| 風呂から出ると、も風呂上りのようで髪の毛が湿っていた。 合宿所の部屋に風呂は無い。だから、風呂に入りたかったら部屋から出て行かなくてはならない。女子部屋も勿論例外ではない。 「おう」と流川が声を掛けると「何で髪乾かしてないの?!」と怒られた。 自分だって、濡れてるじゃないか、と思いつつも確かに自分の髪の毛からは水滴が落ちている。 「朝晩は随分冷えてきてるんだから、風邪引くでしょう?!」 怒りながらも流川の肩に掛けてあるタオルを奪い取って「座る!」と床を指した。 「尻が冷えるだろうが」 「あ、そっか」 家じゃないんだ。 キョロキョロと周囲を見渡すと少し離れているところに丁度良い高さの椅子がある。 「あれは?」 「これで良いって」 渋る流川の背を押して椅子の傍に向かった。 椅子の前まで行って、が椅子に立つ。 普通俺を座らせるだろう... そう思いつつも指摘するのが面倒くさい流川はそのままにされるがまま、髪を拭かれる。 「...何やってんの?」 通りかかった神が不思議そうにを見上げた。 「あ、神さん。お疲れ様です」 「うん、さんもお疲れ様。で、何やってるの?そういうのって普通流川が椅子に座るんじゃ...」 指摘を受けて初めて自分がちょっとおかしいことをしていたと気がついたは慌てて椅子から降りた。 勿論、椅子に立つときに靴を脱いでいるので靴を履くのだが、慌てているためもたつく。 「落ち着けよ...」 呆れたように流川が言う。 「う..うるさい!」 「幼馴染なんだっけ?」 今朝聞いた話を思い出して神が声を掛ける。 居座る気かよ... 流川は声には出さないが表情に出して抗議した。 これは益々面白そうだ。 ニコリと流川に笑顔を返した神はそのまま足を止めた。『居座る気』をその態度で示す。 「え?あ、はい。ちっちゃいときから...」 「髪を乾かしてあげてるんだ?」 「んー、そうでもないよね?」 「口うるせぇけどな」 「だって、このままで風邪引いちゃうかもしれないじゃない。文句を言うなら自己管理しなよ」 「まだ引いてねぇだろう」 「引いたら同室の人に移すかもしれないでしょう?!」 けんかが始まった。というか、これはどう見ても痴話喧嘩レベルだ。 クスクスと神が笑い、と流川の言葉がぴたりと止まる。 「仲が良いね。けど、痴話喧嘩はここら辺でやめた方がいいよ」 からかってそう言う。 流川は不機嫌に顔を背け、はきょとんとして「神さん」と言う。 「何だい?」 「『痴話喧嘩』って恋人同士がする喧嘩ですよ?」 からかって言ったのに... 噴出しそうになったのをグッと堪えて「あ、そうだったね。ごめん、間違えたよ」というと「ビックリしました」とが苦笑する。 流川の表情を見ると益々不機嫌そうだ。 やばい、このままだと間違いなく噴出す。 「じゃ、俺は部屋に帰るから。2人とも、早く部屋に帰れよ」 「はい、おやすみなさい」とが言い、返事をしない流川を彼女が小突く。 「ウス」と返事をした流川を満足そうに見上げるを見てまたしても噴出しそうになった神は足早にその場を去った。 「先輩は?」 「まだ入ってると思う。長湯は苦手だから、わたし」 そういや、そうだったな... 子供のとき風呂に入ると「100まで数えて出てきなさい」と親に言われたが、は頑張って50までだった。 「相変わらずだな」と流川が小さく笑う。 「仕方ないじゃない、すぐにのぼせちゃうんだから」 の言葉に流川はまた小さく笑った。 |
桜風
11.3.2
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