| あの日話して以来、神はに声を掛けるようになった。 と、言っても特に内容のあるものではなくて「姿勢が悪いよ」とすれ違いざまに言うくらいのもだ。 学校に入ると猫背というのが既に骨の髄にまで沁みてしまっているは神に指摘されるたびに慌てて背筋を伸ばす。 と共に昼休憩時間に会えば、少しは立ち話をする。 どうやら、と神の好きな本のジャンルは似たような傾向にあり、時々本の貸し借りもするようになった。 「しかし。神さんってアレだけ練習の虫でなんでこんなに本を読めるのかしら?」 神に貸す約束をしているの本をパラパラと捲りながらは呟く。 「うん、読まずに返してるのかなって思ってたんだけど、そうでもないみたいで...なんでもできる器用な人っているもんだよね」 も感心したように頷いていた。 神の指摘以降、の姿勢もだいぶ良くなってきた。 今までのように猫背で自信なさげな雰囲気は随分と薄まり、のコンプレックスに対して厭味などを言う人物も減った。 それに気づいたとき、「神先輩って、凄いなぁ」とは改めて思ったのだった。 「何だよ、それ」 もぐもぐと口を動かしながら清田が声を掛けてきた。 「ああ、時代小説。何たら捕物帳って言うタイトルの」とが応えて清田にその本を渡す。 そう厚くはない本だが、普段から馴染みのない清田は活字のみで構成されている本を見て苦い顔になる。 「って、まだ2時間目が終わったばっかだよ?何食べてんのよ」 が呆れながらいうと 「腹が減ったんだよ。腹が減っては戦は出来ん!ってな」 ニカッと笑って清田はに本を返した。 そんな2人をはニヤニヤと見ている。 先日、のいないところでは神に声を掛けられた。 「ノブってさ、さんと仲がいいの?」 突然の質問に乙女の勘が働いた。 「まあ、ある意味一方通行ですけど?」 側の状況は伏せてニヤニヤと笑いながら言うに神も笑う。 「さん、楽しそうだね」 「そりゃ、もう。神さんだって、面白そうだと思ったからこんなことを仰ったんでしょ?」 の言葉に「何のこと?」と神はとぼけてみたが、は確信している。 肩を竦めて神は「どんな感じ?」と彼女の意見を肯定する代わりにそう言った。 「お互い、性格がアレですからねぇ」 清田の方の性格は分かるが、の性格はまだつかめていない。 取り敢えず、素直そうに見えるのだが... そう思ってに言うと 「それは、神さん相手だからです」 と笑う。 「オレ?」 「そうですよ。あの子のコンプレックスに理解を示した上で胸を張れって言ってくれた人なんですから。今まで誰も言ってくれなかった言葉を言ってくれた人なんだから尊敬のひとつやふたつしちゃいますよ」 そういうもんかなー、と首を傾げていたところに、がやってくるのが見えた。 「こういうとき、相手が大きいと見つけやすくて助かるんですよね」 「あ、オレよく言われる」 「、最近可愛くなったって男子が噂してるんですよねー」 「ウチの学年でもさん有名だよ。初めは好奇の目で見てただけだけど。最近はその有名の種類が変わったみたいなんだよねー」 「「ノブも大変だよねー」」 「あれ、楽しそう」 2人が笑っているのを見てが言う。 「まあねー...」とがいい「うん、楽しいかな」と神が返す。 この様子では教えてくれないな、とは悟って「そっかー」と深く聞かない。 このとき、暗黙の了解で2人は同盟を結んでいた。 ノブをオモチャにしつつ、2人を見守るという、彼女たちにとって見たらはた迷惑な同盟だ。 「取り敢えず、引っ掻き回さないとね」 予鈴が鳴ったため、が慌てているところに神が呟く。 その呟きが耳に入ったは「ラジャ」と短く応えた。 |
桜風
10.8.18
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