Lovesick 6





全体練習が終わってもその後に自主練をするのは個人の自由だ。

普段から練習をしている者はやはりそうやって調整しないと調子が出ないだろうし、そういう点では禁止するわけにはいかない。


合宿中日。

体育館に忘れ物をしたが向かうと体育館の電気がついていた。

誰だろう...

そういえば、神がいつもシュート練習をしていると聞いた。

だから、きっと神なのだろう。

そう思って静かにドアを開けたら中にいる人物に驚く。

「仙道さん?!」

「あれ、ちゃん」

仙道も目を丸くした。


合宿に入って果敢にに立ち向かっているが、そこは意外と強敵である彼女の鈍さを前に連敗続きだ。

というか、何でこんなに鈍いんだろうか...

流川のそれに気づかないのは、幼馴染であるが故だと思う。

だから、高校に入ってから知り合った自分だったら大丈夫だと思ってそれなりに仕掛けているつもりなのだが...

しかし、仙道はひとつ見落としている。

は仙道の言うことは話半分どころか3割程度で聞いているのだ。

だから、どんなに全力で当たっても、彼女はそれを7割引いて受けている。

かなりの割引率であるがために中々届かない。

そして、仙道は自分の全力で当たっているつもりなのだろうが、まっすぐに恋愛をした記憶が薄いため、全力が出し切れていなのだ。


「どうしたんですか、仙道さん」

「ねえ、そんなに驚くこと?」

「キャプテンに就任してからも練習に遅刻してその理由を笑顔で『寝坊です』って未だに言う仙道さんですよ?その仙道さんがこんな遅くまで残って練習って...」

否定できない。

本当に自分の普段の生活態度って...

そう思うこともあるのだが、仕方ないと諦めている自分もいる。

「ほら、合宿最後に練習試合するだろう?」

「あ、そうですね。大学生..でしたよね?」

合宿最終日は、その集大成として大学生との練習試合が組んである。

合宿初日に聞いたときには驚いたが、この選抜チームなのだからいい試合をするどころか、勝つかもしれないという期待をは持っていた。

「楽しみです」

の言葉に仙道は目を丸くした。

「ほんとに?」

「ええ、だって。勝つかもしれないじゃないですか」

「『かもしれない』じゃなくて、『勝つ』んだよ」

強気な仙道に発言には満足したように頷いた。

「益々楽しみです」

「あ、そういえば。ちゃんは何で体育館に?」

ふと、仙道は落ち着かなくなった。

は流川といるときは彼の世話を焼いたりするし、結構素直な性格のお陰で他校の先輩達にも構われている。

それを見るたびに面白くない、と思っており、その気持ちがどんどん大きくなっているのだ。

今の心境でと2人きりは拙いと思う。

普段は彩子が一緒にいるし、流川や他校の誰かしらが構っているから自分もに構っているのだが...

「タオルを忘れたようなんですけど...」

此処に無かったらどこだろう、と思いながらキョロキョロと周囲を見渡した。

「あ、あった」

確かに体育館の隅に真っ赤なタオルが置いてある。

あれはのタオルだったのか...

そのタオルを手にした。タオルの色は湘北のユニフォームカラーに似ていた。

「じゃ、仙道さん。あまり無理をしないでくださいね」

用は済んだとばかりには仙道に挨拶をする。

「あ、」と思わず声を漏らした仙道を振り返る。

「どうかしましたか?あ、何かお手伝いできることがありますか?」

そう言って仙道の傍にやってくる。

離れ難くて思わず声が漏れたが、近付かれるとちょっと困る...

未練がましい自分の本音に仙道は溜息を吐きたくなった。









桜風
11.3.9


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