君が好きだと叫びたい 9





少し重い荷物を持ってが帰宅した。

玄関のドアを開けると信長以外の大きな靴が2つ。

「え、ちょっと。これって...」

は慌てて家の中に入り、リビングのソファに荷物を投げてキッチンへ向かう。

キッチンの食器戸棚にカップは全部あるし、グラスも減っていない。

「もう!」と眉間に皺を寄せてグラスに氷を入れて冷蔵庫の中のオレンジジュースを注ぐ。

一瞬コーヒーがいいかと悩んだが、それは後でも良い。

信長の部屋の前で立ち止まってノックをする。

信長の返事が無い代わりに、ドアに近いところに座っていた神がそれに応えるようにドアを開けた。

「神、さん...」

見上げて呆然とするに神は苦笑した。

神は「見つかってしまった」と笑う。

アレだけ大きな靴なのだから、大きな人、もしかしてバスケ部の誰かかと思っていたが...

寧ろ、何で居るのだろうと考え始める。

「おかえり。友達と遊んできたんでしょう?楽しかった?」

「ただいま、です。あの、聞いても良いですか?」

「うん。信長に勉強を見てくれって頼まれてね。期末テスト、自信が無いって」

そう言いながらが持っていた盆を受けとる。

「丁度喉が渇いてたんだ。ありがとう」

神の声が耳に届き、信長が顔を上げる。

「げ、!?」

「ノブ!何神さんに、って。牧さん!?ちょっと何先輩たちを巻き込んでるのよ!」

「い、いや...」

たじたじになる信長を横目に、神がジュースを配る。

「ああ、すまないな、。ありがとう」

「いえ!こちらこそノブが...って何、この汚い部屋!!」

部屋の中に足を踏み入れかけて、それをやめる。

「汚いって何だよ!これでも綺麗にしたんだぞ!!」

「これで『綺麗』って言わないでよ。掃除。掃除させて」

「き、今日はダメだかんな!」

「じゃあ、明日。明日ノブは私が掃除している間はリビングで勉強すれば良いでしょ!というか、何お客様をこんな汚い部屋に案内してるのよ!それこそ片付いているリビングですれば良いでしょう!?」

がこんなにずけずけ言う姿は学校では見られない。

良いもの見れたなー

と神は楽しんでいるが、牧は

「ま、まあ。、そんなに清田を叱ってやるな。清田なりに頑張ったんだ」

と宥める。

「牧さん、甘いです!アレが出たらどうするんですか」

「『アレ』?」

「そう、『アレ』です。考えただけでもおぞましい...」

『アレ』が何のことか分からず、牧は眉間に皺を寄せる。

何のことか何となく察した神が

「あ、ゴキブリ」

と言う。

「キャーー!健司お兄ちゃーん!!」

と涙目になったは、側に居た神にしがみついた。

ここで藤真の名前が出るのか...

と3人は思った。


きっとあの藤真のことだ。の悲鳴を聞いた途端

「どうした、!兄ちゃんが来たからもう安心だぞ!!」

と家にやってきそうだな...

牧は何となく思った。


「ああ、ごめん。見間違いだったみたい」

にこりと微笑んでの頭を優しく撫でる神。

信長と牧は呆気に取られていた。

ああ、だから綺麗好きなのか...

「ほ、ホントにいませんか?」

「うん。俺の見間違いだったよ。ごめんね、驚かせて」

未だにしがみついたままの自分に気付き、は慌てて神から離れる。

「ごめんなさい、みっともないところを。あ、あの。コーヒー。コーヒー淹れてきます!」

真っ赤になって慌ててキッチンへと向かっていくに神は苦笑した。

「これで藤真さんが来たらビックリですね」

牧の顔を見て笑う。

「ビックリでは済まん気もするが。まあ、清田。掃除はしてやれ。そうしないと、下手したら本当に藤真が来るぞ」

溜息を吐きながら牧が言うと

「が、頑張ります!」

清田は何故か敬礼をしながら答えた。


少ししてドアをノックする音が聞こえた。

予告どおりコーヒーを持ってきたがドアを開ける。

「ああ、ありがとう」

ドア近くの神が再びから盆を受け取る。

「いえ。あの、牧さんと神さんは嫌いなものありますか?」

「嫌いなものって?」

「人参とか。食べ物です」

神と牧は顔を見合す。

「ない、けど」

「俺も無いな」

何だろう、と2人はを見る。

「じゃあ、何でも良いですね。もし良かったら今日は夕飯食べて帰ってください」

「え、何?」

信長も話に入る。

「お母さんたち、今日は外で食べて帰るってさっき電話があったの。だから、牧さんたちも食べて帰れば良いですよ。ご迷惑でなければ」

「迷惑ってことは無いよ。俺たちの方こそ迷惑じゃないの?」

「2人分作るも4人分作るも同じです」

そう言ってガッツポーズをする。

「じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になろう」

牧がそう言うと

「任せてください!」

ビシッと親指を立てて、は去っていった。

「...水腹になりそうだな」

オレンジジュースはまだ残っている。

「ですよね」

コーヒーの盆を持ったまま、神は苦笑しながら牧に同意した。


ヒロインはGが苦手デス。
だから掃除しまくっているというか、掃除に対する意気込みが凄いんですよ。
私はアレと遭遇したら見て見ぬフリをします。
私の中での存在全否定。
それで何とかやり過ごすのです。


桜風
07.3.6


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