| 目の前の文字通り山積みになっているものを眺めながらは溜息を吐いた。 陵南高校の男子バスケット部といえば結構有名だ。 全国からこの学校のバスケ部に入りたくて生徒がやってくることだって珍しくない。 だから、部員が多いのは分かっていた。予想済みだ。 でも... はぁ、と溜息と吐くと肩をトントンと叩かれた。 「はい」と振り返るとほっぺたに指が刺さって少々痛い。 「かわいいねー、ちゃんは」 ニコニコと笑顔を浮かべているの当校男子バスケット部のエース、仙道彰だ。 「仙道さん...」 溜息混じりに窘めるように仙道の名を呼ぶ。 「何?」 やはりニコニコと笑顔を浮かべたまま仙道は返事をする。 「練習は?」 「ああー、うん」 やっと表情が笑顔から別のものに変わる。少々目が泳ぎ始めた。 しかし表情が少し変わっても彼は当分ここに居るのだろう。このバスケ部のマネージャーとして入部してからそういうことは多々あったから慣れたけど、気が気ではないのも確かだ。 何せ、時々彼の同級生で同じくバスケ部所属の越野という先輩が気苦労のためか、胃の辺りを押さえている姿を目にするのだ。 間違いなくその原因は今目の前でニコニコしているノッポのせいに違いない。 「越野さんが気の毒なんですけど...」 「えー!俺は体育館に戻ったら魚住さんとか監督に怒鳴られるんだよ?気の毒じゃないの?!」 それは、自分のためだし、自分のせいだろう... そんなことを思いながらもは口にせずににこりと微笑んで、 「仙道さん、体育館の入り口は向こうですよ?」 と体育館の扉のある方角を指差した。 仙道は一度その方角を振り返ってもう一度を見る。 は既に自分の仕事を始めていた。ここで手を止めていたらそのまま仙道が居着いてしまいそうだ。 「仕方ないなー。可愛いちゃんがそこまで言うんだったら...」 自分が言わなくても練習はして欲しい... そんなことを思いながら遠ざかっていく仙道の背中を見ていると彼は突然くるりと振り返って投げキッスをしてきた。 とりあえず、は避ける素振りを見せてそのまま仕事を再開した。 腕時計を見ては体育館に向かう。そろそろ休憩だ。 休憩に入るとまた別の仕事がある。 マネージャーというものについては、初めてではない。 中学の頃もバスケ部のマネージャーをしていた。初めてマネージャーをしたのは中学に入って初めての夏休みだった。 幼馴染がバスケ部で、その練習試合を見に行くとマネージャーが忙しそうにしていた。幼馴染の話では2〜3人くらい居たと思っていたが、自分の目の前には1人しか居ない。 「何か手伝えることがありますか?」 そう聞くと1学年上の先輩であるバスケ部マネージャーがにこりと微笑んで、「助かるわ」と言ったのだ。 そのままその日のマネージャーの仕事を手伝い、そして自分がその部に所属している部員の幼馴染ということもあってそのまま勧誘されてマネージャーに収まった。 別に習い事をしているわけでもないし、帰宅部という面白みに欠ける放課後生活を送っていたので自分としても全く困らない状況だった。 その先輩にマネージャーのイロハを教えてもらった。 自分の師匠はその人だと言い切れるくらいお世話になった。 先輩が中学を卒業するとき 「も、うちに来ればいいのに」 そう言ってくれたのが嬉しかった。 嬉しかったが、現在自分が通っている高校は彼女が通っている学校ではない。 家から電車等の公共交通機関を使って1時間。 これは高校通学としては遠いのか近いのか分からないが、少なくとも、自転車で数十分の距離にある公立高校よりは遠いのは明白だ。 「何でこうなっちゃったんだろう...」 そそっかしい自分が悪いのか。 はたまた、勉強嫌いのクセに受験をして近くの公立高校にいくことを選んだ幼馴染が悪いのか... とりあえず、理不尽なのは百も承知で幼馴染が悪いという方に一票入れている。 「しかも、何で受かっちゃうのよ...」 それが一番腹立たしいことだった。 |
桜風
10.2.17
ブラウザバックでお戻りください