| 校門を抜けて通学路に出る。 信号待ちで自転車を停めたとき、が聞いた。 「神先輩は、何でセンターからシューティングガードになったんですか?」 の言葉に神が振り向く。 「あ、ごめんなさい...」 聞いてはいけないことかと思って反射で謝る。 信号が青になり、再び神がペダルを踏んで自転車を走らせる。 「いや。いいんだよ。でも、何で俺がセンターだったって知ってるの?」 「神先輩は知らないと思うんですけど、私もバスケ部だったんです」 「え!?」 思わずブレーキを握った。 急ブレーキにより、の顔は神の背中にぶつかる。 鼻が痛い... 「ご、ごめん。大丈夫?」 「はい、大丈夫です」 鼻を押さえてが答える。 の返事を聞いて神はゆっくり自転車を走らせる。 「へー、そうなんだ。いつまで続けたの?」 「皆と一緒に引退しました」 「え!3年間続けたの!?」 「はい。全然上手になりませんでしたけど」 そう言って笑う。 「お姉ちゃんも友達も、顧問の先生も。皆辞めたらどうかって言ってくれました。でも、辞めた後で急激に背が伸びたり、上手くなったりしたらイヤじゃないですか。そういう後悔はしたくなかったんですよね。だから、最後まで続けました。結局、最後までベンチにも入れませんでしたけどね」 しかし、自分たちの出身校はバスケの強豪の部類に入る。練習もきついし、レギュラー争いも熾烈だったはずだ。 レギュラーにも、ベンチにも入れなかったらしいが、それでも3年間続けてきたことに驚く。 選手である限りはレギュラー、せめてベンチへの希望が持てないと辞めてしまうのが多くの人間だと思う。 それなのに、は最後まで続けて、卒業した。 「部活を引退して、さて、進学は何処にしようかなーって思ってたらお姉ちゃんが海南大附属を勧めたんです。 『バスケ部のマネージャーになっちゃいなよ。ウチのバスケ部は常勝らしいし、キツくてマネージャーすら辞めてしまうくらい大変な部らしいけど、でも、なら大丈夫だって』って。そっかなーってことで海南大附属を受けたんです」 「ああ、それがこの間言ってた理由?」 の入学が決まった日に尋ねて秘密にされた理由なのかと聞いてみる。 「ええ。まあ、他にもありますけど」 「それは、秘密なんだ?」 の口ぶりからそんな感じがする。 「はい。でも、卒業されるまでには分かるかもしれませんね」 そう言ってがクスクス笑う。 「誰の卒業?ちゃん?」 「いいえ、神先輩の卒業です」 「分からないなー」と言いながら首を傾げた。 しかし、気を取り直す。いつか分かるみたいだから気長に待とう。 「それにしたってウチ1本ってのは...」 神が先ほどの話を続ける。 「先生にも無謀だって言われましたけど、でも別に行きたくない学校を受けても仕方ないので。友達の誰も海南大を受ける子いなかったんですけど、勝負に出ちゃいました」 そう言ってまた笑う。 「そっかー。ちゃんは凄いね...俺は、最初は中学のときのようにセンターでさせてもらってたんだけど、高頭監督にセンターは到底無理だって言われたんだ。まあ、牧さんや高砂さんに練習で吹っ飛ばされてたからね。 それで、引き下がるなんて考えられなかった。当たり負けをするなら、当たらなくていいポジションを、って思った。外からシュートを打って、それが入れば当たることが少ないだろう?足もそんなに速いほうじゃないしね。だから、シュート練習を始めてシューティングガードになったんだよ」 「やっぱり神先輩は凄いですね。尊敬しちゃいます」 がそう言う。 「そうかな?最後まで諦めずに続けたちゃんも相当凄いと思うけど...」 神の言葉に「ありがとうございます」と嬉しそうな声でが声を返した。 |
桜風
07.5.18
ブラウザ獏でお戻りください