What's love? 2





やっと今日の仕事が終わった、と時計を見て溜息が漏れる。

これからまた1時間掛けて家に帰るのだ。

中学のときは学校まで徒歩で20分と比較的近かったから余計にこのギャップが辛い。

女子更衣室で制服に着替えて鍵を宿直室へと持っていく。

ちゃん」

足を止めて振り返ると仙道が立っていた。

「居残り練習ですか?」

とりあえず聞いてみた。

仙道は相変わらずニコニコしている。

「今終わったの?」

「はい」と頷きながらまた足を進める。

「いつもこれくらい?」

「今日は、少し遅めですね」

そういえば、と今思い出す。

「仙道さん、彼女さんが待ってるんじゃないんですか?」

今日も体育館のギャラリーの中に仙道の彼女の姿を見た気がした。

何故が仙道の彼女のことを知っているかと言うと、同級生で大阪出身の相田彦一が何故か知っていてしかも教えてくれたのだ。

さすが、学校で人気がある仙道の彼女だと納得したのは数週間前。

「あ、うん。さっき別れた」

さわやかにそう言ってのけた仙道には文字通り開いた口が塞がらない。

「間抜けな顔になってるよー」と仙道に指摘されて口を閉じる。

「何でそんなにさわやかに言うんですか?」

「んー、『慣れ』かな?」

やはり笑顔の仙道には顔を顰める。

「ていうか、何でちゃんは俺の彼女のこと知ってるの?」

「相田君から聞いたので」

が答えると「何で彦一が知ってるんだろう」と仙道が呟く。

「まあ、いいや。で、ちゃんは今から帰るんだよね?歩き?」

「駅までは。後は電車に乗って、また駅から歩きです」

「電車通学なんだ?じゃあ、家は遠いの??」

「電車で大体1時間ですね。歩く時間合わせたら1時間半くらいはかかるかな?」

そんなことを話していると宿直室の前に着いた。

「じゃあ、仙道さん。お疲れ様でした」

そう言って挨拶を済ませると「駅まで送るよ」と苦笑しながら仙道は肩を竦めた。

は小さく会釈して「ありがとうございます」と言って宿直室に入っていった。


すぐに部屋を出ると、本当に仙道が待っていた。

「何でそんなに意外そうな表情かなー」

眉の形を八の字にして仙道は呟く。

「ああ、すみません」

何となく、仙道の言葉って話半分どころか3割くらいで聞く癖がついてしまったからだなんて本人には言えない。

「家が遠いのに、何で陵南選んだの?どうしてもこの学校のバスケ部のマネージャーになりたかった、って言うわけじゃないんでしょう?」

駅に向かう道すがら仙道が聞いてきた。

「まあ、手違いといいますか...」

「受験校、間違えたの...?」

まさか、そんな勘違いなんてことはないだろうなーと思いつつも恐る恐る仙道が問う。

「んー、そんなところですかね。なんと言いますか、予定外?」

本人が言いにくそうにしているため、これ以上は聞くまいと思い、仙道は別の話題を探した。

そして、浮かんできたのは

ちゃん。俺と付き合ってみない?」

という言葉だった。

「絶対イヤです」

間を置くことなく、それこそ、反射と言っても過言ではないスピードでの返事に仙道は思わず目を丸くした。

「うわ、最短記録だ」

「それは、どうも」

「参考までに、何で?」

面白いなーと思いながら仙道が問う。

「言葉に真実味が全く見えないからですかね?気持ちのこもっていない言葉なら、こちらが気持ちをこめる必要はないのではないでしょうかー、と。気分を害されてしまったのでしたらごめんなさい」

ぺこりと頭を下げるを益々面白いものを見る目で仙道が見つめる。

「いや、うん。今のは本当に冗談で言ったんだけどね。からかう気持ち100%で」

なんて奴だ、とは仙道を見上げるがその仙道の表情はしたから見上げると街灯の逆光でよく見えない。

「んー、やっぱりちゃんは面白くていいな」

語尾に音符マークが着いているのではないかと思うくらい弾んだ口調で仙道が呟く。

面白いと思ってもらいたくて言葉を返しているわけじゃないのになぁ...

まあ、気分を害されるよりはマシか、とも仙道のその言葉には反応せず、少し仙道を置いていくくらいの歩調で駅へと向かった。









桜風
10.2.24


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