What's love? 16





バスに揺られて湘北が試合をしている会場に着いた。

ベンチに入れなかった部員たちはここでビデオを回している。

陵南のジャージを見つけて皆はそちらに移動した。

「あれ?」とが呟いた。

意外なことに、45対47と接戦だった。

これには、一緒に来たレギュラーの部員たちも驚きの声を上げる。

「赤木がいない!?」という魚住の呟きが耳に入り、も改めてコートを見下ろす。

確かに、彼の姿がなかった。

そして、海南のベンチから聞こえた言葉にさらに驚く。

『たった一人の1年坊』と海南のベンチが言ったのだ。

つまり、これは...

はコートに立っている流川を見た。

つまり、たぶん。楓が、だよね...

それを裏付けるかのようなどよめきにはびっくりして周囲を見渡した。

流川にボールがわたった途端の歓声だ。

そして、彼の次のプレイに言葉を失った。

あのときの練習試合のときよりも上手になっている。

もちろん、毎日練習しているし、朝もひとりで自主練習をしているのを知っているから上達ということ自体には驚かない。

その上達っぷりが驚きなのだ。

まあ、そうは言っても。はえらそうに人のプレイをどうこう言えるほどの目も経験もないのだが...

そして、前半終了のブザーが鳴り、流川は拳を突き出した。

その先には、不在だった赤木がいた。

この試合、同点での折り返しとなった。


ハーフタイムを利用して先に来ていた部員たちにこの試合の流れを聞く。

やはり、前半は『流川』の一言に尽きるらしい。

お隣の幼馴染はどうやらこの試合で一気に『スーパールーキー』という評価をほしいままにしたらしい。

と、いっても。

本人は別にそんなことを望んではいないだろうが...

「でも、赤木さんの負傷は湘北には痛いですよね?」

「まあ、ウチで魚住さんが負傷したら痛いのと同じくらいに痛いだろうね」

の言葉に仙道は頷きながらそういう。

流川は超高校級のプレイが出来ても、周囲を支えることはムリだ。何せ、高校にあがってまだ3ヶ月なのだ。赤木ほどの信頼を寄せるにはまだまだ役者が不足している。

「けど、途中で退場するほどの怪我だったんですよね?大丈夫なのかな?」

「どうだろう。けど、安西先生だって、赤木さんの怪我のことはご存知だろうから、ちゃんと見て下げることも視野に入れているはずだよ。決勝はトーナメントではなくて、リーグだから今日負けても次がある。しかも、2試合。赤木さんの将来のこともあるし、無理はさせないんじゃないのかな?」

「ですよねぇ」と真剣に頷くをちらりと横目で見て仙道はコートに視線を落とした。

「ま、プレイだけなら流川がいるしね。赤木さんはコートにいるだけで心強いから、もし、赤木さんの動きが鈍かったら流川がフォローするってのも出来るだろうし」

「...仙道さんってやたら楓のことを眼の敵にしてませんか?」

は据わった目を仙道に向けた。

「そう..かな?」

「そうですよ。何かといえば、『流川』って」

拗ねたように言うに仙道は苦笑した。

意識して言っているつもりはないけど、なんと言うか...

が何だかんだ言って流川の事を考えているというのを感じられるのだ。それは、証拠のある何かではなくて単なる勘だが、外れていない自信もなぜかある。

そして、それが面白くないのが事実で。

それならどうしたらいいのかと考えても残念ながら分からないから、こんな風になっているのだ。

「んー..ごめん」

素直に謝られてはそれ以上言えず、なんだかすっきりしないものの仕方なくコートに視線を移した。

難しいな...

仙道は何となくそう思っていた。



結局、この試合は海南が勝利した。

勝敗の結果だけなら何も意外性はない。しかし、点差を見ると誰もが驚く結果となった。

流川は途中で交代してベンチに下がった。握ったその拳は悔しそうに震えていた。









桜風
10.6.2


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