| 学校を出て、携帯を取り出す。 ダイヤルを選択して一瞬躊躇った後、通話ボタンを押した。 何を話したらいいのか分からないし、今自分のやっていることは無神経なことかもしれない。 だが、あの試合を見て何でもない生活は出来ない。 『もしもし』 「あの、透お兄ちゃん?」 『ああ、ちゃん。どうしたんだ?』 電話の向こうの花形は先日会った時と何も変わらない。 「えーと...」 何を言ったらいいのか分からない。言葉が見つからない。 「だと!?」と電話の向こうで別の声がする。 『、兄ちゃんだぞ!今何処に居るんだ?!というか、なんで花形に電話したんだ?』 「え、健司お兄ちゃん?」 『そうだ。まあいい。で、はまだ学校か?』 「ううん。帰るところ。お兄ちゃんたちは?」 『花形と一志と一緒にいたけど、こいつらは帰るらしいよ』 電話の向こうで「おい!」「誰が帰る!」と言っている。 『家にはすぐに帰らなくていいのか?』 「うん。特にそう言われてないし。ノブも別に構わないって言ってたし」 『む...ノブってお前の兄貴になった...』 「そう。海南の清田信長。帰りが遅くなるようだったら迎えに行くって言ってたから多少遅くなってもいいと思うよ」 『じゃあ、これから会えるんだな。よし、じゃあ兄ちゃんたちこれから花形の眼鏡を買いに行くんだけど、一緒に行かないか?』 そんなことを言う。 「あ、そうか。いいよ、何処に居るの?」 場所を確認してそこへ向かう。 一方、藤真たち。 「という訳で、お前ら帰れ」 藤真は当たり前のように言った。 「嫌だ」 と即答の長谷川。 「俺が居なくて誰の眼鏡を選ぶんだ!」 花形が突っ込む。 「花形に用事が出来たって言っておくから安心しろ」 と爽やかに言ってのける。 そんなやりとりをしている中、がやってきた。 「あ、お兄ちゃん!うわ、久しぶりだね一志お兄ちゃん」 前回と会えなかった長谷川とも再会する。 「ああ、花形から聞いてたよ。元気そうで良かった」 話したのは、花形。電話番号を教えてくれたのも花形。 相変わらずの事になったら性格が変わる藤真に長谷川は内心溜息を吐く。 「えっと。透お兄ちゃんの眼鏡。何処で買うの?というか、つけてるね」 「ああ。これは予備だよ、一応ね」 「あ、そうか。接触プレイが多いから予備も持ってるよね」 「まあ、そういうこと」 「急がないなら帰れ、花形。一志も」 まだ言うか! 花形と長谷川は心の中で突っ込んだ。 「ちゃん、お腹減ってない?」 と藤真を完全無視の花形。 「そう、だね。ちょっと減ってる」 「じゃあ、何か食べよう」 と長谷川も話を進める。 蚊帳の外の藤真は「む...」と不服そうだ。 「でも、透お兄ちゃんの眼鏡。お店閉まっちゃうよ」 そういえば、が此処に来た理由はそれだった。 藤真たちがやっと思い出す。 腹ごしらえの前に花形の行きつけの眼鏡店へ行き、藤真が適当に購入するものを選んだ。 花形の意見は一切入っていない。 そして、先ほど話していたとおりにファーストフード店に入る。 「、兄ちゃんのポテトあげよう」 「うん、ありがとう」 の隣をちゃっかりキープした藤真が何かと世話を焼きたがる。 そんな光景を目の前に、花形と長谷川は深い溜息を吐いた。 「、ごめんな」 普通の会話をするように藤真が話す。 「何が?」 今の世話の焼き様かと思ったが、そうではないらしい。 藤真の目がいつになく真剣だ。 何気なく返事をしたが藤真を見て思わず息を飲む。 「兄ちゃん、勝てなくて」 と、少し目を伏せてそう言った。 「そんな...だって、お兄ちゃんたち凄く、凄く頑張ってたよ」 「頑張るだけじゃダメなんだ。勝たないと意味が無いんだ」 何を言って言いか分からず、目の前の2人に視線を向けると2人とも藤真と同じ表情をしている。 「次は、絶対に勝つからな。だから、海南のやつらの前では応援できないかもしれないけど、心の中で兄ちゃんを応援してくれるか?」 『兄ちゃんたち』と言え! 2人は藤真の言葉にそう思う。 「うん。応援してるよ。健司お兄ちゃんたちを。海南と当たった時は、ちょっと無理だけど...」 「ああ、それでもいい。それでも兄ちゃんたちは次は勝つから。約束だ」 そう言って小指を差し出す。 も小指を出して藤真のそれに絡めた。 店を出ると日も沈んであたりは暗くなっていた。 「家に電話するのか?」 「うん。しないとノブが煩そうだから」 一々信長の名前が出る度に顔を引き攣らせている藤真を横目に 「じゃあ、ちゃん。清田が来るまで一緒に居ようか。物騒だし」 と長谷川が提案する。 「ううん。駅前のコンビニで待ってようと思うから大丈夫だよ。ありがとう。お兄ちゃんたちこそ、今日は疲れてるんでしょう?早く帰ってゆっくり休んで」 「は優しいなー」 頭を撫で回す藤真。 やめろ... 半眼になって花形は藤真の手をどかす。 「じゃあ、駅まで送ろう。部活はどうだ?楽しいか?」 「うん、楽しいよ」 「、牧に苛められてないか?!苛められたら兄ちゃんをすぐに呼ぶんだぞ!」 「え、牧さん?苛めないよ、寧ろ凄く優しいよ」 「それは危険だ。下心があるのかも...」と小声で真剣に呟く藤真に長谷川は『バカ』の称号を秘かに送っておいた。 駅前のコンビニの前で3人と別れ、信長に電話をする。 ずっと待っていたようですぐに電話に出た。 駅前のコンビニに居ると話したら、「絶対に動くなよ。いいな、大人しく待ってるんだぞ」と念を押された。 よくよく考えたら藤真と言い、信長と言い自分はかなり子ども扱いされている気がする。 しっかりせねば。 は強くそう思った。 |
意外と壊れた藤真って好きです。
というか、彼なら壊れてても許せる。
牧さんだったら...痛そう(苦笑)
ビジュアルの問題かもしれません...
桜風
07.
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