君が好きだと叫びたい 4






部活動が午後になっている休日。

は用事があり繁華街へ向かった。

買うものを買って学校へ向かう途中、見慣れた背中がある。

「牧さん!」

驚いて振り返った顔に思わず笑みが零れる。

帝王だって、驚くんだ。

「こんにちは」

「ああ、どうしたんだ。こんな所で」

「買い物です。絆創膏と消毒液。先に買っておこうかと思って。牧さんは?」

牧も買い物したらしく袋を持っている。

「ああ、Tシャツが欲しくなってな。これから夏場はあって損は無いから」

「頑張ってお洗濯しますよ。じゃんじゃん着替えてください!」

そう言ってガッツポーズを見せる。

「頼もしいな」

のそんな反応に、牧は小さく笑う。


「あれ、じゃないか!?」

突然声を掛けられた。

振り返れば、数年前まで毎日のように顔を合わせていた人物たちが並んでいる。

「藤真?!」

翔陽高校バスケ部キャプテンの藤真健司と同じく副キャプテンの花形透が並んで立っていた。

「健司お兄ちゃん!透お兄ちゃん!!」

突然隣に居るが変な事を言う。

『健司お兄ちゃん』!?『透お兄ちゃん』!!??

混乱した牧は双方を交互に見る。

「何だよ、どうしたんだよ。こんな所で。ってか、何で牧と一緒に居るんだ?」

「あれ?健司お兄ちゃん牧さんのことを知ってるの?」

首を傾げてそう聞く。

「知ってるよ。牧は海南のバスケ部キャプテンだろ?俺は翔陽のキャプテンやってるし、同じポジションだし。で、は今何処に通ってるんだ?今年から高校だろ?翔陽に来れば良かったのに...」

「私は海南だよ。バスケ部のマネージャーやってるの。そっかー、今年お兄ちゃんと当たるかな?」

「当たるだろう。決勝はリーグ戦だし。は俺を応援してくれるよな?」

「え、でも。私海南バスケ部のマネなんだけど...」

イマイチ把握しきっていないが、とにかく、は翔陽のこの2人と知り合いだということは分かった。

それより気になるのが、先ほどからの藤真の態度。

デレデレしている感じがしてならない。

正直、気持ち悪い...


「清田」

牧が声を掛ける。

「はい」

が返事をして、藤真の口があんぐりと開きっぱなしになった。

何なんだ...?

「牧。今、ちゃんのことを、『清田』って言ったか?」

花形も怪訝そうな顔をしている。

「ああ、清田じゃないか。苗字を知らないのか?」

当然じゃないか、何を驚いているんだ?

