君が好きだと叫びたい 12





全国2位の成績を引っさげて帰る海南大附属高校バスケ部も、疲れを取るために数日の休みが与えられた。

帰りの新幹線を待っている間、の携帯が震える。

周囲に部員も居るし、電話に出るのは非常識だろうと取り敢えず通話をしないようにして着信の表示だけを見た。

『健司お兄ちゃん』と表示されている。

「出れば良いのに」

いつの間にか隣に立っている神がそう言った。

「じ、神さん!」

「ああ、驚かせちゃった?ごめんね。でも、まだ新幹線に乗ったわけじゃないから電話に出ても良いと思うよ」

そんなことを言う。

「長くなりそうですから」

と困ったように笑う

「ちょっと、ごめんなさい。メール打っても良いですか?」

「いいよ、俺の事は気にしないで。荷物も見ててあげる」

そう言って微笑む神にペコリとお辞儀をして少しだけ離れてはメールを打ち始めた。

「あれ、。アイツ何してるんですか?」

が居るはずのそこには神が居て、そこから離れたところにが居る。

「メール。藤真さんにね」

ちゃっかり携帯の画面を見ていた神が信長にそう言う。

「藤真、ですか...」

「まあ、明日から部活が休みなの知ってるんじゃないの?」

「翔陽ってそんなに暇なんですか?」

「さあ?」

そう話しているところに、が戻ってきた。

「あれ、ノブ。お土産選んだの?」

「ああ。これで良いだろ?」

適当に選んだそれを掲げる。

「まあ、家のお土産なんて何でも良い感じするもんね」

またの携帯が震えたらしい。取り出して見ている。

数秒の間。

「ノブ。明日、明後日暇?」

「おう。特に予定は無いな」

「神さんはどうですか?」

「俺もまだ予定は入って無いけど...?」

「おう、どうしたお前ら」

「うわ、丁度いいところに。牧さん、明日、明後日予定が入ってますか?」

何の前振りもなく、が訊ねる。

「あ、ああ。一応、暇だが」

「温泉行きましょう。夏だけど」

3人は無言で顔を合わせた。


翌日、バスに揺られて奥地にやって来た。

が迷うことなくサクサク進んでいくものだから余計に心配になる。

この道で、本当に良いんだな?

30分くらい歩いた先には温泉旅館があった。

そして、その正面玄関の前に長身2人と背が高めの人物1人が立っていた。

「健司お兄ちゃん!」

が手を振る。

ー!」

と手を振って、藤真のその動きが止まった。

「何だ、あの後ろの黒いのとひょろっこいのとサルは!?」

振り返って眼鏡の花形に聞く。

「何でお前はこういうオチが読めないんだ。ちゃんが清田を誘わないはずが無いだろう」

溜息混じりに花形が答え、その答えが気に入らないらしい藤真が

「友達も、って言ったんだぞ。友達...あの黒いのとひょろっこいのは友達なのか!?」

と長谷川に食って掛かる。

「少なくとも、親しいということだろうな」

冷静に返された。


「いらっしゃい、ちゃん。疲れただろう?」

ショックのあまり口が利けなくなった藤真に代わって花形が声を掛ける。

「わ、透お兄ちゃんと一志お兄ちゃんもいるんだ。久しぶりー」

「そうだね。牧、全国2位おめでとう。ベスト5にも選ばれたみたいだな」

「ああ、ありがとう。その..藤真は大丈夫か?」

「放っておけばいい。取り敢えず、中に入ろう。外は暑い。藤真、先に入っておくぞ」

そう言って花形が旅館の中に入っていき、牧たちも続く。

「あの、健司お兄ちゃん。ノブたちダメだった...?」

心配そうに見上げるに意識を取り戻した藤真は

「ちょっと予想外だっただけだよ。じゃあ、入ろうか」

と笑顔で応え、の荷物を持ってやる。


「清田、よく来る気になったな。藤真のこと、知ってるんだろう?」

先に旅館に入った花形が聞く。

「いや。まあ、牧さんに聞いてるんでどんな感じかは何となく理解したつもりなんスけど...今日の温泉が藤真さんに関係有るとは思ってなくて」

しどろもどろに答えた。

には「温泉に行こう」って言われただけだった。

「まあ、頑張れ。俺はちゃん絡みで藤真にあまり係わりたくない」

「同じく」

翔陽2人にそう言われて

「頑張ります...」

と力なく答えた信長だった。

遅れて入ってきた藤真に早速睨まれる。

ああ、もう帰りたい...

「で、だ。此処は俺の親戚の経営している旅館で、今は時期じゃないからタダで泊めてもらえることになった。そして、部屋は一応3つ用意してもらえた。という訳で、俺とは同じ部屋になるから、お前らは好きに部屋割りしろ」

言い終わった途端、花形が藤真の頭をはたく。

「藤真、常識の範囲内で可愛がれ。いい加減にしないと犯罪になるぞ」

ちゃんは一部屋使っていいから」

花形が藤真に説教している間に、長谷川が代弁した。

「え、いいの?」

「ああ、いいよ」

と笑顔の花形。

「うん、いいよ...」

ションボリしている藤真。

そんな2人を見て長谷川は深い溜息を吐いた。


「じゃあ、折角だから海南と翔陽の親睦ってことで。部屋は両校混ざってしまおう。という訳で、俺は清田と同じ部屋になる」

と突然の提案をしたのは、勿論藤真。しかも、断言。

「俺は、藤真さんと同じ部屋がいいな」

と神が言い出す。

「じゃあ、俺と長谷川と牧が同じ部屋で、藤真、神、清田が同じ部屋だな。部屋に案内しよう」

そう話を打ち切って花形が部屋を案内するべく旅館の奥へ入っていった。

「ヨロシクなー、清田」

藤真が信長と肩を組む。

「...はい」

泣きたい...


本当に助けない花形たち。
彼らが救いの手を差し伸べるときは、ヒロインが非常に困ったときだと思われます。
頑張れ、信長!!
藤真はいつも以上に壊れてて、神さんはいつもに増して黒いです...


桜風
07.3.16


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