恋すてふ 4





高校の入学式に出席していた神はの姿を探す。

が、背が低いは座っていても小さい。

新入生に埋もれて見えない状態だ。

「ま、仕方ないか」

そう呟いて神は椅子の背もたれに体重を掛ける。

これからお偉いさんの長い挨拶の連続だ。

寝る気満々で臨んだ入学式では、その意気込みどおり、思う存分目と頭を休めた。


放課後、部活に出るべく体育館へと向かった。

そして、目の前には小さな女の子がいることに気がつく。

神は目を細めて彼女の様子を見ていた。

手には校内の地図が握られている。

ジャージを着ているということは、運動部に用事があるのかもしれない。

が立ち止まる。

地図を回し始めた。迷ったらしい。

ちゃん」

「ひゃっ!」と神の声に驚いて声を上げる。

「ああ、ごめん。驚かしちゃったね」

「神先輩。えーと、こんにちは」

「うん、こんにちは。ちゃんはもう入部を決めている部活あるの?」

そう聞かれた。

「はい!バスケ部です」

「ああ、女バス...バスケット?!」

失礼だと思いつつもをまじまじと見る。

どう考えてもバスケに似つかわしく無い体系だ。

自分との身長差から考えて、は150センチくらい。失礼ながら足が速そうにも見えないし、これと言ってバスケに関連しそうなあれこれが得意そうにも見えない。

「違います。男子のバスケ部です」

「え、男バス?!」

益々驚く。

「はい。お姉ちゃんから聞いたんです。マネージャーとしての入部を受け入れているって。キャプテンの牧先輩に聞いたから間違いないって。え、間違ってますか?」

不安そうな表情でが問う。

「え、いや。うん。毎年募集してるよ。でも、凄くキツイって皆辞めていくらしいよ。実際、去年俺が入ったときは3人くらい入ってたけど夏休みが終わったら誰もいなくなってたし」

「あ、じゃあ。募集してるんですね」

そう言って胸を撫で下ろす。

「え、でも。キツイよ」

「はい。ちゃんとお話聞いてますよ?」

神が何で確認するか分からない、といった表情でが見上げている。

「え。ホンキだね?」

「はい」

「...じゃあ、一緒に行こうか」

の迷いの無い目を見て神も折れた。

ホントに大丈夫かな??

そう思いながらバスケ部体育館へと向かう。


体育館に着くと、既に部員はほぼ集まっており、そして、新入生も沢山居る。

毎年見る風景らしいが、この新入生はどうせ殆ど残らない。

「おい、神。その子は?中学生が迷ったのか?」

「武藤さん。この子、先輩の妹さんですよ」

神の言葉に武藤の顔が引き攣る。

「悪かった。今のは聞き流してくれ」

普段言われなれている言葉だから別に何とも思っていない。

寧ろ小学生と言われなかっただけマシなのだが、取り敢えず「はい」と返事をしておいた。

2・3年が全員揃い、監督もやって来た。

全国の有名校のエースが自己紹介をする。

その中で賑やかだったのが、清田信長というルーキー。

まあ、毎年必ず新入生に1人はいるタイプだ。

そして、マネージャー志望の女子の自己紹介が始まり、最後のひとりで皆の視線が下に向く。

です。宜しくお願いします」

前に会ったときも思っていたが、は所作に無駄がない。品のある印象を受ける。何か習い事をしていたのかもしれない。

正直、雰囲気だけで言ったらマネージャータイプとは思えない。

が、何もしないで追い出すことはしない。

マネージャーといえど、どうせついていけなくなったら辞めていくのだから。

...ああ、なるほどな」

牧がそう呟く。

「え、牧さん。彼女を知ってるんですか?」

「ちょっと前にに『体は小さいけど、根性と持久力と気配りと直向さを備えているとびっきりのマネージャーに入るからヨロシク』と言われていたんだ。そうか。彼女のことなんだな」

牧の言葉を聞いて神はを見る。

好奇の視線を注がれているのに全く物怖じせずに笑顔を浮かべている。

「とびっきりのマネージャーか」

そう呟いた神の口元は少しだけ笑みを浮かべていた。









桜風
07.5.10


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