| 「ちょっと準備するから待ってね」と言われてまた置いてけぼりになった。 ただ、彩子が視界に入っているので安心する。 準備が済んだようでまたの元へ彩子が戻ってきた。 「で、どうしたの?上履きあるなら履いて上がっちゃいなさいよ」 「え、でも...キャプテンに聞かなくて良いんですか?部外者..なんですけど」 が伺うように言うと「そうか」と彩子が呟く。 彩子にとっては身内でも、流川を除く選手達には身内にはならない。 「リョータ!」と彩子が声を張る。 遠くにいた宮城リョータが「何、アヤちゃん」とやってきた。 「この子、ちょっと体育館に入れてもいいかしら?」 「...陵南の制服だよね、それ」 そんなに特徴がある制服でもないのに、何で分かるんだろう... 心の中で首を傾げつつ「こんにちは」と挨拶をする。 「そう。中学のときは私や流川と一緒だったのよ。可愛い後輩。ちょっと私に用があって来たみたいなのよ」 「まあ、別にいいけど。試合も特に近いわけでもないし」と言ってやっぱり不思議そうにしながらを見てその場を去った。 「ほら、キャプテンのお墨付き」 「じゃあ...お邪魔します」 そう言ってバッグから上履きを取り出して履く。 「ついでに手伝ってね」と言われて「やっぱり」と呟く。 まあ良いけど... 部員達に好奇の視線を向けられながらは彩子の後ろをついて歩いた。 「で?何の用なのかしら?」 「『用』というか...国体の合宿のこと、ご存知ですか?」 「ああ、うん。ウチからも結構選ばれてるしね。あ、その確認?」 「そうです。楓に聞いても知らないって。聞いておいてっていったら『覚えてたら』って。覚えてなさそうだし、今日は午後からの部活なので丁度良いやって思って。で、彩子先輩は...」 が言うと「実は...」と彩子が俯く。 ああ、参加できないのか。忙しいんだろうな... そう思って「そうですか、残念です」と言うと「私が参加するのがそんなに残念?」と顔を上げた彩子が悪戯っぽく笑いながら言う。 その答えにの表情がパッと明るくなる。 「ホントですか?!」 「本当よ。凄く勉強になるだろうし」 「嬉しい!」 手をポンと叩いてが軽く跳ねる。 「ホント、何で陵南に..って今更ね。私も、と一緒にマネージャーできるの、楽しみよ」 ニコリと微笑んで彩子が言う。 そしてふと思い出したように「そういえば」と呟いた。 何だろう、とが首を傾げる。 「仙道、元気?」 「まあ、元気っちゃ元気ですけど...あ、でも最近はちょっと大人しいかな?なんか拾い食いでもしちゃったのかなって思ってるんですけど...」 の言葉に彩子は片手で目を覆い仰いだ。 「あの、後半は冗談ですよ?さすがの仙道さんでも拾い食いはしないと思います」 いやいや、そういう表現をされる時点で彼にまだ脈が無いのだろう... 「仮にもキャプテンに...って、仙道がキャプテンよね?」 「ええ。でも、部をまとめているのは越野さんですけど」 「は?」 目を丸くした彩子に苦笑して「いや、ほんとに」とが言う。 「まったく...」 それから暫く、の時間が許される限り彼女は湘北のマネージャー業をした。 一応、後からやってきた監督の許可ももらった。 「そういえば、何で陵南の練習は午後からなの?夏なら午前中にギュッとしたほうが良いでしょう?」 「ウチは休みは大抵1日中です」と返す。 「ほんとに?!」 「と、言っても。午前か午後のどちらかが自主練だったりするんですけどね。今日は午前中に監督の用事が入って出来なかったんですよ。学校に来れないから。だから、午後にギュッと」 さすがに責任者不在で部活はさせられない。何か問題があったときに責任を取れる大人がいないと拙いのだ。 「顧問はいないの?」 「田岡先生以外、誰がバスケ部に関係する先生かがわかんないです」 つまり、田岡以外はバスケ部の面倒を見ない。 「副顧問は?」 「さあ?」 「田岡監督に何かあったらどうするの?」 「そのときは、さすがに誰かが代わりに引率とかはしてくださるでしょうけど...」 陵南高校はバスケ部にそれなりに力を入れているので、それくらいの融通はあるだろう。 時間が来てが体育館を後にする。 安西監督に挨拶をし、選手達は練習中なので声をかけずに体育館の外に出て深く頭を下げて「ありがとうございました」と言いその場を去った。 その後の休憩中「結局、あの子は何しに来てたんだ?」と三井が聞く。 見ていると、マネージャーをしに来ただけのようだ。 「ああ、今度の合宿の確認に来たんですよ」 「合宿?」 眉間に皺を寄せて問い返す三井に彩子が軽く説明をした。 「詳しい話は顧問か、安西先生からあると思いますよ」 「ふーん...」 「偵察かと思ったんですか?」 「...別に」 ちょっとだけそう思って声が冷たかったかもしれない。 今更反省した三井は、次にあったときは少しは優しい先輩になってみようと思ったとか思わなかったとか... |
桜風
11.2.16
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