| 「バカかお前!!」 お風呂に入ろうと準備をしていると廊下から母がを呼ぶ。 「なに?」 「電話。藤真君から」 と言って受話器をに向ける。 受話器を受け取り「なに?」と返した途端そう言われた。 「あの、話が見えない...」 「話してやるから、今すぐお前の家の近くの公園に来い」 「え。今からお風呂に...」 「諦めろ」 一方的にそう言われ、も諦めて溜息を吐いた。 「わかった」 「家の人には外出することを言っとけよ」 といわれ、 「藤真はあたしの先生か!」 と言ってやった。 しかし、言われたとおりに外出の旨を伝えて家を出た。 公園へ向かう途中の自販機でコーヒーを2本買った。 街頭の下のベンチに人影が見えた。 「藤真」 声を掛けると振り返って手を上げる。 「ブラックで良かったよね」 「お。気が利くな!」 が缶を放って、藤真が受け取る。 「で、さっきの何?」 藤真の隣に座った途端にが口を開いた。 「ああ。アレな。さっきまで俺、花形と一緒にいたんだよ」 「部活?大変だねぇ...」 「じゃなくて。一緒にマックに行ってたの」 藤真の言葉を聞いて「ふうん」とは呟き、両手で包んで持っている缶をゆっくり回す。 「でな。それが、花形に聞いてほしい話があるって言われて一緒に行ったんだけどな。その話と言うのが、お前だよ、」 「あたし!?」 凄く驚いた。 「え、何で?何かした??」 「1週間前」 藤真がそう言うと何の話かわかったは俯いた。 「お前さ。言ったなら最後まで耐えろよ。それくらいの覚悟があったんじゃないのか?」 「あったけど、言った後見上げた花形が凄い困った顔をしてたから...」 「世間話よろしく告白されたら困惑するぞ、普通」 「だって、改まって告白とかになったら絶対にあたしが耐えらんないもん!」 藤真は深い溜息を吐いた。 「あ、あの。花形、何て?」 恐る恐る聞くに視線だけ寄越して 「だから、困惑してた。告白されたはずなのに、告白してきた当の本人が今までと何も変わらずに生活してるから、もしかして気のせいだったのではないかと思ってたよ。気の毒に...」 溜息混じりにそう言った。 「あー...どうしよう」 心底困ったようにが呟く。 「まあ、花形も困ってたっぽいから、には悪いけどなかったことにしたらどうかって話しておいた」 「や。正直助かる」 「いいのか?あの時、あの瞬間はお前の勇気いっぱい使ったんだろう?」 「やー、でも。続かないことだったから。花形を困らせたくないし」 そう言って笑うの表情はなんだか泣き出しそうで、藤真は一瞬焦った。 「あのさ」 ポツリとが呟く。 「ん?」 「今日ね、あたし告白されたんだよ」 「何だ、そいつと付き合うのか?」 「まさか!言ったでしょう?私は純情だって」 昼間の自分の言葉をもう一度口にする。 「ああ、そうだったな」 笑いを堪えながら同意する藤真を睨んで 「まあ、だから。お断りしたんだよ」 と話を続けた。 「うん」 「そのときさ。なんか、やっぱり胸が痛むって言うか...いい気分にはならないんだよね」 「分かる、それ」 しみじみと少し困った顔をして藤真が頷く。 そういえば、学校一のモテモテは何を隠そう今の隣で大人しく話を聞いている藤真健司だ。 「だから、花形をそんな気持ちにさせたくないって言うか。そんな風に思っちゃったのよ」 「うん」 「だから、今回の藤真に感謝です」 そう言って深々と頭を下げた。 「や、うん...」 本当にそれで良かったのか藤真は少しだけ迷った。 このままだとは傷ついたままになるのではないだろうか。助かったと言ったが、それが本音とは思えない。今まで散々の花形に対する想いを聞いてきた身としては、そんなに簡単におさまるものでもないだろうと思う。 隣のの顔を見てやはり後悔した。 泣きそうに笑っている。 しかし、今の藤真に出来ることは何もなく、あるとしたら、が泣きそうなことに気付かないフリをしてやることと、泣いてしまったら胸を貸してやることくらいだ。 「あー、」 話の転換を試みる。 「頭、コブとか出来なかったか?」 そう言っての後頭部に触れた。 は驚いたように顔を上げて、藤真の顔をまじまじと見る。 「藤真ぁ...」 とうとうの瞳から雫が溢れた。 「どうした?」 「あたし、やっぱり花形が好きみたい」 藤真がそっと頭に触れてもなんともない。 さっき、花形が触れたときには鼓動が早くなったというのに... 「ったく、仕方ないな。ほら、俺の胸で泣け」 そう言って藤真が手を広げたけど、 「いい、遠慮する」 があっさり断った。 「じゃあ、こっち貸してやるよ」 と言って鞄からタオルを取り出した。 「使ってないやつだから」 「洗って返すね」 「おう」 そう言って藤真は笑い、が泣き終わるまで側に居て、家まで送った。 |
桜風
08.9.24
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