| いよいよ試合が始まるというところになっても陵南のエース、仙道彰がやって来ない。 相手チームの湘北はユニフォームを着て体育館に揃っているというのに... あまりにもルーズすぎる。 だから、時間はきっちり守るようにっていつも言っているのに! しかし、前日に「モーニングコールして」といわれて「面倒だから、嫌です。子供じゃないんだから、自力で起きてください」と断った手前、何故か少しだけ責任ってものも感じてしまっているは必要以上に落ち着かない。 面倒でも朝早くに電話して叱り飛ばして起こせば良かっただろうか... そんなことを思いながら早く仙道が来るように、と心の中で念じ続けた。 がそわそわと何度も体育館入り口に目を向ける。 「チッ」と小さく舌打ちをしたのは彼女のことをいちばん良く知ってる流川だった。 その表情を見れば何を考えているかなんてすぐ分かる。 先日のあの話といい、居心地の悪い環境にでもいるのだろうか。 そう思っていたが、先輩マネージャーとは結構仲がよさそうだし、元々年上に可愛がられるタイプだったと思うからそう心配することもないのだろう。 「どあほう」 呟いたのは相手チームのマネージャーであるに対してではなく、何故か湘北バスケ部に入部している同級生の赤頭だ。 陵南のキャプテンと揉めているようだったが、ガラリと体育館のドアが開く音が聞こえてそちらに視線を向けると、今来たばかりの男に陵南の選手一同が挨拶をしていた。 「仙道さん!」 少し怒ったようにがそう呼んだ。 「あはは、悪い悪い」 全く悪びれずにその男が笑う。 が『仙道』といった。そいつは確かこの陵南バスケ部のエースだとか言っていた。 「何だって、こういう日に遅刻ですか!」 が言うと 「そんなに俺が来なくて寂しかった?泣きそうになった??」 と仙道が言う。 「まだ寝ぼけてるんですか?」 真顔でそう返すに苦笑して仙道はその頭にぽんと手を載せる。 「仙道、アップする時間ねーぞ」と魚住が声を掛ける。 「大丈夫ですよ。走ってきましたから」 そう答えてを見下ろす。 「どれが『楓』?」 名前なんて言ったかな?と思いながらも「11番です」と正直に答えた。 「ユニフォームもらってるね。背もあるから、たぶん、スタメンだなー」 嬉しそうに、楽しそうに仙道が呟いた。 「じゃ、約束な」 そう言われては心から嫌そうな表情を浮かべた。 しかし、ここは陵南高校バスケ部マネージャー。流川を応援することはない。 「エースとしての実力、見せてくださいよ」 の言葉に仙道は満足げに笑う。 ぽんとの頭に手を置いてそのまま他のスタメンと共にコートへと入っていった。 ふと、視線を感じて振り返る。 じっと自分を見ていた視線とぶつかった。 「楓...」 ポツリと呟く。 しかし、それ以上自分が口にできる言葉はない。 はきゅっと口を結んで割り当てられている仕事に向かった。 試合が始まり、自分のマークについた人物に思わず口角が上がる。 「楓」と呟いた。 目の前でディフェンスをしている1年坊主の名前だ。 自分の名を口にした目の前のエースに眉を顰める。 余裕綽々のその笑顔が素直にむかつく。 「にゃろ...」 流川は呟き、頭に浮かんだのは先日の幼馴染の言葉だった。 コイツが居るうちにシュート決めろって?言われなくても...! 彼女の言葉と、生来負けん気が強いその性格も相俟って流川のやる気はいつも以上のものとなった。 |
桜風
10.4.7
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