| 「の憧れの人、凄い人だった」 放課後、がそういった。 今日はまっすぐ帰る予定で寄り道をせずに靴箱へと向かっている。 「は?」と聞き返すに昼休憩の話をしたら「抜け駆け禁止...!」と芝居がかってが言い、笑う。 「ねー、あたし見る目あるでしょ?」 「でも、あの人中々の曲者だよ?、大変だねぇ」 「なんで?」 きょとんとはを見上げた。 「なんで、って...天然タラシを自覚してるんだよ?」 「まあ、憧れの存在なだけだから。誰彼かまわず天然にタラシ込まれても全く平気。けど、あたしの嫌いな奴をタラシ込んだり、あたしの好きな子をタラシ込んだら...ちょっとイヤだなぁ」 天井を見上げながらが言う。 そういうものなのだろうか... よくわかんないなー、とも天井を見上げながら歩く。 「お?お前ら何見てんだよ?」 そう言っての隣に駆けて来て天井を見上げたのは清田だった。 は驚いたが、それは表情に出さない。 「神先輩、凄い人だよねーって話」 「おう!神さんは凄いんだ!!って、何でが知ってるんだよ」 「今日のお昼に声を掛けてもらっちゃった」 はは、と笑いながらが言う。 天井を見上げていた清田は今度は廊下に視線を落とした。 あれ?とがその表情をの陰から盗み見ると面白くなさそうな表情になっている。 ほほう、これは面白い。 そう思いながら「ねえ、ノブ」と声を掛ける。 清田はクラス全員から『ノブ』と呼ばれている。彼がそれを嫌がらないし、清田は憧れになりきれないが何となくマスコットというポジションにあるのだ。 「何だよ」 少しぶっきらぼうにそういう。 何でこのサルは突然機嫌が悪くなってるんだろう...とは首を傾げた。 「練習試合とかないの?バスケ部」 「練習試合?あー、確か来月あるかな?公式戦前に1回」 「いつ?どこで??」 「東京の学校だったと思うけど..日にちは忘れた」 「わー、つかえねぇ...」 の言葉に「ウルセー」と清田は返した。 「よっし!じゃあ、今から体育館に行くか!!」 「は?」 の提案には声を上げた。何言ってるんだ?今日は塾だったか習い事があるとか言ってなかったか?? そう思ってを見下ろすが、その表情は全く見えない。 「?」 「神さんならきっと覚えてる。教えてくれる!」 「何でいきなり神先輩?!」 そんな声を上げているの手を引いてズンズンとは歩いていく。 体育館に着いたときにはまだギリギリ練習開始時刻になっていなかった。 体育館の中を覗いていると「ちょっと通してくれる?」という声がして振り返った。 「あ!神さん!!」 そう声を上げたのはだ。は「ごめんなさい」とドアの前から離れる。 「すみません、教えてください」 の言葉に神は「何を?」と返す。 「今度、って来月らしいんですけど。練習試合があるって本当ですか?東京で」 「ああ、うん。あるよ。ノブ、言ってなかった?」 「日にち、忘れたって...」 神は仕方のない奴だ、という風に溜息をつき、練習試合の日程と対戦校の名前を教えてくれた。 「あっりがとうございましたー!」とは意気揚々と体育館から遠ざかり、は神にペコリと頭を下げてを追いかける。 その日の部活の休憩時間に神は清田に声をかけた。 「今日、さんたちが来たよ。練習試合の日程を教えてほしいって。ノブ、日程覚えてなかったのか?」 お小言にならない程度に言ったと思ったが、ノブは唇を尖らせて拗ねた。 さすがにその反応はないだろうと思って神は目を丸くする。 「ノブ?」 「に教えたんスか?」 「え?ああ、さん?一緒にいたから聞いてたと思うけど...」 清田の反応に少し混乱していた神はすぐに冷静になり「これは...」と面白そうに呟いた。 神の呟きと同時に休憩終了のホイッスルが鳴る。 タオルを置いて清田はコートに戻り、神も同じくコートに戻った。 神の瞳は面白いおもちゃを見つけたような子供のような輝きを放っていた。 |
桜風
10.8.11
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