恋すてふ 1






来年入学する生徒たちの合格発表がある日も当然バスケ部は部活がある。何と言っても強豪で常勝の海南大附属高校バスケ部だ。

神がいつもの如くランニングをしていると何かにぶつかった衝撃がある。

神は平気だったが、その側には小学生くらいの少女が転がっていた。

いや、違う。

この制服は自分の出身中学のそれだ。

「だ、大丈夫?」

慌てて彼女に手を差し伸べる神。

女の子に怪我をさせてたら大変だ。

「う、ごめんなさい」

腰を抑えて顔を上げる少女は、背も小さいが、顔も少々童顔だ。

そして、神と目が合った途端に真っ赤になる。

「う、あ...」

「大丈夫?怪我は無い?」

彼女は無言で只管首を縦に振る。

「そんなに頭を振ったら...」

驚いて神が止めるが、遅かったらしい。

彼女は青い顔をして立ち上がる。

目が回ったらしく、足元が覚束ない。

「ねえ、本当に大丈夫?この学校には友達と来てるの?一緒に探そうか?」

「い、いいえ!大丈夫です!!」

そう言って彼女は駆け出す。

一度振り返って、

「部活、頑張ってください!!」

そう言ってまた駆けて行った。

神は首を傾げて彼女を見送った。

ふと、さっき彼女が転がっていた場所に何かが落ちているのを見つけた。

拾い上げると、生徒手帳だと分かる。

見るとその表紙に名前がある。



それが彼女の名前らしい。

どこかで聞いたことがある名前だと思ったが咄嗟には思い出せない。

しかし、これが無いと彼女は困るだろう。

意外と抜き打ち検査が多かった学校だ。

今日の部活が終わった後にでも学校に届けよう。遅くなっても宿直の先生にでも預けておけばいいだろう。

そう思い、の生徒手帳を持ってランニングの続きを始めた。



「牧君」

「何だ、か」

「何、別の可愛い女の子の方が良かった?」

と呼ばれた女子生徒はニヤリと笑う。

「別に。で、何だ?」

「バスケ部って、4月はマネージャーも募集するんだよね?」

そんなことを聞く。

「ああ。まあ、毎年半年もしないうちに辞めてしまうが、一応な。居た方が1年も練習に励むことができるし」

牧のその答えにまたしてもニヤリと笑う。

「じゃあ、今年はとびっきりのマネージャーが入るよ。そんじょそこらの女の子とはワケが違うから」

クラスメイトの自信満々な発言に牧は眉間に皺を寄せる。

「まあ、期待はしないでおくけどな」

「あら、残念。体は小さいけど、根性と持久力はあるの。ついでに気配りと直向さも備えているわ。じゃあ、4月からヨロシクね」

そう言って手をヒラヒラと振って彼女は部活動をすべく去っていった。

残された牧はひとつ溜息を吐く。いつも唐突で自分の用事が済んだら居なくなる。本当に気分屋だと思う。

牧は肩を竦めて自分も部活動をするべく体育館へ向かった。









桜風
07.5.2


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