| 「練習試合、ですか?」 先輩に呼ばれては問い返した。 「ああ。ウチは毎年湘北高校とこの時期に練習試合をしているんだ」 何故に湘北!? そう思いながら説明を受ける。 説明を聞き終わっても何故に公立でそんなに強くない湘北高校との練習試合があるのかという疑問は消えなかった。 「まあ、頼むな」 「はい」 数日後に控えたこの練習試合のためにか、練習メニューも少し変わってきていることに気がついたのはこのときだった。 「ほな、お先なー」 片づけをしていると同級生の相田彦一に声を掛けられた。 「お疲れさまー。って、あれ?珍しいね」 いつもデータ収集と称して先輩が居残り練習をしていると彼も残って練習をしているというのに... 「まあ、偵察でもと思ってな」 「偵察?」 が聞き返す。 「そや。何せ湘北高校言うたら、今年のナンバーワンルーキーの流川君がいてるやろ?」 ...ナンバーワンルーキーなんて呼ばれているんだ。 それについては初めて知った。 まあ、確かに中学のときも凄いプレイヤーでそれなりに注目されていたとは思うが... そんなに高い評価をしてもらっていたのか。 「はずっと神奈川やったんよな?」 「そうだねぇ」 「流川君のプレイ、見たことないんか?」 「あるねぇ。中学が一緒だったし」 「何やて!!」 彦一が肩を掴んでそう叫ぶ。その行動は想像していなかったものだからは驚いて目を丸くした。 「知り合いやったんか!?」 「まあ、うん。そうだね」 「何やー!こんなところに貴重な情報源がいてたんか!で、流川君はどんな人なんや?」 彼の人となりが知りたいのか? 「どんな人、って...」 コンパクトまとめて話そうと考えていると「や!いや、やっぱええわ」と断られた。 「は!?」 「ええ。ワイはワイの目で見て感じて情報を収集することにしとるから。ほな、また明日な!」 そう言って駆けて行った。 何なんだ... 呆然と見送っていると「知り合いだったんだ?」と声を掛けられる。 「練習しないなら帰ったらいいと思いますよ?」 振り返りながらそう言うと上半身裸の陵南バスケ部エースが立っていた。 「いやーん、えっち」といいながら手を交差させてしなる。 「そんなに言うんだったらシャツ着て徘徊してくださいよ」 「徘徊、って...と、いうか。知り合いだったんだ?」 先ほどと同じ言葉を繰り返す。 「ええ、まあ。知り合いですね。向こうも一応認識していますから」 当日は無視される可能性が高いけど、と心の中で付け足したが口には出さなかった。 「へー、どんなやつ?」 「オールラウンダーですよ、一応」 が言うと 「じゃ、なくて。プレイヤーとしての彼じゃなくて」 と言われた。 何が聞きたいのだろうか。 「ちゃん中学のときもマネージャーしていたって言ってたよな?」 よく覚えているな、と思いながら頷く。前に話している中で話題のひとつとして口にしたことがある。 ―――はず。 実は記憶にないが、言っていてもおかしくないなとは思っている。 「で、流川ってどういうやつ?」 「厚顔不遜、ですか?」 「カッコいい、とかそういうのないの?」 「バカみたいに女子に人気はありました。って、それが知りたかったんですか?」 何の興味だ、と呆れながらが言う。 「そうか。じゃあ、ちゃんのタイプじゃなかったんだね」 にこりと微笑んで言う仙道に首を傾げる。 「俺のこと嫌いでしょ?」 「嫌い、ですか?嫌い...うーん」 腕を組んで更に首を傾げる。嫌い、というには少し違う気がする。 「じゃあ、好きなんだ?」 「胡散臭いだけ、ですかね」 間髪いれずに返した。 ああ、そうだ。これが一番しっくり来る。 うんうんと納得顔で頷いていると仙道は肩を竦める。 「酷い言われようだな」 「普段のご自分の言動を思い出してください」 呆れた表情でそう言っては仙道に背を向けて遠ざかっていく。 「じゃあ、さ。今度の練習試合で湘北に勝ったら付き合ってよ」 「そもそも、初戦敗退常連にシード校のうちが負けるってまずいんじゃないですか?」 「うーん」と仙道が唸る。 確かに、そうだろう。というか、負けたら監督が余計に大変気合を入れて指導をしてくれそうだ。 「じゃあ、流川を0点で抑える」 「出てくるんですか?まだ1年ですよ?」 「出てきたら。出てこなかったら、俺の勝ち」 何だ、その自分に物凄く不利な賭けのような条件は。 「楓が出てこなかったら、この話はなかったことで」 そう言っては今度こそ仙道の下から離れていった。 というか、そもそもこの賭けを受ける謂れはなかったと気が付いたのは、数時間後の帰りの電車の中だった。 「楓、ね」 遠ざかるの背中を眺めながら仙道は静かに呟いた。 |
桜風
10.3.17
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