向かった。


しかし、最終日のその日は人が予想以上に多かった。

「どうしよう、健司お兄ちゃん」

「うーん。でも、このチャンスを逃したら次はいつになるか分からないんだよな」

「うん...でも、いいよ。別のところに行こうよ」

がそう言うが

「いーや。行こう。ゆっくり出来ないかもしれないけど、チャンスがあるならそれを掴まないと。は見たかったんだろう?ちょっとチケット買ってくるから待ってろよ。あ、学生証ある?」

そう言って券買所へと向かって行った。

人ごみを掻き分ける姿も絵になっているなー、と妙なところで感心してしまう。

暫くして藤真が戻ってきた。

長蛇の列に並んで、周囲と同じ速さで展示品を見て回る。

、大丈夫か?見えるか?」

「うん、何とか...」

人にもまれてちょっと息苦しい。

「くそー、花形が居たらを高い高いさせるのに。そしたらも見やすいだろう?」

見やすいけど、絶対に嫌だ...

は心の中で強くお断りした。

結局、2時間近くかけて全ての展示品を見終わった。

美術館から出たときは、は既にへとへとだった。

「大丈夫か?そろそろ良い時間だし、ご飯食べに行こう。美味しいところ知ってるから、そこで良いか?」

「うん、そこがいい」

脱力しているの手を取り、気遣いながら藤真の行きつけの店へと向かった。


店内に入り、椅子に座るとひとごこち着く。

メニューで、藤真のオススメを聞いて選び、注文を済ませる。

「大丈夫か?」

「うん、ありがとうね。健司お兄ちゃんも大変だったでしょう、あんなに人が居て」

「俺は、まあ。大丈夫だけど...」

「ありがとう。見たいものは見れたし、行って良かったよ」

の言葉を聞いて、藤真も微笑む。

「それは良かった」

「あ」と言っては鞄を開ける。

何事かと藤真はその様子を見守っていたが、突然自分に小さな袋を差し出してきた。

「何?」

「あげる。健司お兄ちゃんたちにはいっつも良くしてもらってるから」

「別に良いのに」と言いながら受けとって袋を開ける。

「靴紐、か」

「そう。良かったら使って。あと、お願いがあるんだけど」

のお願いなら、兄ちゃん、何でも聞いてあげるぞ」

「これ、透お兄ちゃんと一志お兄ちゃんに渡してくれるかな?」

そう言われて一瞬固まる藤真。

「兄ちゃんが貰ってあげるよ」

「ダメ!透お兄ちゃんと一志お兄ちゃんにもお世話になってるお礼がしたいの。安いものでちょっと申し訳ないんだけど...」

「いーや。安いとかそう言うのは関係ない!その気持ちが兄ちゃんは嬉しいぞ。ありがとうな、。花形たちにもちゃんと渡すから」

優しく微笑む藤真の言葉に安心しても「お願いね」と笑顔を返す。


食事が済んだ後、の荷物は何故か藤真の見立てた服が増えていく。

その大半は藤真の持っている金色のカードで支払われた。

は申し訳ないと言っていたが、

「今度兄ちゃんとデートするときに着てきてくれたら嬉しいからいいんだよ」

と言って聞かない。

結局は沢山の荷物を持って帰ることとなった。

藤真は送っていくと言っていたが、電話があって用事が出来てしまった。

非常に悔やむ藤真に別れを告げては自宅を目指した。


この話では、藤真金持ち坊ちゃん説を取らせていただいております。
そして、ヒロインのお出掛けの相手が藤真。
カッコ良いんだか、変な人なのか。良く分からないポジションになりつつあります...


桜風
07.3.9


ブラウザバックでお戻りください