君が好きだと叫びたい 15






翌日、クリーニングが済んだ学校の制服を着る。

部屋のドアをノックされた。

ドアを開けると

、学校に行くのか?」

藤真が立っていた。

「うん。休めないよ」

「送っていこうか?」

「ううん、大丈夫。健司お兄ちゃん、朝練があるんでしょ?」

「あー、うん。じゃあ、俺は学校に行くから。海南に居づらかったらすぐに帰っておいで。誰も怒らないからな」

そう言って藤真は学校へ行った。

は重い足取りで学校へ向かう。

部活動には出たくなかった。

取り敢えず1週間くらい休めないかと思い、高頭監督に仮病を訴える。

以前貧血で倒れたこともあって、それはすんなり了承された。

それでも、そんなに長い間は休めない。

どうすればいいのかわからないまま時間が過ぎていく。


信長は休み時間のたびに教室へやって来た。

顔を合わせたくなかったから友達に頼んで不在だと言ってもらった。

帰る家は、昔自分が住んでいた家の隣。

藤真は部活が終わるとまっすぐ家に帰ってきていた。

だから、寂しいと思うことはなかったけど、それでも何か物足りない感じがした。



「なあ、信長。ちゃんはそんなに体調が悪いのか?」

が部活を休み始めて3日経つ。

居残りでシュート練習をしている神が、一緒に練習をしている信長に聞く。

、ですか?」

「そう。監督が言うには、体調が優れないから部活は休んでるんだろう?お見舞いに行こうか?」

そんなことを言う。

は、今家に居ませんよ」

「は!?」

服を着替えた牧が降りてきた。

さっきまで一緒に残って練習をしていたのだが、先に上がったのだ。

「先にあがるぞ」

「あ、お疲れ様です」

牧の声に信長が反応する。

が、神は険しい表情をして信長を見ていた。

「神...?」

「信長、家で何があったんだ?じゃあ、ちゃんは今何処に居るんだよ」

数日前から部活動に出ていないマネージャーの名前が出て、牧も注目する。

「知らないっす。文化祭の準備で友達の家に泊まってるって電話があったらしいですけど」

ちゃんのクラス、そんなに準備が必要じゃないだろう?!」

話が飲み込めない牧はことの流れを静観していた。

「そんなん、知らないっスよ!アイツ、学校でもずっと俺を避けてるんですから。聞こうと思っても話が出来ないんじゃなにも出来るわけ無いじゃないですか!」

「だから、ちゃんとそうなった原因を聞いてるんだ!」

「まあ、待て。神、落ち着け。清田、は家に帰ってきていないのか?」

2人の間に入って牧が宥める。

「はい」

「原因は?何か心当たりは無いのか?」

牧に言われて、信長は俯いて

「俺が、を好きだからです」

と言って走り去った。

牧は深い溜息を吐く。そして、神を見る。

「だったら、ちゃんと掴まえておけよ」

それは小さく、絞り出すような声だった。

「恐らく、藤真のところだろう。藤真はあんなだけど、は慕っていたからな」

牧がそう言う。

「俺は、ダメだったってことですね」

「神?」

「頼ってくれてもいいって言ったんですけどね。俺じゃなくて、藤真さんの方を頼ったんですね」

寂しそうに呟く。

「神は、のことを...」

「好きですよ。でも、信長というよりも、藤真さんが抱いている感情に近いと思います。だから、あの人が好きになれませんよ」

自嘲気味に笑う。

「やはりそうか」

恋愛ごとに疎い牧でも、いい加減分かり易いと思ったのが信長と神だ。

もっと早く信長の話を聞いてやっていれば、こんなこじれることはなかったのかもしれない。

恋愛は当事者の問題だと位置づけているために口出ししなかったのだが、聞くぐらいはしてやればよかった。

「牧さん、お疲れ様です。俺、練習して帰りますから」

と牧の帰宅を促す。

ここに居てほしくないのだろうと察した牧は

「あまり根を詰めるなよ」

と声を掛けて体育館から出て行った。

神はいつもどおりシュートを放つ。

綺麗な弧を描いたボールはリングに当たって落ちていった。

「クソ!」神は毒づき、深呼吸をする。

そして、放ったシュートは綺麗にリングの中に吸い込まれていった。


学校を出た牧は藤真の携帯に電話をする。

『何だ?』

「話がしたい。時間はあるか?」

『...分かった。今日は無理だ。明日でいいか?』

「悪いな」

『全くだ』

藤真との約束の場所を確認して電話を切った。


翌日、部活を時間通りに終わらせて牧は喫茶店へと向かった。

「藤真」

遅れてきた藤真に手を挙げて自分の居場所を知らせる。

それに気付いた藤真は少し早足になってやってきた。

「何処のサラリーマンかと思ったぞ」

開口一番の挨拶はそれだった。

「悪かったな」

そう言って口を尖らせる。

そんな牧に構うことなく、藤真はコーヒーを注文していた。

「で、何の用だ?」

藤真が話を切り出す。

が世話になってるんだろう?」

が帰りたくないというんだ。俺は帰す気は無いぞ。どうせ原因は清田だろう?」

藤真の言葉に驚く。

はお前にそこまで言ったのか?」

「残念ながら健司お兄ちゃんにはそこまで言ってくれないさ。ただ、清田の名前を出したら泣きそうな顔をしたんだ。何だ、お前の後輩は!」

少し語気が強まる。

「さあ、な。ただ、アイツもかなり参ってるようなんだ。学校でもずっと避けられてるとかで」

「ザマミロだ」

「なあ、藤真。お前はに帰るように説得する気はないんだな?」

が自分の意思で『帰りたい』と言えば、すぐにでも送って行くさ」

牧は溜息を吐く。

「お前も、の事が好きなのだろう?」

藤真の眉間に皺が寄る。

「ああ。だが、『好き』とかそう言う次元の話じゃない。人類愛を語っている人間が居るだろう?」

話の方向が良く分からないが牧は頷いた。

「俺は、その人類愛を、ただだけに注いでいる。が俺と結婚したいと言えば、俺は迷わず今すぐの両親に挨拶に行く」

どう返していいか分からない...

「まあ、お前には分からんだろう」

「ああ、すまない」

「いや。たぶん、それが普通だ。とにかく、俺は誰よりもの幸せを願っているんだ。そう解釈してくれて構わない。お前は?」

「好きだよ。妹みたいに思っている。だから、花形たちと近い感情なんだろうな。が悲しんでたら何とかしてやりたいし、笑っていたら嬉しいし。そんなところだ。だが、そろそろ部活の方がまずいだろうな」

「そういえば、出てないな。休ませてもらっているのか?」

「恐らく、仮病でな。以前貧血で倒れたことがあるから、監督もそう強く言えないところがあるんだろう。居なかったら居ないで困るしな。辞めろとすぐには言われないだろうが、長くは持つまい」

ふぅ、と溜息を吐いてネクタイを緩める。

だから、そういう仕草がオッサンだというのに...

不意にテーブルの上に置いている藤真の携帯が震えた。

表示を見ると、それは花形からだった。


私は牧さんが好きですよ?
オッサンとか言いまくってますけど、大スキデスよ?
愛情の裏返しです。
ところで、相変わらず藤真が変な人ですね(苦笑)


桜風
07.3.26


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