What's love? 21





バスケットボールの跳ねる音が響く体育館の入り口に汗だくになっている人物を見つけて彩子は驚き、足を向けた。

「アンタ、何してんの」

「流川は?」

「今、帰ったばっかり。走ればたぶん追いつくと思うわ。グラウンドの反対側に駐輪場があるから、そこに向かってるはず」

特に詳しく理由を聞かずに彩子は流川の居場所だけを教えた。

「ありがとう」と言いながら踵を返した仙道は見る見るうちに小さくなっていく。

「...しかし、あの子も大変ねぇ」

仙道がなぜここまでやってきたかなんて簡単に想像できた。そして、その原因になったことも。

流川が少し早めにあがるといったとき一応理由を話したのだ。

仙道はきっとその理由を知らなかったのだろう。

しかし、それでもあそこまで全力を向けられるとそれはそれで疲れてしまいそうなものだ。

それでなくとも、どうやらはそういうことにはとんと鈍いようだから本人たちはもちろん周囲が大変苦労するだろう。まあ、周囲はそれと同じくらい楽しめるかも知れないが...


「流川!」

自転車に跨っている流川の姿を見つけた仙道が声を上げた。

驚いて振り返ると、汗だくの仙道が駆けて来る。正直、ペダルをさっさと踏んで逃げてしまいたいが、仙道の顔はもう必死で縋り付くような表情をしていたので、それは思い止まり、待つことにした。

..ちゃ...ん」

息を切らせて辛うじて彼女の名前を口にした。

しばらくして息を整え、「学校に当分来てないって」と訴える。

しかし、何でまた自分を頼ってくるのか...

はここんとこ、ずっと病院だから」

溜息交じりにそう応えると「病院!?」と声を裏返して仙道が驚く。

面倒くさいな、と思いながら流川は頷いた。

目の前の仙道は顔を蒼くしている。

その病院には本人が厄介になっていると思ったのだろう。

流川は溜息をつき、「付いて来い」と言って自転車を押した。



並んで歩いて大きな総合病院にたどり着く。

流川が自転車を置いて来ている間も仙道はそわそわと落ち着きがなかった。

戻ってきた流川と共に入院棟に向かい、エレベータに乗る。

ちゃん、どこか悪いのか?」

恐る恐る聞く仙道だったが、「あいつは元気だ」という流川の返事に「へぇ?!」と声を上げた。

『ドアが、開きます』というアナウンスの後にエレベータのドアが開き、流川が降りるのに続いて仙道も降りた。

5階だった。

「楓!」

スタッフステーションの中から看護師が出てきた。

流川そっくりで、胸元のIDも『流川』と書いてある。

「今日はちょっと遅いじゃない。って、あら?お友達?」

「知り合い」

そう返した流川に対して、流川の母は仙道に興味津々だ。

「あら?ちゃんの学校の子?」

仙道は部活を飛び出してきたので、ジャージ姿なのだ。

「ちわ」と会釈をした仙道に「あらあら。ちゃんってばモッテモテ」とリズムをつけて流川の母は言う。

「楓!」

廊下の向こうから声がして顔を向けた。

流川は軽く手を上げ、仙道は1歩歩み出る。

「って、仙道さんも?!何で??」

「泣きそうな顔でウチにやってきたんだよ」と流川。

「『ウチ』って、家?」

「学校」

「えー?!湘北に行かれたんですか??」

は目を丸くしてそういう。

何だろう、確かに流川はは元気だと言っていたが、本当に元気だ。

じゃあ、何であれから学校も来ずに病院にずっといるのだろう...

「今日、帰っていらっしゃるんだっけ?」

流川の母がになにやら話しかけている。

「夜中だから、明日来ると思います。だから、明日はサボって、あさってから学校に行こうと思ってるんです」

「ね、ねえ。どういうこと?」

のお袋さんが入院中。両親ともひとりっこで親戚なし。お袋さんの親はかなり高齢だし、神奈川から遠いから来てもらうことはムリ。親父さんは現在海外出張中。で、今日帰ってくる」

「...看病のための欠席?」

「あいつ、何も言ってないのか?」

...聞いてない。

流川は溜息をつく。ご愁傷様、と。

そして、仙道はを見た。

はきょとんと仙道を見上げている。

「学校には、連絡してたんですけど...あれ?」

「どうしたの、これ?」と流川の母が息子に声を潜めて問う。

「さあ?」と特に興味のない流川は何となく事態を察していても話すのが面倒くさいと思ってとぼけた。


取り敢えず、場所がエレベータ前であり、往来が多い方ででかいのが突っ立ってると邪魔だから、と流川の母に促されて3人で屋上へと向かった。









桜風
10.7.7


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