| 「え、何で?!」 「いいから!せっかくの東京だよ。滅多に行けないでしょ?」 「いやいや。行こうと思ったら結構近いよ?!」 「でも、面倒くさいから中々行かないでしょ!!」 この会話は海南の練習試合の日の前日のの自宅で行われたものだ。 が練習試合の日は少し早めに家を出ようと話した。 なら、前日はうちに泊まって一緒に出ようと言ったのはだった。 そして、その日の晩。 「明日、何着ていくの?」 「何、って...適当。ジーパンに、長袖Tシャツとパーカー?あ、でも寒いかな??」 「何ですって!?怖ろしい子!!」 「...何が?」 の言葉に呆れたようにが返す。 「この間買ったじゃん。スカート。あと、ブーツ」 「えー!あれ、がごり押ししたから買ったんじゃん」 「買ったら着ないと勿体無い!もうさ、ついでだからオシャレして行こうよ!」 そのの言葉に対して冒頭の会話になる。 結局、押しの強いに対して、性格が温和な方のが折れて彼女のコーディネートに任せることにした。 「あら〜?ちゃんとちゃん。今日はデート?」 家を出る娘を見送りに玄関に出てきた母がそうのんびり言った。 「デートじゃない」「そうなんですよ〜」 同時に、真反対の言葉がそれぞれの口から出た。 の母は目をぱちくりしたが、 「気をつけていってらっしゃいねー」 とやはりのんびりと言って手を振り、娘たちを送り出した。 電車に揺られて乗り継いで、少し早めに会場に着いた。 この学校は都内ではかなり有名らしい。 海南ほどではないが、全国大会出場という実績も積んでいる所謂バスケの名門校だ。 「制服じゃなくて良かったのかな?」 今更ながらが聞く。 「学校行事じゃないんだから、いいでしょ?それに、この学校は制服ないらしいから大丈夫」 が力強く請け負うものだから、は「そっか」と引き下がった。 そして、体育館に着くと、既にギャラリーはかなりの数居た。 「あれ、さんたちだ」 神の呟きに反応して清田は体育館入口に目を向けて絶句した。 中々やるなぁ、とに感心しつつも神は清田の反応を楽しんでいる。 「あ、神さんだ」 少し弾んだ声でが言う。 つられてもそちらを見ると清田がぽかんと口を開けていた。 「何やってんの?あのサル」 「いやー..どうしたんだろうねぇ」 ニヤニヤと笑いながらはそう言い、見学できる場所へと移った。 練習試合の結果で言えば海南が圧勝だったが、内容で言えば清田の動きが物凄く悪かった。 とにかく、集中力がなく、ありえないミスばかりする。 これを見た神とはやりすぎたなぁ...と反省してみたものの、今すぐどうこうできることではなく、案の定すぐにベンチに下げられ、監督にどやされている。 「どうしたんだろ...」 心配そうに呟くに「アンタのせいなんだよ」とは口が裂けてもいえないは「ホントにね...」と同情の眼差しで清田を見遣った。 試合終了後、せっかくだから遊んで帰ろうと言い出したが「とにかくお手洗い!」と言って消えていく。 仕方なくはひとりぽつんとを待っていた。 体育館脇の階段に座って待っていると頭上から声が降ってきた。 何だろう、と見上げると良く分からないが囲まれている。 は仕方なく立ち上がった。 今までも座った状態ならナンパみたいに声を掛けられたことはあった。 だが、立ち上がった途端相手はおずおずと逃げていったのだ。 立ち上がれば相手が逃げる。 そう思っていたが、なんと相手は少しヒールのあるブーツを履いているよりも背が高かった。 これは、たぶんまずい... 今まで逃げた相手は自分より背が高いを本能的に怖いと思ったから逃げたのだろう。 だが、彼らはを怖いと思う要素が全くない。 立ち上がっただけで追い払うことが出来たは、残念ながら口八丁でのらりくらりとかわす技術を身につけていない。 すっきりした顔で戻ってきたはの状況を見て驚き、体育館へと駆けていった。 |
桜風
10.8.25
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