| ボールが跳ねる音が2つ。 「ナイシュッ!」 ガラガラとドアが開いて声が体育館に響く。 2つのボールの音はピタリとやんだ。 「お姉ちゃん!?」 入ってきたのはだった。 文化祭で、華道部がバスケ部専用の体育館を使用している。 面積としては体育館の半分。 流石にこの海南大附属高校のバスケ部の練習を全く邪魔することは出来ない。 なので、華道部は体育館の半分だけ使わせてもらっている。 体育館の真ん中は一応ネットで仕切っており、展示している机もなるべく真ん中に寄せないようなレイアウトにしている。 そして、本日。 文化祭1日目でも放課後と呼ばれる時間は勿論バスケ部の練習はあり、練習がなくても毎日シューティング練習をしている神が遅くまで残って練習をしていたのだ。 そして、時々。本当に偶にだが、神の恋人でバスケ部マネージャーのもシューティング練習をする。 以前、神にフォームを直してもらったら意外とシュートが入るようになり、それが楽しいのだ。 今日も、マネージャーの仕事を終えて神がシューティング練習をしている反対のゴールに向かってシュートをしていた。 「、凄いじゃない。入ってるよ」 「夏に神先輩に教えてもらったから」 何だ、神のお陰か。 全くもって面白くない。 その心が見事に表情に表れているに肩を竦めて神は練習を再開した。 「神くんって毎日練習してんだって?居残り」 「そうですよ」と言いながらシュート。綺麗にリングの中に吸い込まれる。 「ふーん...どれくらいやるの?」 「500本です」 「500!?」 流石のも驚きの声を上げた。 「練習、皆と同じだけやってるんでしょ?」 「そうですよ」 またしてもボールは赤いリングの中に綺麗に吸い込まれていく。 「どんだけMだ」 「お姉ちゃん!」 姉の失礼な発言に声を上げたのは妹のだ。 は肩を竦めて「ごめんなさい」と謝った。 「神先輩、ごめんなさい」とも謝る。 「はは、大丈夫。先輩の発言を一々気にしていたら身が持たないから」 爽やかにそういう神には「チッ」と舌打ちをする。 姉が体育館に来たので、彼女の相手をしようとはドアに向かっていく。 「お姉ちゃん、何でここに?」 「あれ、一応ね。萎んだ花とかあったら取っておきたいし。見た目が汚くなるのはのはイヤだからねー」 そう言いながら昨晩生けた自分の大作の前に足を向けた。 「お姉ちゃん、家ではお花生けないのにね」 「家だったらもっと厳しいでしょ?楽しくないから、イヤ」 そういうには笑う。 「うん、私このお花好き」 「あたしの最後の作品だからね」 そう言って笑うにつられても笑う。 神は視界の端に映る本当に仲がいいよな、と感心しながら少しペースを上げてシューティング練習を続けた。 あまり遅いとが文句を言いそうだ。 500本の練習が終わり、コートに散らかっているボールを回収する。 「終わった?」 声を掛けてきたのはだ。 自分の作品を確認して直した後も、体育館に居た。 「はい」と神が返すと「じゃあ、これ」と言って何かを投げてきた。 神がそれを受け取ると「おなか空いたでしょう?」と言う。 見るとコーンポタージュだ。 粒入りだから、最後の粒が口に入らずにちょっとイライラする飲み物であるが、おなか空いているとちょっとこういうのは嬉しい。 「神先輩、休憩してください」 そう言ったのは、だ。 彼女はもうジャージではなく制服に着替えている。 「お姉ちゃん、籠のトコにいて」 そう言いながら遠くい散らかったボールに向かって駆けていく。 彼女たちの厚意に甘えようと思ってプルトップを空けた。 意外と温かい。 いつ買ってきたのだろう。 「がね、そろそろ500本だろうって言ったから買って来た」 何も聞いていないにがそう返す。 しかし、か。 「なるほど。頂きます」 そう言って一口飲む。 外は熱いのに、中はぬるい。 こういったものにはありがちの温度差だ。 目の前では姉妹が仲良くボールの片づけを進めている。 ふと、振り返っての作品を見た。 昨日、それが仕上がるまで神は付き合い、結局自転車の後ろに乗せてを家まで送り届けたのだ。 いつもで慣れている神は 「あー、重かった...」 と少し厭味も込めて言ってみたが 「モヤシには、ね。ごめんなさいね、辛い思いさせて」 と返されてしまった。 「そういえば、先輩のクラスは何をしてるんですか?」 文化祭は本日からだが、クラスに依っては本日準備を進めて2日目に何かを催すというところもある。 3年が大抵そういうスケジュールを組む。 因みに、模擬店など食品を扱えるのは2年だ。食品を扱えるクラス数は限られているので、2年が優先され、1年は大抵展示というのがこの学校の文化祭の傾向である。 さらに、3年は出展や出品、模擬店などは時間が掛かるため、教室を開放して『休憩所』としたり、推薦が決まっている生徒が多く居るクラスは何かしらの企画を行ったりする。 「何、牧くんは何も言ってないの?お前らも見に来いよ、とか」 笑いながらが言う。 と神は顔を見合わせ同じタイミングで首を傾げた。 「男子限定、ミスコン」 ニッと笑いながらがそう言った。 暫く沈黙が降りる。 「え、何ですか?ミスコン?でも、男子限定??」 「そーよ!ウチと両隣のクラスとで3組合同のイベントなんだけどね。一応、誰も出なかったらもの凄く寂しいから、クラスで代表を出そうねーって」 「...お姉ちゃん。もの凄く聞いちゃいけない気がするんだけど。まさか、牧先輩がエントリーってことは...」 恐る恐ると言った感じにが言う。 いくらなんでも... 「あー、何で分かったの?牧くんがエントリーって面白くなりそうじゃない?」 いや、ちょっと...! 本気でこの人を怖いと思った。 「も、神くんも遊びにおいでよ。あ、神くんはエントリーしてみる?」 「だめ!」 反対したのは意外にもだった。 目を丸くして神とがを見下ろす。 「ちゃん...?」 「ダメなの...」 口を尖らせ、駄々っ子のように呟いた。 「あー、もう。冗談だって。笑いは牧くんだけでちゃんと取れるから。神くんを全校生徒の笑いものにはしないから」 いや、牧さんも外してほしい... そんな事を思いながら神はそっと溜息をつきながら未だに不満顔のを見下ろした。 今日、神はクラスの模擬店の当番に当たっていたから一緒に回れなかったが、明日は一緒に回ろうと約束をしている。 キャプテンのミスコンは出来れば見たくないから外すとして、明日はどう回ろうか。 今この場でその話を始めたらに邪魔されそうだから、明日学校に来て話そう。 今日は帰ってパンフレットを見て研究をしておこう。 そう思いながら神は缶の底に粒が沈殿しているコーンスープを煽った。 |
桜風
08.11.12
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