| 「おばちゃんのカレー、やっぱり最高!」 そう言いながらは片付けを請け負った。 「あら、ホント?楓ったら何も言ってくれないから」 「えー!ちょっと、美味しいくらい言いなさいよ」 上半身を捻って後ろでデザートの果物を食べている流川に言う。 「...旨かった」 「はいはい、お粗末さまでした」 微笑ましい光景に頬を緩めながら片づけを続ける。 「でも、おばちゃん。正直声を掛けてくれて助かりました」 「声を掛けたのはオレ」 何故かそこで主張する幼馴染を黙殺して目の前に居る流川の母に顔を向けたまま「ありがとうございます」と続けた。 「いいえー。夕方にね、うちに電話があったのよ。『ご飯作れなかったから、に何かたべさせてー』って」 「うわ、ごめんなさい。母子揃って図々しくて」 「ホントにな」 またなんか話に入ってきた。 「いいのよ。ほら、ウチだって昔からちゃんのところにお世話になってるし、最近だと愚息が受験勉強見てもらったし。あんな奇跡はちゃんが勉強を見てくれたから起きたのよ?」 そう言って振り返ると、今度は聞こえないフリをしている。 肩を竦めてと苦笑しあった。 「学校どう?楽し??」 「まあ、それなりに。やっぱり通学にかかる時間がもったいないですよね」 2時間もあればもっと家での自由な時間が確保できるだろうに... そう思いながら電車に揺られている。 一応、出来る宿題は電車の中で済ませたりもしているが、それでもやはり正直時間が足りない。 「おばちゃんもね、ちゃんが楓と同じ学校に通ってくれたら少し安心だったんだけどね。勉強面が特に」 そう言って半眼になって再び息子を見た。 もう何らかのテストがあったのだろうなー、とも身に覚えのある学校のカリキュラムを思い浮かべる。 「まあ、学校で教えなきゃいけない内容は公立も私立も一緒だから」 そう言って立ち上がる。 宿題がまだ済んでいないから長居はできない。 楽しいのになー... 「あら、帰るの?」 「宿題が...今日はごちそうさまでした」 そう言うと 「あ、そうよね。って、楓。アンタ宿題は?」 流川の母が振り返ると既に楓の姿はそこにはなかった。 勘が良い。 「ったく、あの子は...」 溜息を吐きながら彼女は困ったように顔を顰めた。 家に帰るとやはりガランとしている。 流川の父親は単身赴任で地方に出ているらしい。数年ごとに違う地方。 何年前かはいつ帰ってきても小麦色だった。別のときは「神奈川はあったかいなー」と真冬に言っていた。どこに居るのか流川に聞いても「さあ?」と答える。興味がないようだ。 そして、母親は看護師の仕事をしているから夜遅いときとか、夜中に出て行くときとか色々と変則的だ。 小さいときはの母親もここまで忙しくなかったこともあって今日とは逆に流川がの家で食事を済ませることもあったし、そのまま泊まっていくこともあった。 そのときはこの家もかなり賑やかだった。 懐かしいなー、と思いはするが、別に今の状況に不満があるわけではないからとりあえず今は宿題を済ませてしまうのが先決だ。 数学の担当の先生は宿題を容赦なく出すくせに、忘れると物凄く怒る。じゃあ、もう少し手加減してくれたら忘れる人が減るのではないかと思うのに。 それに、バスケ部を目の敵にしているのだ。田岡監督と何かあったのかと聞きたいくらいに。 まあ、一方的にライバル視をしているのだろうけど。 何せ彼はサッカー部の顧問で、そこそこ強いらしい。ただ、バスケ部の方が脚光を浴びるからそれが面白くないのではないかと言う憶測が飛び交っている。 たぶん、そうなんだろう。 バスケ部に所属しているものにとってみたら非常に迷惑な話である。 |
桜風
10.3.10
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