What's love? 10





部活が終わって家に帰り着いたのはやはり日が沈んで空が暗くなってからだ。

「ただいまー」

珍しく家に親が居る。

しかし、玄関のドアを開けてはちょっと絶句した。

サンダルがある。

それは見慣れているが我が家にあるものではない。

「おかえりー。楓君が遊びに来てるわよー」

母に言われてやっぱり、と小さくため息を吐く。

何だって、今日の今日に遊びに来るかなぁ?

そう思いながらスリッパに足を突っ込んでリビングに向かった。

「ただいま」

「おう」

何だ、この短い会話。

そう思いながらも着替えるべく自室へと足を向ける。


でも、ホントに何しに来たんだろう。

いや、特に理由とかないんだと思う。たまたま遊びに来た、はず...

賭けのことはそうとは言っていないものの、何かしらはあるとあのニブちんな彼でも気づいているだろうから、そのことを聞きに来たのだろうか。

はぁ、と溜息を吐いて自室を出た。

「のあ!?」

部屋を出たとたん、流川楓という名の壁にぶつかった。

「いてぇ」

が当たった胸の辺りを少しさすりながら文句を言う流川に対して、

「ドア開けたところに居る自分が悪いって気づけ!」

と、は鼻の頭を押せなが流川を見上げながらビシッと指差して抗議する。

「鼻がぶつかるほど高くねぇだろ」

「はっはっはー。むかつく!!」

ぎゃあぎゃあと子供のように口げんかを始める娘と隣の息子に目を細めてその様子を見守っているのはの母で、止める気は全くなかった。

ひとしきり喧嘩をしてお互いすっきりしたところで、「で?」と流川が言う。

何を促されたのかが良く分からない。

もう一ラウンドしたいのか?

そう思っていると、「助かったのか?」と聞かれた。

「...うん」

「あ、そ」と返して流川はリビングへと向かう。

何だかすっきりしない。


もそもそと食事をしていると「美味しくない?」と母が聞いてきた。

「あ、え?ううん、美味しいよ」

あわてて返す娘に首をかしげて「そう?」と返し流川に向かって「どうかな?」と意見を聞く。

「美味いっス」

「おばちゃんの料理には素直に言わないくせに」とが茶々入れたら流川は「うるせー」と憮然と返す。

そんな光景を満足そうに見ながら「お替りあるからね」との母が声を掛けた。

「はーい」「うす」とと流川が同時に返事をし、「太るぞ」と流川が言えば「遠慮くらいしなさいよね」とが返す。

またしても食卓でぎゃあぎゃあと喧嘩が始まった。

パンッと手を叩く音がしてと流川の喧嘩かぴたりと止まる。

「今は、食事中」

の母は食事中の行儀に関して結構厳しい方だ。

おかげでと流川は食事中の作法についてはそこそこ自信がある。

「ごめんなさい」

ふたりは素直に謝って食事を再開する。


食事が済んで、デザートを食べて流川が席を立つ。

「あら、楓君。もういいの?」

「今日、試合だったから」

だから、体を休めるといいたいのだろう。

「そう...」と少し残念そうにの母は頷いた。

「そういえば、も今日試合だって言ってなかった?」

ここで掘り返すか...と思いながらもは頷く。

「どうだったの?」

「負けた」「勝った」

2人の対極的な返事に複雑な表情を浮かべての母は「そう」と頷く。

「楓君、。次も頑張って」

は母のこういうところが好きだ。

試合に負けた人に対して「『次は』頑張って」という人が居るが、今回だって頑張っている。

だから、『次は』何ていうと相手に失礼だと思う。

は少なくともそう思っている。

だから、負けたといった流川に『次も』と言った母に笑みをこぼした。

流川も、その言葉が気に入ったのか小さく笑う。

「次は絶対勝つ」

の母にそう言って、に視線を向ける。

「受けて立つわよ」

試合をするのは選手だが、マネージャーだってチームの一員だ。

の言葉を聞いて流川は不敵に笑った。

今までは『一緒に』頑張ろうだったが、こういう関係も悪くない。面白いではないか。

「じゃあな」

「宿題、ちゃんとしなよ」

「お袋かよ」

流川は苦笑してそういい、家に帰っていった。









桜風
10.4.21


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