恋すてふ 3






さんの家ってどっち?」

が職員室を辞して靴箱に着いたところに神がいた。

「じ、神先輩!?」

「うん、俺。で、どっち?」

「えっと、3丁目です」

「あ、意外と近い。というか、帰り道だね。一緒に帰ろうよ」

そんなことを言われる。

「え、神先輩とですか!?」

「うん。イヤ?あ、例の生徒手帳の男の子に見られたら誤解されちゃうかもしれないかな?」

それを聞いては一生懸命首を横に振る。

「いや、だから。そんなに首を振ったら...」

神が止めようとしたが、それより早くが尻餅をつく。

その姿に、思わず神は笑ってしまった。

「ははは!大丈夫?」

そう言いながら手を差し伸べる。

「ごめんなさい」

「ううん、いいよ。えーと。さっきの様子だと大丈夫ってことだよね?」

「はい」

「じゃあ、送ってあげるよ。もうすぐ高校でも後輩になるんだしね」

そう言って微笑んだ。


「もうだいぶ日が長くなってきたね」

自転車を押しながら神が声を掛ける。

「はい」

「何でウチを受けたの?しかも1本で」

「行きたい学校が海南大附属しかなかったので」

はっきりとそう答えた。

最初とかさっきまでの印象だと、このはオドオドした印象を受けていたのだが、そうではない部分も持っているということだ。

「何でウチに来たかったの?」

そんなに更に好奇心が湧く。

「え、あの...秘密です!」

突然さっきまでのオドオドしたに戻った。

「ふーん」と言って神はその話を止めた。

言いたくないものを無理に聞くほど悪趣味でもない。

そして話題を中学の時の恩師の話に切り替える。

お互いの共通の話題だし、話しやすいと思ったからだ。


は基本的には受身の性質だと思う。

だが、こちらが話を振ればきちんと答えるし頭の回転も速い。

「そういえば、神先輩のおうちはどこですか?」

話が切れたときにから質問をする。

「俺?5丁目のスーパーがあるだろう?」

「はい」

「あの斜向かいの田中さんの娘さんが通ってるスイミングスクールの右隣にある八百屋さんの奥さんの通ってるカルチャースクールの先生の家の向かいの鈴木さんの親戚の吉田さんの家の3軒隣の向かいが俺の家」

とワンブレスで言ってみる。

「あの。田中さんってお知り合いの方なんですか?」

とても真面目な顔をして聞いてきた。

神は笑いを堪えながら

「うん、だから...」

と面白可笑しく説明しようとするが、

「あれ?!」

という声に遮られてしまった。

「あ。先輩。ん?もしかして」

「私の姉です」

道理で聞いた名前だと思った。彼女の名前はだ。

「そういえば、妹さんが居るとかどうとか聞いたことがあるな。そうか、ちゃんが妹さんか」

ちゃん!?」

突然名前で呼ばれたは声が裏返った。

「え、名前で呼ばれるのイヤだった?」

顔を覗きこんで神が問う。

と言っても、体の小さいの顔を覗き込もうとすれば、長身の神はまず屈まないといけない。

流石にそれはしないものの腰を折ってなるべくの目線にあわせる。

ビックリしたは一生懸命首を横に振る。

そして、先ほどの靴箱のところと同じように倒れそうになったが、流石に先が読めていた神に支えられる。

「だから、あんまり首を振らないほうがいいよ」

笑いを堪えながらそうアドバイスする。

「気をつけます」

「うん。そうした方がいい」

笑顔で神が賛成した。

「よっす!どうしたの、神君。ウチの妹を口説いてんの?」

「まさか!先輩の妹さんを口説くなんて、俺には恐ろしくて出来ませんよ!」

爽やかな笑顔でそう言った。

「何、じゃあ。ウチのが可愛くないって言うの!?」

「そんなこと言ってませんよ。可愛いじゃないですか。ちょっと今日ひょんなことから知り合って、中学校に用事があってそこでも会ったから帰り道だし一緒に帰ろうっていうことで、此処まで一緒だったんですよ」

神のその言葉を聞いて彼女は「ふーん」と頷いた。

「ま、いいわ。ご苦労。神君はもう帰っていいわよ。一緒帰ろう、

「うん。神先輩、失礼します。ありがとうございました」

「うん、気をつけて帰りなよ」

「はい」と返事をした後、はもう一度頭を下げた。

姉妹が帰っていく姿を少し見送って神も自転車に跨る。

一度彼女たちが帰って行った方を振り返ると、振り返ったと目が合った。

神は笑顔で手を振りそのままペダルを踏む。


「そっか。先輩の妹さんか」

呟きながら自宅へと向かった。









桜風
07.5.8


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