恋すてふ 5






部活が本格的に始まって1ヶ月が経過しようとしていた。

既に新入部員の中には辞めていくものも居り、マネージャーとて例外ではない。

部員が多い分、マネージャーの仕事だって多い。

結局、マネージャーはひとりとなってしまった。

それでもは当たり前にそれらをこなしていく。少し時間がかかっても投げないし、必要以上に周囲を頼らない。

先日はさすがに、脚立を持って歩いていた彼女を見かねた新入部員の清田が手を貸していた。

確かにあれでは、脚立が歩いている感じがしたし、バランスを崩したら脚立の下敷きになりそうだった。

小さいと言ってを馬鹿にしていた新入部員たちも居たが、そういう者は早々に辞めていった。

まだ先は分からないけど、も残った部員のひとりだ。

そして、姉が言っていたとおり、よく気がつくし、直向だ。

そんなに部員たちも心を許しているようだ。

「いいマネージャーが入りましたね」

神が牧に言う。

「ん?まあ、が手放しで推薦していたんだ。悪いはずがないだろうな」

牧もそう言ってフッと笑いながらの様子を見ていた。



ある日、生徒会の招集で部長会議が開催された。

これは毎年恒例のことで、この会議で予算の配分が決まる。



教室を出ようとしたクラスメイトを呼び止めた。

「ん?ああ、牧君か」

「何だ、カッコイイ男子の誰かの方が良かったか?」

以前言われたことのお返しに似たようなことを言ってみると

「そりゃそうでしょう?で、何?」

酷いことを言われた気がするのは何故だろう...?

軽く落ち込みながらもそんな素振りを見せずに彼女と並んで歩く。

「お前の妹、凄く助かってるぞ」

「そりゃそうよ」

「でも、何でバスケ部なんだ?別に、文系。そう、と同じく華道部とかそういう選択肢もあったんじゃないか?」
聞いてみた。

「んー。まあ、あの子、バスケ好きだから」

そう言って困ったように笑う。

「そう、みたいだな。部活中のマネージャーの表情を見たら何となく分かる気がする」

「あの子、中学のときバスケ部だったの」

「は!?」

失礼ながら嘘だと思う。

「ホント。中学に上がっても全然背が伸びないのに、ずーっと3年間バスケを続けたわ。同級生や後輩がコートに立つのに、あの子はベンチにも入れなかった。でも、3年間ずっと続けて卒業した。
あの子ね、バスケ全然得意じゃないの。自分の体に比べてボールが大きいからドリブルも難しいらしいし、背が低いから他の人よりボールを投げれないとシュートをしたってリングにも掠らない。ずっと練習してたけど、でも、あの子結局どっちもそこまでの成果は見られなかったのよね。
でもね、一番難しいことができたの」

「難しいこと?」

牧が聞き返す。

視線だけ牧に向けてが口を開く。

「『続ける』ということよ。後輩に抜かれていったわ。背も伸びる気配が全然無い。それでも続けたの。カッコイイと思わない?あたしは思う」

「そう、だな。しかし、姉妹だというのに全然似て無いな」

小さく笑う。

「何が?」

と、マネージャー。背の高さが随分違うだろう?」

「ああ。ウチはお父さんが凄く背が高くて、お母さんがもの凄く背が低いの。それが顕著に現れただけよ」

そう言って笑う。

は、バスケしなかったのか?」

「しないよ」

「勿体ないな、その身長。170くらいあるんじゃないか?」

「ダメダメ。あたし、運動はからっきしダメだもん。確かに背はそれくらいあるけどさ」

そう言われて思い出す。

去年も一昨年も運動会では凄いことになっていた。

「そうだったな」

「でも、こっちは得意よ。さーて。今年も部費増やしてもらおうかしらねー。あ、男バスの取り分が少なくなっても文句を言わないでねー」

そう言ってわざとらしくホホホと笑いながら会議室のドアを開ける。

「残念だったな。ウチは毎年全国に出場しているから部費が削られることはまず無いだろう。増えることはあってもな」

牧も不敵に笑って返す。

それを見たは一層笑顔を浮かべて手をヒラヒラと振って自分の割り当てられている席へと向かった。









桜風
07.5.11


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