Lovesick 2





夏休みは良いなー、と思いながらは帰りの空を見上げた。

朝晩は秋めいてきたが、それでもまだ明るい。

「おい」と声を掛けられて振り返る。

「おや、今帰り?」

「まあな」と言うのは同じく部活帰りの様子の流川だ。

「あ、国体の選抜に選ばれたんだって?おめでとう」

の言葉に首を傾げた。

「何で知ってんだ?」

流川の疑問に、本日仕入れた情報を口にした。

「ああ、なるほどな。確かに、先輩は参加しそうだな」

「聞いてないの?」

「興味ねー」

「もう!明日聞いておいてよ!!」

釘を刺されて「覚えてたらな」と返した。

ふと視線を感じては見上げる。

「どうかした?」

首を傾げて視線の主、流川に問う。

「いや、が俺のマネージャーするのって久しぶりな気がして」

「ああ、そうだよね。楓のいるチームのマネージャーって久しぶり..かな?」

流川的に重要なポイントを見事に外してが同意した。

まあ、いいけど...

心の中でそう呟き、エレベータに乗る。

「いつが合宿なんだ?」

「え、選手が聞いてないの?わたしもまだ詳細は後日って言われてるから聞いてないんだけど...」

目を丸くしていうに「ふーん」と適当に返して流川は目線を上げる。

自分達の家があるフロアが光ってドアが開いた。

「そいや、おばちゃんは?」

「またバリバリ働いてるよ。仕事中毒だもん」

肩を竦めてが言う。「もう若くないんだから少しは『休む』ってことを覚えてもらいたいわ」と続けた。

「だーれーがー、若くないって?」

ギリギリとの頭を握っているその声の主はニコニコと笑っている。目以外は。

「ちわっす」

流川が挨拶をする。

「こんにちはー、楓くん。で、?」

「ただいまー...」

上ずった声でが返した。

「ったく...」

手を緩めての横を通り過ぎて彼女は家の鍵を空ける。

「ほら、」とを促して先に家の中に入る。

「じゃあね。ちゃんと彩子先輩に確認しておいてよ」

「あー...忘れてた」

「明日の朝もちゃんと言うわ」

「あんま期待すんな」

「わかった...」

少し不貞腐れたようには返し、「じゃあねー」と家に向かった。



翌日、が家の前に立っていた。

部活に行く予定だった流川は目を丸くする。

「どうしたんだよ」

「うちは今日午後から。先輩に直接確認するからついてく」

「...は?」

「ほら、行こう。チャリでいけるから楽でいいよね、湘北って」

そう言いながら自分の自転車の鍵をクルクルと回しながら言う。

本当に来るつもりらしい。

まあ、いいか。

並んで自転車を漕いで湘北に着いた。

まだ夏休みだから他校の制服を着ているがいてもそこまで悪目立ちしていない。

「俺、着替えていくから」

「先行ってて良い?」

彩子が来ているかちょっと考えたが、「が気にならねぇならいいんじゃねぇの?」と流川は返して、そのまま更衣室に向かった。


体育から外に出られるドアが開いていた。

そこからひょっこりと覗き込んでみる。

まあ、練習前だからそれぞれが自由にストレッチやらおしゃべりをしていた。

彩子の姿が見えない。

「まだなのかな...」

「何か用か?」

声を掛けられて「ひゃっ」と思わず声が漏れた。

見上げると三井だ。

そういえば、引退していなかったんだな...

「こんにちは」と挨拶をすると「おう」と返された。そしての服を見て「陵南の生徒がウチに何の用だ?」と聞かれた。

「あ、えと。彩子先輩は...」

眉間に皺が寄る。

ちょっと、怖いかも...

強面だったら確かに魚住だって強面だったが、の先輩マネージャーたちに頭が上がらないところとかあって、そういう総合的なことからそこまで『怖い』とは思わなかったのだ。

しかし、睨まれてる。物凄く睨まれている...

?」

少し離れたところから声がした。

「彩子先輩!」

助かった!

心からそう思う。彼女がいたら怖いことなんて何も無い。

「どうしたのよ。三井先輩?」

一緒にいた三井に答えを求めてみた。

「お前に会いに来たみたいだぞ」

別に怯えさせようと思って声をかけたわけではないのだが、怯えられて薄っすらショックを受けていた三井はそう言ってその場から離れていった。









桜風
11.2.9


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