| 屋上に出るとちょうど夕日が山陰に消えていくところだった。 「そういえば、仙道さん。練習は?」 試験が終わったから部活は再開のはずだ。 「あ、うん...」と歯切れ悪く応える。 「サボったんですか?」 少し怒ったようにが言う。 「い、いや。サボってない!!」 途中から抜けてきただけだから... ふと見ると流川は少し離れたところに立っている。 気を..遣ってくれているのだろうか。 「えーと。何で泣きそうになって楓の学校に行ったんですか?」 『泣きそう』っていうところは今すぐ消去してほしい。 「いや、何ていうか。ちゃん、部活に来なかったし、学校にも来てないって聞いたから。何かあったのかな、って。その..心配になって...」 大きな体の仙道が小さくなってそう呟く。 「先輩、何も言わなかったんですか?監督も」 の言葉に仙道は唖然とした。 「へ?先輩?監督??」 がいう『先輩』というのはマネージャーの先輩方だろう。彼女は先日の自分の失言に物凄く腹を立てていらっしゃったので今でもそれが尾を引いていてもおかしくないし、だからの欠席理由を知っていて教えてくれないのは分かる。 だが...何故監督も?! 少し悩んだが、もしかしたらあのマネージャーの2人に口止めされたのだろう。 特に困らないし、何より、彼女たちが怖いから... きっと他の事実を知っている人たちもそうなんだ。 「でも、学校に来なくて大丈夫だったの?」 「ええ。追試で対応してくれるって言うことになったから。それまでには父が帰国しているはずだったので。普段の生活態度が良いとこういうときには便利ですよ」 笑いながらが答えた。 「あの、えーと...」 仙道はちらりとを見た。 は首を傾げて仙道を見上げた。 「オレ、あの...」 もごもごと口ごもっている仙道には溜息をついた。 「..ちゃん?」 「きっとわたしにも非はあったんだろうし。グーで殴っちゃったので。チャラにしていただければ、って思ってるんですけど」 仙道はそのままヘナヘナと崩れた。 「仙道さん?!」 「オレ、ちゃんを傷つけたから。だから、部活にも来なかったのかと思ってた。学校にも来てないって、聞いて...」 ぽかんと仙道を見ていたは困ったように笑った。 「あのさ、ちゃん。オレ..君の」 「!」 仙道の言葉を遮って流川が彼女の名前を呼ぶ。 何だ、このタイミングの良さは!! 仙道は流川を見たが、特に気にした様子もなくはで「何?」と流川に向かって歩き出している。 「おじさん、病院に来たと思う」 「え?!早い!」 「会社には寄らなかったみたいだな。今、院内放送でが呼び出されていたぞ」 「え!?ホント??!!仙道さん、ちょっと降りてきます!!」 はそう言って駆けて行く。 遠ざかるの背中を見て呆然とする仙道の傍に立った流川は「残念だったな」という。 「...確信犯だろう」 怨みがましく仙道が唸ると、流川は口角を上げて応えた。 「くそっ」と呟く仙道に「あいつの隣は俺んだ」と流川が応えた。 まさか流川の口からそこまではっきりと聞けるとは思わなかった彼女への想いを聞いた仙道はしばらく呆然とした。 しかし、やがて仙道は笑った。 「なあ、流川。恋の病って知ってる?」 「医者にも治せないんだから、ジタバタしても仕方ないってのは随分前に悟った」 「流川の方がオレより大人だ。...じゃあ、もういっこ。『好き』って何か知ってる?」 仙道とこんなに長く問答をするつもりはなかった流川は背を向けて棟内へと続くドアに向かった。 「」 微かに仙道の耳に届いた単語に目を丸くしつつ「他の人と同じ答えだった場合はどうしたら良いんだろうなぁ」と呟いて空を見上げた。 「いちばんぼーし、みーつけた」 仙道が呟くとその星が一際輝いたように見えた。 |
桜風
10.7.14
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