Lovesick 7





少し休憩をしてからシュート練習をしようと思っていた神が体育館に向かう。

「あれ、ちゃ...」

駆けて来たに声をかけようとして無視された。

何だったんだろう。

体育館の中に入ってみると頭を抱えてしゃがんでいる仙道がいた。

「何したの?」

「オレも男の子だったみたい...」

「...あ、そう」

冷たい神の反応に「どうしよう...」と足に縋りつく。

「何だよ」と面倒くさそうな神の反応にめげずに仙道が見上げてきた。

「明日から、どうしよう。実は「さんに何したんだよ」と仙道の言葉を遮って神が問う。

あれ?と仙道が首を傾げた。

「さっき廊下ですれ違った。あの礼儀正しい子が挨拶を返さなかったんだよ。あと、顔が真っ赤だった」

そう言って冷たい視線で仙道を見下ろす。

「体育館で何やったんだよ。あ、ついでに涙目だったけどね」

「涙?!」

さらなる追い討ち情報に仙道は神の足から手を離し、そのまま体育館の床に突っ伏した。

「どうしよう...」

「シュートしながらで良い?」

盛大な溜息と共に神が言う。

本当は集中して練習をしたいのだが、聞き流せばいいやと思ってそういった。

「神...」

グスリと鼻をすする音がして驚いて神は仙道を見下ろした。

半泣きだ。

「あのさ、何で後悔するようなことをするんだよ」

やっちゃったんなら、もう腹を括れよ...

「だって、あんな期待に満ちた目で見上げられたら理性が一瞬吹っ飛んでもおかしくないだろう?気がついたら、キスしてた」

「俺達って基本的に女の子からは見上げられる位の身長だと思うんだけど?」

「でも、可愛かった。だからキスした」

「はいはい。我慢できなかったお前が悪い」

そう結論付けて神はシュート練習を始めた。

後ろでぐちぐち言っている同級生、今はチームメイトでもあるが、彼を相手して得るものなんて何もなさそうだ。

彼の言葉は全て黙殺してシュート500本の練習に入った。



体育館から全力疾走したは途中で足を止めた。体力にはそこそこ自信があるが、息を切らせている。

体育館から部屋までは意外と距離があるのだ。

立ち止まったのは自販機前。人が居たので思わず足を止めた。

ちゃん?」

いつの間にか『ちゃん』呼びになったのは藤真だ。

「藤真さん...」

「何かあった?」

「あー...何も」

視線を外して言う。

嘘の吐けない子なんだなぁ...

そんなの素直な性格に好感を持ちつつ、「ジュース飲む?」と声をかけながら既に自販機のボタンを押していた。

「はい、いちごみるく」

そう言って渡されたいちごみるくを凝視して、「今持ち合わせが無いんです」と言う。

「ああ、いいよ。お兄さんの奢り」

少し躊躇ったようだが彼女は「ご馳走になります」と言って頭を下げる。素直な性格である。

傍にあるソファに腰を下ろした。

「それで、何があったの?お兄さんに話してごらん?」

「何も...」

「体育館の方だよね、ちゃんが走ってきたのは。じゃあ、体育館に行くと答えがあるのかな?」

そう言って立ち上がろうとした藤真の手をはあわてて掴む。

そして、はっとしたように手を離した。「すみません」と俯いて謝る。

「じゃあ、話してくれるのかな?」

「いえ、あー...えーと...ビックリしたんです。そう、ビックリしただけ。うん、大丈夫、大丈夫。事故です、事故」

さっぱり何も伝わらないが、彼女が動揺して自分に『事故』を言い聞かせようとしているだけは分かる。


「そういえば、スタメンは誰かな?」

話を変えた。

このまま追求しても絶対に口は割らない。

あの流川の幼馴染だけある。

いや、流川の場合は口が堅いのでは無くて、口数が少ないだけか。さすがの流川もは例外のようだが...

「へ?あ、今度の練習試合ですか?センターは、たぶん花形さんですよね」

「うーん。まあ、そうかもね。仙道は..ちょっと違うかもしれないな」

ビクリとの肩が揺れた。

なるほど、仙道と何かあったな...

「そ、そうですね。本業の花形さんに任せたほうが良いかと思います」

「じゃあ、SGとか面白そうだよな」

「三井さんと神さんですね!藤真さんだったらどちらですか?」

「俺?そうだな...相手の大学のプレイスタイルをみて、チームのバランスを考えるかな?」

「でも、三井さんと神さんってプレイスタイルが似てませんか?」

「やっぱり微妙に..ね」

そうか、違うのか...

それから藤真と次の練習試合の話で盛り上がったの気持ちも結構浮上した。

「あの、藤真さん。ありがとうございました」

「うん。じゃあ、おやすみ」

は深く頭を下げて部屋に向かって駆けていった。

「全く、感謝しろよ」

あのままを返したら同室の湘北のマネージャーが彼女から事情を聞きだして明日か、下手したら本日中に仙道が盛大に文句を言われるだろう。

何せ、彼女はを大層可愛がっている。

「さて、そろそろ面白がるのはやめた方がよさそうだよなー」

ひとりごちて藤真は立ち上がり体育館に向かってみた。

こんな面倒ごとに首を突っ込む自分は物好きなのかな?

そう思ったが、結局自分のキャプテン体質のせいなのだろうと結論付けて溜息を吐いて諦めた。









桜風
11.3.16


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