君が好きだと叫びたい 5





月に一度、憂鬱な日がやってくる。

これはもう逃れられない宿命だが、やはり「逃れたいなー」といつも思っていた。


その日も重い体を悟られないように兄である清田信長と共に登校した。

クラスは別で教室の階も違うため、階段で別れる。

そういえば、昨日高頭監督から朝練が終わってから研究室に来るようにと言われていたことを思い出した。

慌てて階段を上り、研究室の前に到着。

ノックをして「失礼します」と声を掛け、部屋の中に入る。

「おお、来たか。すまないが、これを牧に渡してくれるか」

とプリントを渡された。

フォーメーションやら何やらが書いてあるそれを放課後の練習までに牧に渡しておけと言うことらしい。

「分かりました」

「マネージャー。顔色が悪いが、大丈夫なのか?」

「え。はい。元気です。じゃあ、失礼します」

そう言って研究室を出た。

体調は悪いが、どうしようもないことである。

海南高校のバスケ部マネージャーがそう気軽に休むわけにはいかない。

何とか我慢して過ごせるだろうと踏んでいたのだが、今回はどうも重い類に入る。


午前中を凌ぎ、昼食を摂り終わって3年の教室へ向かう。

牧の教室へ行ったが運悪く不在。

武藤が預かると申し出てくれたが、もう少し探してみると断って階段へと向かう。

丁度下から牧が階段を昇ってくるところだった。

「あ、牧さん!」

「どうした?3年の校舎まで来て」

「監督から預かってきました。これ、目を通しておいてください」

そう言ってプリントを差し出す。

が、

「あれ?」

ふわ、として目の前が真っ白になった。

あー、まずいな。このままだと牧さんにぶつかる...

牧さんに怪我させちゃいけないんだよ。どうしよう...

そんなことを考えている中、「!どうした?しっかりしろ、!!」という声が聞こえた。

いつも体育館で聞く、凄く落ち着いて威厳のある声に似ているなー

そんなことを思った。


目を開けるとそこは天井で、

「気が付いたか」

と溜息交じりの声が聞こえる。

首を巡らせば

「牧、さん...?」

牧の姿があった。

「あの、私は...?」

「貧血だそうだ。まあ、その。大変だな」

貧血の理由まで聞いたのか、牧がコメントし辛そうに話しかける。

「あー、ごめんなさい...あれ?今まだ昼休みですか?」

「いいや。5時間目が終わる頃かな?」

そんなことを言う。

「え、牧さん。授業は!?」

驚いて体を起こそうとして、失敗した。

「無茶をするな。授業は先生公認で休みだ。何処から聞きつけたのかバスケ部が此処に揃ってな。清田が残ると主張したんだが、成績の芳しくない清田が授業を休んだら大変なことになる。で、キャプテンである俺が残ったんだ。清田と違って成績はまあまあだからな」

牧はそう言って小さく笑うが、

「本当に、ご迷惑ばかりお掛けして...」

心底申し訳なさそうな声を出す。

「気にするな。普段俺たちが世話になってるんだ」

そう言って目を細める。

「あの、牧さん。聞いてもいいですか?」

「ああ、どうした?」

「私、階段から落ちたんですよね?」

「正しくは、『落ちそうになった』だがな。丁度俺が下にいたから受け止めておいた」

荷物のような言い方だ。だが、

「じゃあ、もしかして。牧さんが私の名前を呼んだんですか?『』って...」

「ま、まあ。そうだ。すまない」

視線を彷徨わせて牧が答え、頭を下げる。

は首を傾げる。

「何で謝るんですか?」

「いや。呼び捨てはどうかと思わんか?」

「思いませんよ?健司お兄ちゃんなんかは、いつでも何処でも呼び捨てですよ。寧ろ、苗字で呼ばれるほうが緊張します。実はまだ慣れていないので反応できなかったらどうしようって。だから、今度から名前で呼んでもらえると嬉しいんですけど。お願いできますか?」

「それは一向に構わんが...」

多少困惑しているところに、5時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。

1・2分もしないうちに、保健室のドアが開く。

、大丈夫か!!」

入ってきたのは、清田信長。

「ノブ、ごめんね。心配掛けて」

「あ、いや。もう大丈夫なのか?」

「うん、平気。でも、6時間目は体育だから休もうかなって思ってる」

「ああ、そうしとけ。先生には俺が言っとくから。牧さん、すみませんでした」

勢い良く頭を下げる。

「いや。気にするな。は俺たちの大事なマネージャーだからな」

そんなことを言う。

牧のコメントに信長はポカン、と口が開いたままだ。

「何だ?」

「い、いや。何でもないっス。えーと、...

と言って耳元で

「牧さんと何かあったのか?」

と小声で聞いてきた。

「牧さんに聞いてよ」

意地悪な答えだと知りながらそう答えてみた。

の答えに、信長は頭を抱える。

「どうした、清田」

「何でもないス!じゃあ、俺戻ります!」

そう言って脱兎の如く逃げていった。

「何だ?」

「さあ??」

牧の疑問には惚け、そして、

「牧さん。もう大丈夫なので授業に出てください」

と言ってみた。

少し考えた後、牧が言ったのは

「6時間目もを理由に休ませてもらおう。たまにはこういうのも良いだろう?」

という言葉だった。

も微笑み、「そうですね」と同意した。


憂鬱なのです。
取り敢えずお腹が痛くなります。
その腹痛はお腹が冷えて痛いのかそうじゃないのかしょっちゅう悩んでます。
信長はいつでも何処でも賑やかだと思います。


桜風
07.2.19


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