君が好きだ叫びたい 3






だいぶマネージャー業に慣れたは意を決して牧にお願いをすることにした。

「牧さん!」

休憩時間。

鬼気迫る表情のに声を掛けられて不覚にも少し怯んでしまった高校バスケット界神奈川の帝王、牧紳一17歳。

「な、なんだ?」

「更衣室、掃除させてください!」

の言葉に周囲は一瞬水を打ったように静まり、そして、波紋が広がるかのようにざわめきはじめる。

「突然だな。いきなりどうした?」

「この前、更衣室の中が見えたんですけど。汚くないですか?綺麗にしましょうよ」

「しかしなぁ...」

今までこの状態で何もなかったし、何より部員たちが無言で反対している。

「けど、あれだと不衛生ですよ!」

そう言われたらそれを覆すだけの理屈は持っていない。

とにかく、部員たちは反対らしい。まあ、私物で女子に見せられないものを持ち込んでいるのだろう。何度か乱雑においてあるそれらを目にしたことがある。

「今日ではなく、別の日なら、いいぞ」

真剣な眼差しで見つめられ続けて牧は思わずそう答えてしまった。

「今日はダメですか...」

がっかりしたを目の前に、牧は内心慌てる。

「一応、部員たちも自分たちで片付けられるところは片付けてておきたいだろうからな。今日は諦めてくれ」

ワンクッション置いての許可に部員たちはとりあえず安堵した。

「じゃあ、明日」

早すぎだ!と皆は牧にプレッシャーを与える。

「...1週間待ってくれ」

恐らく、にとっても部員たちにとっても最大限の譲歩がこれくらいだろう。

実際

「わかりました。早いに越したことは無いと思うんですけど...」

と渋々ながら了承し、部員たちも安堵の息を吐く。


とりあえず掃除は部員が帰った後の方がいいだろうということになり、部員が帰った後で時間が多く取れる土曜日に決行となった。

それまでに部員たちは自分のロッカーや棚に置いていた本などを自宅に持って帰っていた。

「じゃあ、ロッカーは開けるなよ。プライバシーだからな」

そう言って牧が更衣室のドアを開ける。

「頑張ります!!」

腕まくりをしてはバスケ部の更衣室の中に入っていった。

「何か手伝えることがあれば言えよ。体育館に神と清田も残ってるしな」

牧が声を掛けると、窓を開けていたは振り返り、

「ありがとうございます。でも、心配御無用です!」

バンダナをしてマスクとゴム手袋を装着したはビッと親指を立てて返事をした。

臨戦態勢のについていけず、「じゃあ...」と言って牧は体育館に降りた。

「牧さん、は...!?」

牧の姿を認めた途端、信長が駆け寄ってきた。

「いや。もう。何と言うか...家でもあんな感じなのか?」

「まあ、大体は」

「信長は手伝ってあげないのか?俺たちだったら気兼ねするかもしれないけど、信長だったら兄妹なんだし、そんなのないだろう?」

神がそう言う。

「いや。言ってみたんスけど。『ノブは散らかす方だから、余計な仕事が増えそうでイヤ』って断られて...」

ああ、そんな感じ...

牧と神は同じことを思った。


1時間近くが経つが、は降りてこない。

「ちょっと俺、様子見てきます」

何だか心配で堪らない信長が階段を駆け上がった。

ドアが開いたままの更衣室を覗き込む。

誰も居ない。

「あれ...?」

「きゃあ!!」

気付いたときにはずぶ濡れで、目の前には同じくずぶ濡れになったがへたってる。

「もう!ノブ!!」

「お、俺か!?」

明らかに怒った表情のに、慌てる信長。

そして、体育館まで響いたの声に牧たちが更衣室にやってくる。

「どうした!?」

目の前にはずぶ濡れの清田兄妹。そして、派手にぶちまけられたバケツと水。

は、下はジャージを穿いているのだが上は白い長袖Tシャツであったため、水に濡れれば下着が透ける。

それに気付いた牧は自分が来ていたジャージを脱いでに羽織らせる。

「牧さん...?」

「いいから着てろ」

「でも、濡れますよ」

「いいから!」

牧の語気の強さに少し肩を震わせ、恐る恐る袖を通す。

「すみません...」

しゅん、となった

「大丈夫だよ。着替え、持ってきてる?」

神が優しく声を掛ける。

「はい」

「じゃあ、まず着替えておいで。そのままだと掃除にもならないだろう。ここの水は俺たちがモップかけとくから」

「ごめんなさい...」

「いいよ。元はといえば、俺たちが更衣室を掃除してなかったのが原因なんだし。ほら、風邪引くよ。今が大事な時期なんだから、マネージャーが風邪で居なくなると俺たちも困るしね」

神に促されてトボトボとは着替えるためにその場を去った。

「牧さんも、もう少し優しく言ってあげればいいのに...」

神にそう言われ

「仕方ないだろう。お前じゃあるまいし、そういうのは苦手なんだ」

と少し居心地悪そうに弁明した。

「とりあえず、モップ持ってきますね。信長も着替えておけよ」

神に言われて信長も更衣室へ入り、着替えた。


「ごめんなさい、牧さん。あの、ジャージは洗ってお返しします」

しょんぼりとそう言うに牧は視線を彷徨わせて「いや、別に構わないが...」と返事をする。

そんな2人の様子に神は溜息を吐き、

ちゃん。もうこうなったら俺たち全員で掃除しよう。その方が早く済むし」

と提案する。

「え、でも...」

渋る

「また『ご迷惑』とか思ってる?そうだなー。じゃあ、この掃除が終わったら手伝った俺たちにコンビニでアイス奢ってよ。俺たちのバイト代。どう?」

と神が提案する。

現在ここに居るのは自分を含めて4人。出来なくはない。

それに、これ以上我侭を通すわけにもいかないだろうと、は頷いた。

「じゃあ、手分けして掃除しましょう。牧さん、モップお願いします」

「お、おう」

「信長は、雑巾で棚の上を拭いて」

「はい!」

と神がテキパキと指示を出す。

「あの、神さん。私は...」

ちゃんは、俺たちの応援」

「...はい?」

「ダメかー。そうだな。じゃあ、高いところは俺たちが拭くから、下のほう、お願いしてもいい?」

「はい」

牧が手近にあったバケツの中の雑巾を固く絞ってやり、に渡す。

「さっきはきつく言ってすまなかった。ジャージはいつでもいいからな」

牧にそういわれ、は笑顔で「はい!」と答えた。

やはり、は笑顔がいい。

牧は視線を逸らしながらそう思った。


男子部の部室ってどんなのか実際見たことありませんけど。
大抵エロ本等々があるイメージです。
海南大附属高校籠球部だってそれは同じであるはず!(笑)


桜風
07.2.13