| テーブルの上で震える携帯を気のなさそうに眺めていた。 「出たらどうだ、藤真」 「ああ」 通話ボタンを押す。 『藤真か』 「そうだ。何だ?」 『ちゃんが居ない』 「が!?」 藤真の口から出たの名前に牧も反応する。 「どうした、藤真」 「居ないってどういうことだよ!」 『今、お前の家に居るんだが。ちゃんを呼んでも出てこないから家の人に頼んで、部屋のドアを開けてもらったらもぬけの殻で置手紙があった。“健司お兄ちゃん、ありがとう”って。何処に行ったか心当たりは無いか?』 「あったら今こんなに驚いてない!」 「どうした?」 もう一度牧が聞くと藤真は電話から少し顔を離して「が居なくなったらしい」と答え、再び花形との通話を続ける。 牧も携帯を取り出して、に電話してみた。 が、やはり反応は無い。 急いで神の携帯に掛けた。 『どうしたんですか?珍しいですね』 「が藤真の家から居なくなった」 一言そう言うと 『が、何ですか!?』 一緒に居たのか、神の携帯から信長の声がする。 「が藤真の家から居なくなったらしい。心当たりは無いか?」 そう言うとガン、と衝撃音が聞こえた。 すぐに神が 『信長のやつ、俺の携帯投げていきました』 と先ほどの音の原因を解説する。 「ああ、そうか。それは災難だったな。とにかく、お前も探してくれ。俺もこれから探す」 『はい』 そう言って牧は立ち上がった。 牧が電話をしている間、藤真は長谷川に連絡を入れていた。 「藤真、捜しに行くぞ」 「ああ」 が居なくなったと聞いてすぐに浮かんだ場所がある。 そこへ向かって信長は走った。 今と同じ季節ではないが、初めてを見たのはそこだった。 信長がそこに着くと、少女が手を広げて落ち葉を受け止めている。 「!」 信長の声に肩を震わせたが振り返る。 慌てて走り出そうとするの腕を掴んだ。 「逃げんな!」 「痛い、離して!!」 「離さない」 信長と目が合って、は息を飲む。 怒ったような、嬉しいような、泣きそうな、沢山の感情を湛えているその瞳から目を逸らせなくなる。 「、聞いてくれ。俺は、が好きだ」 「何、言ってるの。だって、ノブは私のお兄ちゃんで、私はノブの妹でしょう?」 「違う。は、だ」 「ダメだよ..ッ」 突然強い力で引き寄せられて抱き締められる。 「ダメじゃねぇ。そんな、兄貴とか妹とかカンケーねぇ。初めてをここで見た。その時、もう好きになってた。親父に、奥さんになる人とその子供さんだって紹介されたとき、がその子で、正直どうしていいかわかんなかった。好きな子が、家族になるって。だから、役割をすぐに決めた。俺が兄貴で、が、妹。でも、それだけだとダメだった。一緒に暮らしてどんどん好きになった。抑えられなくなって、あの時キスをした。のことを考えなかったことは謝る。でも、キスをしたことは謝らない。アレが、正直な俺の気持ちだから。が好きなんだ」 「私、凄く頑張ってたのに...」 信長の胸に顔を埋めているがそう呟く。 「何を?」 「ずっと頑張って妹だったのに」 「じゃあ、もう頑張んなくてもいいぞ」 「ノブのクセに偉そうだよ」 なんだそりゃ、と信長は笑う。 「なあ、。気付いてっか?俺がどんだけヤキモチやいてたか。神さんと楽しそうに話してるの姿を見てるだけで心が騒いでたし、他の部員とだって話してほしくなかった。でも何でだろうな。牧さんと話してるのを見るのは何ともなかった。親子に見えたからか?」 「牧さんに言ってやろうっと」 「う、ウソウソ!...あと、藤真さんたちとすげぇ仲がいいのも面白くなかったし」 「健司お兄ちゃんたちはお兄ちゃんだよ」 「それでもヤだったの!なあ、。家に帰ろう。が居ないと家ん中物足りないんだ。が居ないとダメなんだ」 信長の言葉にがクスクス笑う。 「何だよ。俺は真剣に話してるんだぞ!」 を剥がして目を覗き込む。 「だって、私も同じことを思ってたの。健司お兄ちゃんは凄く良くしてくれて、私が寂しくないようにいつも早く帰ってきてくれたけど。でも、何か違ったんだ。ノブが居ないって凄く変な感じだった」 そう言って微笑む。 「な、キスしていいか?」 「そういうのは聞くもんじゃないと思う」 「聞かずにキスしたら逃げたじゃねぇかよ」 信長の抗議に 「それは、ケース・バイ・ケースです」 とが微笑んだ。 ゆっくりと2人の唇が重なる。 秋風に舞う木の葉が祝福するかのように踊っていた。 「...出て行きづらいな」 「タイミングが...」 「なあ、牧。清田を1回殴っていいか?というか、殴らせろ」 「あ、俺も殴ってやりたいです」 「やめとけ、お前ら...」 木の影に大きな高校生が隠れていた。 3人ははみ出していたが、今のところと信長には見つかっていない。 |
最後の会話は、花形、長谷川、藤真、神、牧の順です。
たぶん、翌日の部活とかでは、信長は神に苛められてます。
ほぼ確実に。
彼の苦労は絶えないと思います。頑張れ、信長!!
『君が好きだと叫びたい』はこれにて完結しました。
ありがとうございました。
桜風
07.3.30
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