Lovesick 10





相変わらずは仙道を避け、避けられている仙道はずぅんと沈んでいる。

だが、少し様子が違うのは、全く視線を合わせなかったが偶に視線を合わせるようになったのだ。

ただし、合った瞬間に盛大に逸らされるのでそれはそれでショックなのだが...


そんなギクシャクとした合宿生活の最終日。

本日、予定通りの練習試合が行われる。そのスタメンが朝食のときに発表された。

」と田岡に呼ばれて彩子に先に行ってもらうように話して彼の元へと行く。

「最近仙道が変じゃないか?」

「仙道さんはいつも変だと思うんですけど」

酷い言い草だ...

「いや、こう..何と言うか。落ち着きが無いというか...」

いや、これもいつものことかもしれない。

何となくそう思ってを見たら何かしらの動揺が見られた。

いつものらりくらりしている仙道はどういうわけか、の言うことは比較的良く聞く。

田岡も仙道と同じく甘酸っぱい青春を経験しているので、彼の心境は何となく察していたが...

「いや、何でもない。悪かったな、呼び止めて」

心から『悪かった』と思って田岡は話を終わらせた。



試合中、ベンチでスコアをつけるのは彩子で、は雑用に走っていた。

『合宿の集大成』と銘打っての練習試合だ。負けるわけには行かない。それがたとえ大学生であっても。

!」

目を丸くしたはやがて苦笑した。

練習試合のことは皆も知っているらしく、陵南のバスケ部が応援に来ていたのだ。

気づかなかった。

ハーフタイムに入ったから声をかけてきたのだろう。

「お疲れ様です」

「仙道がいないと練習が捗るんだ。ビックリだろう」と真顔で越野に言われて「でも、想像つきます」とも真顔で返した。

「ま、監督がいないからちょっと練習っていっても物足りないけどなー。怒声が聞こえないと何か、ちょっと...」

他の選手がそういった。

鬼のように練習することが無いから良いのではないかとも思ったが、楽がしたかったら陵南のバスケ部には入らないだろう。

「てか、仙道の調子、上がんないの?」

「はい?」

「や、何か。ちょっと...」

そう言ってコートを見て呟いたのは越野だ。

やっぱり、いつも仙道の尻拭いをしているだけあって、彼の様子が少し違うと気づくのだろう。

ただ、具体的にどうおかしいかまでは分からない。

しかし、越野の言葉には俯く。

仙道の調子が出ないのは、気になることを放置しているからだろう。『放置しているの』ではなく、『放置させられている』というのが正しい。

は意を決して休憩をしている仙道の元へと足を向けた。

「仙道さん」

目を丸くして振り返った仙道は口を空けたまま呆けている。あの日以来、初めて声をかけてもらった。

監督の指示は一応終わったらしい。それぞれが体力回復に努めている。少しと仙道の会話に興味はあるが、そんなそぶりは見せない。

「え、あの..ちゃん」

「今は試合に集中してください。は..話は後でお聞きします」

顔を真っ赤にして言うに「うん」と呆然と頷く仙道。

「あと、越野さんたちが応援に来てます」

そう言って振り返った。

「あ、本当だ」と呟き「福田」とベンチの端に座っているチームメイトに声をかけて越野たちを指差す。

「あ」と福田も呟く。

越野たちが手を振るのに福田も仙道も軽く手を上げて返す。

「で、では!」

そう言ってダッシュでその場を離れた。

は元気だな」

苦笑して彼女の背を見送る牧に藤真は溜息を吐いた。

「いいな、お前」

「は?」

「いや、何でもない」

適当に誤魔化して藤真は仙道を見た。

見事な復帰っぷりだ。

「こりゃ、間違いなく尻に敷かれるぞ」

藤真の呟きが耳に入った彩子が思わず噴出し、神も肩を揺らしていた。









桜風
11.4.6


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