| この試合に勝てば決勝リーグ進出が決まる。 そして、シード校はこの日初めて試合を行う。 もちろん、そのシード校として名を連ねている陵南高校もこの日がIH予選の初戦となっている。 その日の試合は4試合で、全試合同じ会場で行われることとなっていた。 第一試合は翔陽湘北戦だった。 試合が始まる頃に、陵南も会場に入った。昨日、少し変だった仙道はいつもどおりだった。 あれは何だったんだろうか、と思いつつも少しほっとしている。 やはり、仙道があのままでは心配だった。いつもどおりの仙道を見てほっとした自分に少し驚いた。 スタンドの向こうから海南バスケ部がやってくる。 「要チェックや!」と小さく呟く彦一の隣での視線はコートの方に向いていた。 前評判は相変わらず翔陽だ。 だが、と期待している。 あの練習試合以降、SGの三井とPGの宮城が加わったと聞いた。 練習試合のときであれほどの力を持っていたのだから、今あの2人が加わればやはりレベルは上がっているはずだろう。 しかし、見れば見るほど翔陽は壁のようだ。背が高い。 「ちゃん?」 仙道に声を掛けられてはっと気づく。 「今行きます!」 パタパタと駆け出し、遅れて彼らに追いつく。 「どっちが勝つと思う?」 控え室に行く道すがら仙道に聞かれた。 「翔陽じゃないんですか?」 それが一般的な評価だ。 「俺は、意外と湘北が来るんじゃないかなって思ってるんだけど」 「湘北..ですか?」 不思議そうに自分を見上げるに仙道は頷いた。面白いものを見るように。 「あれ?ちゃんは、そっちの方が良いんじゃないの?」 「どっちでも良いですよ。ウチが勝てたら」 の言葉に仙道は笑う。 「だね。ウチが勝って優勝して全国だ」 「...怪我には気をつけてくださいね」 はそう言って「ー!」と呼んでいる先輩マネージャーの下へと駆けていく。 その背中を仙道はじっと眺めていた。 「おー、が来たんか」 情報収集といえばこの人、相田彦一がを歓迎した。 マネージャーも見ておくようにといわれたのでは言われてスタンドに向かった。 陵南の試合中もビデオをまわすからその使い方等を教えてもらっておくように、という指示だった。 「使い方、教えて」 ここに来た経緯を知っている彦一は手短に説明する。 も比較的機械類は得意な方だから、簡単な説明で理解した。 「、どっちが勝つ思う?」 「翔陽」 「せやなー...」 「けど、仙道さんは意外と湘北だって」 の言葉に彦一は「何やて!」と声を上げた。 「仙道さんがそう言いはったんか?そりゃ、要チェックや!!」 「うるさいぞ、彦一!も、試合の方もきちんと見ておくように」 試合を見るため、スタンドに居る監督にしかられ、と彦一はそれぞれ返事をしてコートに目を向けた。 試合はやはり翔陽がリードして折り返した。 しかし、その点差は一桁。 田岡が言うにはそれは結構大きい。前半終了間際に見せたあの桜木のリバウンドが良かったということらしいのだ。 熱心に監督の話を聴いている彦一に対して、は別のことを感じていた。 遠いな、と。 今までこんな遠いところから流川の試合を見たことがない。 前回、陵南での練習試合では自分が忙しくてそんなことを考える時間も余裕もなかった。 しかし、こうやって落ち着いて見てみると、遠い。物理的にも、精神的にも。 なんだか、落ちつかない。 そんなことを考えているの隣で彦一はやはり熱心に田岡の解説に耳を傾けていた。 「真のエース登場だ」 田岡の言葉に、ははっとした。 コートの中に4番のユニフォームを着た藤真が立っている。 一瞬でコートの中の翔陽の空気が変わった。 やはり、オーラがある人なんだ... 藤真が出てきて試合は一度は翔陽に傾いた。 しかし、3Pシューターの三井や湘北の2人のルーキーの動きもあり藤真の支配力が及ばなくなり、そして、試合終了を告げるブザーが鳴り、牧・藤真の時代と呼ばれていたそれが終わりを告げた。 誰もが決勝トーナメントに進出すると予想していたチームではない湘北高校が決勝トーナメントへの進出を決めた。 「よし、じゃあ次はウチの試合だ」 田岡がそういって立ち上がる。 会場はここだが、コートが違う。 と彦一は田岡の後をついて移動した。 控え室に行くと仙道がそばまでやってきた。 「湘北、勝ったね」 「仙道さんが言ったとおりですね」 の言葉に仙道は肩を竦める。 「ウチも勝たないと」 「そうですよ」 がそう返すと仙道はにこりと笑った。 とても自信がある、エースの見せる笑顔だった。 |
桜風
10.5.19
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