そう思って聞き返す。

「だって、それは。『清田』はお前のところのルーキーの名前だろう?」

花形が冷静に聞き返すと

「だから、その双子の妹だろう?知らないのか?」

牧も冷静に答える。

に兄貴は居ない!俺が一番良く知ってる!」

何処か遠くに行っていた意識が戻ってきた藤真が凄い剣幕で捲くし立てる。

流石の牧もその勢いに押されて仰け反り、花形が宥める。

!」

「はい!」

「どういうことだい?兄ちゃん、ちょっと分からなくなったんだけど」

さっきまで牧には捲くし立ててたのに、に対しては相変わらず甘いお兄ちゃんの藤真だ。

「うん。だから、お母さんが再婚するから引っ越したでしょ?」

「そうだったね。...まさか」

藤真の顔色がどんどん青くなっていく。

「そう。清田さんと再婚して私も清田さんになったの」

「何てこったー!」

頭を抱えてその場に蹲る。

はどうしていいか分からずに、花形を見上げる。

その視線を受けた花形も困り顔を返す。

「健司お兄ちゃん...」

藤真の肩にそっと触れる。

、携帯持ってる?」

しゃがんだままを見上げて藤真が問う。

「うん。持ってるよ」

「番号交換しよう」

突然の話題転換。

牧は既に話についていくのを諦めた。

「いいよ」

「何か嫌なことがあったら兄ちゃんを呼べよ。いつでもすぐにのところに行くからな。たとえ、海南だろうと何処だろうと」

「いや、迷惑だ。来ないでくれ...」

思わず牧がお断りするが、藤真はそれを完全無視してとの番号交換を行っている。

「本当に、そんなことになったら。すまん。先に謝っておく」

「謝られても困るんだが...藤真のアレは何だ?」

溜息混じりに牧が花形に問う。

「ああ、アイツは昔からちゃんが可愛くて仕方ないんだ。ちゃんが幼稚園の頃、クラスの男の子に泣かされたことが有るんだ。藤真はそいつを泣かしに行った」

牧は目を瞑る。言葉が無い。

「まあ、良くある話なんだが。その子はちゃんの事が好きだったらしくてな。気付いて欲しくて意地悪をしていたタイプだったらしいんだが、二度とちゃんに近付かなくなったよ」

「しかし、何だってあんなに...」

と楽しそうに話すライバルを見遣る。やはり気味悪い。

「昔、ちゃんは藤真の家の隣に住んでいて。ちゃんが俺らの遊んでいるところによちよちやってきて。そのときから藤真の過保護が始まった。ちゃんはお父さんを亡くしているのを知っているか?」

「いや、清田と双子でないということを今知ったばかりだからな」

「そうか。小学校に上がる前にお父さんを亡くして。そのとき、お母さんが可哀想だからと言って一生懸命泣かないように我慢していたちゃんがいじらしくて、藤真の過保護に拍車がかかってあんなになった。お母さんが再婚されるから引っ越すと聞いたとき、実は一番ショックを受けていたのも藤真だよ」

丁度牧と花形の話が終わったときに番号交換も終わったらしい。

「花形、行くぞ」

藤真が声を掛けてくる。

「え、透お兄ちゃんのも...」

「ああ、花形には俺が教えておくよ。には折り返し連絡を入れるようにさせよう。でも、連絡が来なかったらもう花形は頼らなくてもいいからな。分かったか?」

「ちょっと待て、藤真。ちゃん、電話番号だけでも教えて」

慌てて花形がの番号を控える。この話しぶりだと教えてもらえそうにない。

「一志お兄ちゃんにも会いたかったよ」

「試合会場で会えるぞ。寧ろ、一志居なくてもいいじゃないか」

爽やかな笑顔で藤真がそんなことを言う。

「長谷川にも教えておくから安心していいよ。じゃあな。また電話するから」

「うん。お願いね、透お兄ちゃん」

「牧、今はを一時預けてやる」

指差された牧は目線を外し

「それは光栄なことだ...」

と適当に答えた。

「じゃあなー。またなー」

嵐のようだった、と思いながら遠ざかる翔陽コンビを見た。藤真はまだ手を振っている。もそれを振り返している。


翔陽コンビが見えなくなって、牧は溜息を吐いた。

「あ。ごめんなさい。時間...」

「ああ、それは大丈夫だ。だが、まさか清田があの藤真たちと知り合いだったとはな...」

苦笑しながら感想を述べる。

「健司お兄ちゃんって優しいんですけど。時々困っちゃうことがあるんですよね...」

頬に手を当ててが呟く。

確かに、アレで困らない者は居ないだろう...

「あの、牧さん」

「何だ?」

「えーと。ノブは私と血がつながってないっての知られるのが嫌みたいなんですよ。だから、」

「分かってる。他の者達には内緒なんだろう?」

牧の言葉に、は安堵の笑みを零す。

「しかし、まあ」

そう言って牧は言葉を飲み込む。

清田は藤真に会ったら大変だろうな...

心の中で合掌を送っておいた。


やっと出ました、翔陽!!
但し、藤真が壊れてます...(汗)
藤真と花形と長谷川は幼馴染設定だったりします。
だって、凄く仲良いイメージじゃないですか?
私だけかなぁ??


桜風
07.2.16


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